第19話 おやつの定義とイリスの罰
あれから1ヶ月が経った。
「今日は明日の遠足について説明をします」
明日は隣町のアミノ街に遠足に行くのでその説明をしている。もちろん悠司はそんなことしないので、今回は2組担任だ。
「遠足には電車で移動します。そしてそこにある遺伝子研究所でヒトは今までどんなことをしてきたのか、どうやって生まれたのかを学んで、自由に見学して、現地解散になります。親御さんも来れるというプリントを以前にも配布しているので是非誘って見てください」
……よし、ウチの親御さんはお家で待機確定だな。あんなの来たらその見学する研究所が終わる。プリントはとっくの昔にしゅれったーにかけてやったぜ!
「各自おやつを持って来ても構いませんが、1人500円までです。お昼ご飯は各自お弁当を持ってきてください。何か質問はありますか?」
ふむ、ここは言うべきだな。
「バナナはおやつに入りますか?」
「……先生どうします?(ボソッ」
おい、そこは自分で答えろよ。こんなの定番中の定番だろ。なに他人に意見を求めてんだよ。
「自分で考えろ。お前はどっち派なんだ?」
「(あれ? この人、私よりも年下だったような…)バナナはおやつに入りません!」
なるほど、そっち派か。ならば次は……
「おやつの定義はなんですか?」
「定義……定義!? なんでそんな言葉知ってるの!?」
「先生、それは考えても無駄ですよ。アイツは1番の問題児ですから(ボソッ」
おい悠司、聞こえてんぞ。お前は何を布教してんだよ。
「そ、そうですね」
先生も左頬を撫でながら納得しないでくれ。ハンドボールの件は悪かったからさ……
「おやつの定義は……はっ! 袋に入ってるか入っていないかです!」
なるほど…手作りのお菓子はどうなるのか気になるが、今回はそれで良さそうだな。でも…
「異議あり!! それだとコンビニおにぎりはおやつになります!!」
「じゃあこうしましょう! 袋の裏の商品名のところにお菓子と書いてあるものをお菓子としましょう!!」
「「「(なぜあの二人はお菓子の定義について語ってるんだ……)」」」←近くにいる教員たち
「「「(ていぎってなに?)」」」←まだ汚いことを何も知らない純粋で素直な少年少女たち
それからお菓子の定義の裁判は30分続いた。終盤にはいつも通り俺が転んだ。そして光ちゃんという名の犠牲を出した。まあ、今回の犠牲は椅子から落ちて学年全員にパンツを見られただけだったし、よかったんじゃないかな?
あっ、俺はガードが1番硬い人なんで……すいません。許してください。なんでも……うっ! 寒気がッ!
「……イリスちゃん? 今回は許さないよ?」
「あう……ごめんなさい……」
「イリスちゃんのも見せて! じゃないと許さない! もう二度と話さないもん!」
あれ? もしここで光ちゃんに嫌われたら俺って事実上ボッチじゃね? 蒼真くんたちは3人でいるからわざわざ俺たちのところに来ないし……ボッチだけは回避しなければ!
「う、うん……わかった。いいよ……でも、コートの中からお願いね……」
恥ずかしい……!
クラスメイトたちや悠司や小鳥たちの前でこんな台詞言うなんて……っていうか小鳥はなんでいるんだ。そして撮影をやめろ!
「…………」
「…………」
早くしてくれ……恥ずかしいんだからさ!
「……や、やっぱりいい!」
な、なんなんだよ。でもこのままなのは俺の気がすまないんだ!
「ダメ、言ったことはやる。私が悪かったからなにかされないと気がすまないの」
「じゃあ別のこと! そうだ! 明日お菓子交換しようよ!」
は? それだけ? どうせお菓子交換ぐらいするだろ?
「むぅ……」
「ふ、不満なの?」
当たり前だ。その程度じゃ俺の気が収まらんぞ。
「じゃあこうしましょう! イリスちゃんは今日から光ちゃんと一緒に登下校する!」
小鳥は一体なにをいい始めたんだ……だいたいお前が一緒じゃないと家の場所とか知らないぞ?
「光ちゃんのお家って実は私の住んでたアパートの目の前なのよ」
ん? アパートの目の前にある家は俺ん家だろ? って、まさか……!
「実はイリスちゃんのお隣さんなんだよ」
「ええっ!? 初めて知った……!」
「じゃあ、これからイリスちゃんは光ちゃんと登下校すること! 以上! 解散!」
お前が仕切り役じゃないんだが……まあいいや。それにしても、転生してから初めて家まで歩いて帰るのか。この体、体力もなかったから丁度いい運動にもなるだろうな。
だが、この時の俺はまだ自分の体力をわかっていなかった。
下校中……
「ひ、かりちゃ、んっ、ま、って……」
「まだ10分も歩いてないんだけど……」
おっかしいなー水族館の時は大丈夫だったのになー……あっ、俺って半分以上小鳥に抱っこされてたわ。
「無理そうだね……じゃあそこの公園で休んで行こうか」
はっ! 何者かの気配を感じる!
「……」
「「……」」
俺が視線の感じた方を振り向くと、変な格好をした30くらいの男女と目があった。
「イリスちゃんどうかしたの?」
「ううん。なんでもないよ」
「そう?」
うん、俺は何も見なかった。探偵っぽい格好してる悠司と小鳥なんて俺は見ていない。
5分後……
「どう? そろそろ動ける?」
「うん、なんとかね。家まであとどれくらいなの?」
「私だけなら15分で着くけど、イリスちゃん歩くの遅かったから多分あと30分くらいかな?」
なんだと!? もう一度あの距離を歩くというのか! まあこんなところに居ても仕方ない。行くしかないか……
「じゃあ出発だね。そうだ! 家に帰ったらおやつ買いに行かない? 近くに駄菓子屋さんがあるんだよ」
駄菓子屋か……
「体力があったらね……」
「せめて学校から家までは鍛えようよ」
それから歩き続けること10分後。
「イリスちゃん、大丈夫?」
大丈夫に、見える、の、か?
めっちゃ疲れた……光ちゃんはよくそんなに体力があるね……
「ほら、もう着いたよ」
「ごめん、光ちゃん……」
ポスっ……
俺は光ちゃんに寄りかかったら光ちゃんが抱き締めてきたのでそのまま眠ってしまった。
「いい匂い……イリスちゃん、やっぱり寝顔可愛いなぁ……おっと、落ちちゃう。背が小さくて軽いから助かった……」
「光ちゃん、お疲れ様。どうだった? イリスちゃんと一緒に帰った感想は?」
「可愛い! ……貰ってもいいですか?」
「駄目よ。イリスちゃんは私のなんだから。よいしょっと、お菓子買いに行くんだっけ? よかったら家の持っていってよ。今日のお礼として」
「ありがとうございます! ところでいつから居たんですか?」
「…………アハハ、ツイサッキ、ツイタトコロダヨ」




