第26話 救出、そして帰還
誘拐され、ガチホモ展開を見せられて早くも2日が経った。この2日間、俺は何も食べてないし、飲んでもいない。そして牢屋の温度は外の温度よりも低いせいで俺の手や足は冷えきっていて動かない。
このままだと不味いな。そろそろ光ちゃんだけでなく俺にも被害が出そうだ。その際に服なんて脱がされたら死ぬな。光ちゃんの牢屋には布団が置いてあるからなんとかなってそうだからそこは安心した。
そして光ちゃんには1日1本水を与えられていた。
俺にも寄越せよ……
「イリスちゃん、大丈夫?」
「ごめん……もう手も足も動かないんだ……」
「うん……」
息が荒くなってきた……俺はもう死ぬのか……
「光ちゃん……私、光ちゃんといて楽しかったよ……」
「ダメだよ! やめてよイリスちゃん! 死なないで!」
ガチャ……
男たちが俺と光ちゃんの間の通路にやってきた。
「あ~やっとボスから解放されたぜ。まさか2日も搾られるなんて、ボスも困ったもんだぜ。もう待てないから今日からはイリスちゃんの番だ。ほら、俺を楽しませてくれよ?」
「お前まだ出るのかよ。スゲーな……」
男たちが俺の牢屋の中に入ってきた。
ここまでなのか……アリサ、将吾……アリスを頼んだぞ……ん? アリス? ははっ……なんやかんやでアリスのこと、気に入ってたんだな……
やっぱり俺はシスコンなんだな……
「さて、それじゃあイリスちゃんをいただきますか」
男たちがコートに手をかける。
お願い……神様でもなんでもいいから助けて……
「ダ◯ルエクス◯リーム!!」
「ぐあああああああっ!!」
バタンっ!
横から誰かがライ◯ーキックを入れてきた。
ダブ◯!? いや、あれは!
「奇跡っていうのは起こるから奇跡っていうんだよ?」
「守護霊さん……意味わかんないよ……」
そこには蒼真くんの守護霊さんが居た。
なぜこんなところに居るんだ……
「まあ、ゆっくりしてていいよ。あとはやって置くから」
「うん……」
俺は守護霊さんが用意してくれた布団に横になった。
「さて、久しぶりにやりますか!」
「お前誰なんだよ!」
「私? 私は通りすがりのk……」
『Are you ◯eady?』
「お前の運命は決まった! ラブアン◯ピースフィニッーーシュ!!」
「ぐああああああ!!」
横から俺よりも幼くて、フードを被った守護霊さんの妹っぽい幼女がライ◯ーキックを決めてきた。
なんか新キャラ来たし……まあ、このライ◯ー姉妹今後出番ないだろ。
「ちょっ、まだ名乗ってないんだけど!? それに私の出番はまだあr……」
「無いから早く帰ろうよ」
……なんかこっちの幼女、俺の行方不明の姉貴に似てるな。まあ、偶然だろ。
「無いの!? まあ今はいいよ……じゃあ運ぶね。でも今後絶対一度は出てやるからな!」
パチンっ!
守護霊さんが指を鳴らすと俺の目の前が真っ黒になった。
あれ? ……ここは? 病院か?
『イリス!』
『あれ? ママ?』
アリサ……か? 少し老けてるような……
『少し老けた?』
『当たり前でしょ……イリスが眠ってからもう20年も経ったのよ……』
アリサは涙を流していた。
20年!? マジで!?
コンコンっ!
大人になった光ちゃんであろう人が病室に入ってきた。
『!?……イリスちゃん……起きたんだね……良かった……』
『うん、光ちゃん』
『やっほーイリスちゃん』
後ろから守護霊さんが手を振ってきた。
守護霊さん!? 何故ここに!?
『えーとね、イリスちゃんを過去に飛ばしに来たんだよ』
『過去っ!? 痛っ!』
『まあ、20年も体動かさなかったんだからそうなるよ。寧ろよく動いたね』
それで、過去にというのは?
