第132話 イリスの人生初の家族旅行は稲下村!
変態ジジイの豪邸から帰還した後のこと。
「イリスちゃん、アンタダメな男を引き寄せる性格してるから男と関わらないようにしなさい」
「え?」
マジ? 俺ってそんな性格してた?
「将吾、イリス、話があるんだけど?」
「「えっ」」
アリサが何かこっち来いよと手を振ってくる。
何かな? もしかして焼き鮭? じゃあ行かないとな。
「待て」
背中から将吾に引っ張られた。
「なに?」
「あれは怒ってるぞ」
なんで? 別に怒られるようなことなんてしてないぞ?
「将吾? 普段から小さい女の子見てるの?」
ああ、それで怒ってたのか。それにしても嫉妬とはずいぶん愛されてるな。羨ましい……
「いや、それは違うぞ! イリスのデタラメだ!」
何を言うか。ただの事実だろ。大人しく警察に自首して来い。
「イリスが事実だって言ってる顔してるんだけど? まさか嘘ついてるの?」
「……はい。すいませんでした。許してください。何でもしますので」
ん? いま、何でもするって……っ!? 何か寒気が……
「じゃあ家族旅行」
「え?」
「家族旅行って言ったの。1度もしたことなかったでしょ?」
そういえばそうだったな。家族旅行か……お前らから見れば仲良し4人家族が旅行するだけに感じるだろうが、俺から見れば幼なじみと親友と知らないキモデブで旅行に行くって感じだからなかなかヤバいぞ。
「小鳥、留守番頼めるか?」
「え? いいわよ?」
「わかった。じゃあ夏休みの最初の頃にどこか行くか」
「旅行だーー!!!」
葉姉、なんでお前が浮かれるんだよ。お前は留守番だよ。小鳥とアイちゃんと家で待ってろ。
「葉月ちゃんは留守番だからこっちね」
「えー」
こうして夏休みに家族旅行をすることになった。
「どこに行く?」
「夏だから海とかだな。そうするとこの辺か?」
『句演三回路町』に『細胞質基質海』……漢字読めねぇ。
「あっ、これは?」
「日本一周365日旅行……イリス、単位行けるか?」
「むり」
「だよな」
失礼なヤツだな!? そこは否定しろよ!?
「今回は海がある田舎にするか。人混みだと誰が何を仕出かすかわからないし」
おい、なんで俺とアリサを交互に見るんだよ。何とか言えよ将吾!
「田舎だとどこがいいの?」
「くま……いや、あそこは海なかったな」
確かに。あそこは巫女さんとしゃべる熊が居るぐらいだもんな。
「おっ、これはどうだ?」
将吾が見せてきたのは1枚のチラシだった。
「稲下村」
名前からして田舎っぽいな。でもこういうところは嫌いじゃない。星もきれいに見えるからな。
「このチラシずいぶん古いね。何時の?」
アリサがチラシをひっくり返すと発行日が書かれていた。
「20年前……なんでこんなものあるの?」
「知らん。押し入れから出てきた」
人が居なくなってる可能性があるんだが……
「でも海もあるし、いいんじゃないか?」
「そうね。じゃあここにしましょう」
というわけで稲下村に決定。
それから時間というものが過ぎて旅行当日。
「「「「行ってきまーす!」」」」
「「「いってらっしゃい」」」
『『『『いってらっしゃいまし』』』』
みんなに挨拶して四人で家を出て、車で行く。酔い止めは以前より強いやつを飲んでいる。ただし、副作用で睡眠作用がある。
「すぅーすぅー」
「副作用効くの早いね……」
それから数時間の時が経ち、目が覚めたら到着していた。
「パパ、ホテルはどこ?」
「それならここに来る前にプライベートビーチとセットで買っておいた」
どうやら金持ちは宿泊先がなければ買えばいいという意見になるらしい。しかもプライベートビーチってお約束というか、なんというか……
「イリス、これ水着」
普段なら絶対に水着なんて嫌がるのだが、今回はワンピースタイプの水着を買って貰ったので、いつもより抵抗が少なく着ることが出来た。
「どう?」
「うん、似合ってるよ。じゃあ日焼け止め塗ってあげるね」
俺はアリサに日焼け止めを塗ってもらい、他メンを待つ。
「お姉ちゃんお待たせ!」
アリスが来た。
……アリスってあんなに大きかったの? アリサとか余裕で抜いてるじゃん。なんかウザイな。よし、握り潰そう。
「え? なに? ……痛っ!? 痛い! 痛いからやめて!」
アリスに腕を捕まれてなすすべも無く押し倒された。
「お姉ちゃん、揉むってことは揉まれてもいいってことだよね? それに揉めば大きくなるらしいし? いいよね?」
「いいわけないじゃん!? ちょっと退いてよ! 重いんだけど!?」
それに俺は揉んだのではなく、握り潰したのだ。よってキモデブが俺のまな板を揉む権利はない。
「アリス、ちゃんと日焼け止め塗って……ちょっと来なさい」
アリサがアリスの胸を見た瞬間、急に底冷えた声を出してアリスを誘拐していった。
その後、アリスの悲鳴がビーチを包んだ。将吾は何が起きたのか理解してなかった。




