第134話 よくわからんけど、バレた。
「やっぱり来たな。琴道?」
「はい?」
な、なぜバレた!? いや、まだバレたというわけじゃないはずだ! きっと変な勘違いをしてるはずだ! だってコイツらバカなんだから!!
「イリス。お前が琴道であることに気づいてないと思ったのか?」
あっ、これもうダメなやつだ。諦めよ。
「うん、思った」
ガクッ!
「諦めるの早いな。少しは言い訳でもしろよ……」
1度床に膝をつけた将吾はゆっくりと立ち上がる。
「いつ気づいたの?」
「昨日」
おいっ!? じゃあさっきのずっと昔から知ってたけど黙っててやったんだぞ? っていう雰囲気は何だったんだよ!?
「なんで?」
「お前が寝言言ってた」
「はぁ……」
まさかそんなヘマしてるなんて誰が思うよ……寝言で正体バレるとか、聞いたこともない。
「なんで黙ってたんだ?」
「言えるわけないじゃん!! だって『お前らならうまくいく。だから幸せになれよ。俺は異世界に行って来るからさ』とか言って死んだんだよ!? そんな変なヤツがお前らの娘に転生したんだよ!? 言えるわけないじゃん!!」
人生最後の黒歴史だわ!! もう無理! 生きていけない!!
「それは、そのぉ……ドンマイ!」
勢いで流そうとするのやめろ!!
どうせなら笑えよ! そんな肩を震わせながら微妙に笑ってるんじゃなくて、堂々と大声出して笑えよ!!
腫れ物扱いされる方が余計に苦しいわ!!
「イリス……いえ、琴道?
……ビックリした? ねえねえビックリしたでしょ? 私たちが正体気づいてるのいきなり知らされてビックリしたでしょ!?」
うん、ビックリしたからその『ドッキリ大成功!』みたいなノリはやめて?
これでも今まで秘密にしていた俺のデリケートな部分なんだぞ?
それをギャグ要素に扱われるこっちの気持ちになってみろよ。虚しくなるだろうが。
「他のみんなには言ったのか?」
「え? 言う前にとっくにバレてるよ? むしろなんでこの二人だけは今まで気づかなかったの? って不思議に思った」
二人は互いに顔を見合わせていた。
「ちなみにだ。誰から順番に気づいた?」
「小鳥が初日、悠司が中学生の入学式だけど?」
「朱音は?」
は? 誰だソイツ?
そんなモブとは会ったことないな。
「おやおや? まさか小鳥が初日に正体見破ったにも関わらず、16年育てた人たちはまさか昨日初めて知ってドヤ顔してたのぉ? 親としておかしいんじゃないのぉ? それでも親友なのぉ? 幼なじみなのぉ?」
「『お前らならうまくいく。だから幸せになれよ。俺は異世界に行って来るからさ』だっけ? あれれ? お前異世界行ったんじゃねーの? どうしてここにいるの? ねえ、異世界どうだったぁ? 楽しかったぁ? 最高だったかぁ? ハーレム作ってたのかぁ? おっと、幼女にはハーレムなんて無理だったか! ハッハッハッハッハッハ!!!」
うわあああああああああっ!!! やめてぇ!! それだけは!! やめてぇぇぇ!!!
「なんか懐かしいやり取りね……」
「「いや、そんなやり取りしたことない」」
「あれっ!?」
いったいアリサは何を言ってるんだ? 同じようなやり取りなんてしたような気がしなくもないが、残念ながらちょっと記憶にはないな。
「それで、イリスちゃん? ……彼氏は出来たのかにゃ?」
「ぶっ飛ばしてやろうか? こっちには変態ロリコンであるミトコンドリア様がいるんだぞ? お前なんてすぐ消し炭になるぞ?」
だよな、ミトコン?
……あれ? ミトコン? ミトコーン? どこー?
「そういえばミトコンは葉月ちゃんに預けてたよな? どうした? 消し炭にできるんじゃないのか? ほらほら、やれるものならやってみろよ?」
クソっ!! コイツ腹立つ!!
……こうなったら!!
「パパきらーい!」
「なっ!? そ、そんなことが……」
バタリと倒れた将吾は、ピクリとも動かなくなった。俺は将吾の頬を叩いて気絶していることを確認するとポケットからマジックペンを取り出す。
なんでか知らないけど、気絶してくれたから今のうちに落書きしておこう。
「琴道、ずっと一緒に居てくれたんだね。ありがと。これからもよろしくね?」
「……うん、よろしく。ママ……」
その日見た星は、いつもよりもずっときれいに見えた。
「それで将吾たちにもバレたの? 本当に最後まで哀れね!!」
「うっさい! 別にいいの!! 生活自体もそんなに変わってないし! なんかスッキリしたから!!」
なんでコイツはいつもこうやって煽ってくるのかな?
こういう所が無ければまだ可愛げがあるというのに。
「でも、これで天文学者の勉強に専念できそう。よし! 絶対になるよ!! そして惑星だって見つけるんだから!!」
「……そっか。頑張ってね、イリスちゃん」
歴代のTS作品の中で最も非常識なバレ方をした幼女。寝言って……
あと今日は夕方にもう1本投稿します。もうこの流れは最終回ですよ。