『えーと、このままいくとイリスちゃんは体の後遺症でまともに動けないんだよ。どれだけリハビリしてもね。だから過去に飛ばして、別の体を用意したからそこに入って貰う。まあ、細かいことは任せておいてよ。じゃあ頑張って!』
それって別に過去にいかなくても新しい体用意すればよくね? と思った瞬間、俺の目の前が真っ暗になった。
次に目を覚ますと俺はさっきと同じ病院のベッドの上にいた。違う所はコートも着てることと、天井が新しいことだ。この病院は出来てまだそんなに経っていない……ということはさっきのあれは……
「夢落ちかよ!!」
あんだけシリアス展開かましてたのに夢落ちはないわー……あれ? 足が治ってる……どういうことだ? 霜焼けの痕とかはおろか、骨折すらしてない……まるで体の時間が戻ったような……
「目が覚めたみたいね……いきなり何を言ってるの?」
「小鳥……お姉ちゃん……何でもないよ。変な夢見ただけ……」
小鳥と呼び掛けたら後ろにアリサたちが見えたので即座にお姉ちゃんを付けた。
……ん? なんでアリサは俺がメイド服着て恥ずかしがっている写真を持ってるんだ?
そんな服着た記憶ないんだが……
「光ちゃんは!?」
「大丈夫よ。全く、あの娘には感謝するわ。
喫茶店が赤字だからって赤字の分だけお金持ってかれたけど……(ボソッ」
何か聞こえたが、大人の事情というやつだから無視しよう。光ちゃんは無事だったのか……良かった……
「イリス……」
「アリサったらイリスちゃんが居なくなった日から毎日お皿割ってるのよ」
「え?」
いつも通りじゃないか? 何処かおかしいのか?
「平常運転じゃないの?」
「紙のお皿を割ったのよ!?」
紙の皿ってどうやって割るんだ? 破るの間違いじゃないのか?
「ちょっと! なんでそういうこと言うの! イリスが居なくなって1番動揺してたのアンタでしょ!」
「っ!? そ、そんな訳ないでしょ!」
小鳥が!? 小鳥もずいぶん変わったんだな……昔だったらもっと冷たかっただろうに……でもそれほど心配掛けたんだな。
「小鳥お姉ちゃん、ありがと」
「!? ど、どういたしまして……(破壊力ヤバっ……イリスちゃんってこんなに可愛いかったっけ? 落ち着け私、中身はあの◯◯なのよ。自称1番普通の男よ。成績異常で元ヤンのヤバいやつよ。今は将吾の血のおかげでたぶん天才だろうけど……)」
なんかめっちゃ失礼なこと考えてないか? 言っとくが俺は元ヤンじゃねーぞ? 成績は……まあ、あれだ。勘弁してくれ……
「イリス、少しいいか?」
将吾が話かけてきた。
「なにパパ?」
「実はお前の体を調べたら明日には退院できるそうだ。良かったな。これでいつも通り過ごせるぞ。細かいことは任せておけ」
「ホント!?」
意外だな。少なくとも何か事情聴取でもされるかと思ってたけど何もないんだな。
「今度から朱音にでも護衛させようかな……」
朱音は勘弁してくれ……っていうかその名前は久しぶりに聞いたな。この物語は初回登場以降朱音を出してはいけない縛りとかあるのか?
「将吾、そんなの甘いわよ。警察くらいは当たり前よ」
「何を言ってるの! イリスちゃんが誘拐されたら困るでしょ! だったら公安やFBI、国際連共イリスちゃん平和維持団体ぐらい当たり前よ!」
なんかヤバい話が聞こえるな……冗談だよな? ……あえて団体の名前にツッコミを入れないぞ?
『俺が護衛でもしてやろうか?』
お前は護衛なんて出来ないだろうが! お前は中身がおっさんのやつにでも憑いてろ!
「ねーねー大好き!」
そうかそうか、俺はおっさんには興味ないんだ。おっさんの記憶を消したら俺も大好きだ。まあ、おっさんの記憶が残っていても実は大好きなんだって、さっき分からされたけどな。




