第120話 巨乳派を減らそうとしたらチート神の怒りを買った
「やっぱりそれ着るのか」
「なんか着てないと落ち着かないし」
「そうか」
俺はコートを着て将吾に抱っこして貰ってルーシーに乗せてもらい、ルーシー族を連れて家に帰った。
「アイちゃん、どうして言ってくれなかったの? そんなに私のこと嫌い? 私よりも巨乳の方がいい? どうなの? 言ってくれれば別に何も言わないよ?」
部屋に帰るなりベッドの下から巨乳のエロ本を発見した俺はアイちゃんをその場で座らせて話を聞いていた。
「ぜんぜん聞こうとしてないよね?」
「別にそんなことないから早く答えてくれる?」
「ボクはイリスちゃんみたいな幼女よりもきょ「焼き鮭教徒ばんざーい! ばんざーい!」……やっぱり聞こうとしてないよね!?」
いやそんなことないぞ? ちょっと聞き捨てならない単語が聞こえそうだったから大声を出しただけだぞ?
「まあいいよ。アイちゃんは敵だったんだね。残念だよ。せっかくの焼き鮭教徒の仲なのに。葉月ちゃんもそう思うよね?」
「そうだね。巨乳なんてゴミとしか思わないよ」
葉姉はわかっているな。よし、二人でこの裏切り者をボコボコにしよう。きっとダークリユニ◯ンの洗脳を受けてるだけだ。ボコボコにすればきっと目を覚ますはずだ。
「サーモン! ルーシー!」
「わんっ!(見参□グイン!)」
「普通サモンじゃない?」
いや、サーモンだ。サーモンで間違えない。
「ルーシー! アイちゃんを捕らえて!」
「わんっ!(くたばれおらぁ!)」
「うっ!」
ルーシーがアイちゃんにのしかかる。
「よし、ルーシーそのままだよ。葉月ちゃん、一緒に洗脳を解くよ!」
「わふっ(了解)」
「巨乳を滅ぼす」
「なんかキャラ違くない!?」
葉姉がアイちゃんに近づいていく。
「巨乳は滅! 昇幼拳!!」
「アンタたち何やってんの!」
チート神 小鳥様がやってきた。我々はただひれ伏すことしか出来なかった。
「ちょっとアンタたち来なさい! ルーシーもよ!」
「わふっ!? キャンキャン! キャンキャン!(なんで!? 小鳥様やめてください! 殺さないで! 私まだ死にたくないよ!)」
「いいから来る!」
俺と葉姉とルーシーは小鳥様に引き摺られて行った。
これ、死んだな。お願い助けてヤキジャーケ様……
俺が目を瞑ると目の前には上裸で頭部が鮭の謎の男性が現れた。
『我こそはヤキジャーケなり、我は確かに神であるが、小鳥様には勝てないのじゃ。勝てないのじゃ。勝てないのじゃ……(エコー)』
ヤキジャーケさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「覚悟は出来てるわね?」
「「はい」」
「よろしい。じゃあまずは一段目ね」
「「え?」」
正座している俺と葉姉にコンクリートブロックが乗せられた。
「じゃあどんどん行くわね?」
すると二段目三段目とどんどん積まれていった。
「「お願い! お願いですからやめてください!」」
「いやよ」
「「小鳥様のきちくぅぅぅぅぅぅぅ!!!」」
それからめっちゃ積まれた。そして1時間が経った頃。
「ううっ、足が……」
「痺れて、動けない……」
葉姉と二人で足をぷるぷるさせた状態で横になっていた。
「お姉ちゃんたち何やってんの?」
「あ、アリスよ……小鳥様には気をつけ……ろ」
ガクッ!
「あっ、お寿司の時間になったら起こして」
ガクッ!
「本当に何してんの?」
それから一時間ぐらいした後にアリスに起こされて俺と葉姉は足をぷるぷるさせながら車に乗った。
「じゃあ出発!」
アイちゃんには悪いけど、小鳥様と待ってて貰うことになった。さすがに今日は小鳥様に近づきたくない。足が死にそう。あっ、薬飲まないと。
「葉月ちゃん足が……」
「つ、つらい……」
俺と葉姉はアリサを膝枕にして横になっていた。
「お前らシートベルトをしろ」
「お父さん、この二人はチャイルドシートだよ」
よし、アリス。ドアを開けろ。突き落として身体をガタガタ言わせたる。
それから数分の時が経ってお寿司屋さんに着いた。
「お前ら抱っこはいるか?」
「「い、いる……」」
「ったく、アリス。葉月ちゃんの方を頼む」
俺は将吾に、葉姉はアリスに抱っこされてお寿司屋に入った。アリサに抱っこされると確実に転ぶからな。
「有名な回転寿司、ぐら寿司だ。今日はお祝いなんだから好きなだけ食べな」
さて、焼き鮭を食べるとするか。……え?
「焼き鮭が……ない……!?」
「なんであると思った?」
いや確かに冷静に考えるとそうだけど、なんでないんだよ!?
「とりあえず赤身とイクラ」
「あっ、将吾私もイクラ取って」
「はいよ」
赤身もイクラも久しぶりだな。さて醤油はどこに……
目の前を見るとアリサが醤油を倒して辺り一面が醤油の海と化した。
「パパ」
「ん? どうしたああああああああああ!!!?」
お前の方がどうしたんだよ。お前の反応の方がヤバいよ。
「アリスそっち拭いて。葉月ちゃんも拭いて。私は食べてるから」
「「おい」」
なんやかんや言いながらテーブルを拭いている二人。将吾も拭いている。
だから俺は1人でイクラを先に食べる。
「(ああっ、娘たちが私のドジを何事もなかったかのように片付けていく……)」
「パパ、中トロ取って」
「少しは空気読め。それでも高校生か?」
いいえ、3歳の幼児ですが何か? 将吾が俺のことを3歳って紹介してたよな? 3歳児って空気読めるんですか?
「まったく、よいしょ」
俺は将吾の後ろを通ってレーンの前まで移動。透明なドーム状の物質に入っている中トロを発見した。
「?」
これどうやって取るんだ? たぶん衛生上のためにつけてるんだろうが、これどうなってんの? ……わからん。よし、このまま取ろう。
「イリスお前何やってんの!? 今すぐレーンに戻せ!」
「こう?」
俺はドーム状の物質の隙間から握りの上に乗っている中トロのみを摘出してレーンに戻した。
「刺身だけ取って戻すな!! ご飯だけの皿を取るやつがいるか!!」
でももうごはんだけの皿はドーム状の物質に包まれて行っちゃったぞ?
「お客様、こちらいかがなさいますか?」
有能な店員さんがごはんだけになった中トロを持ってきた。
「本当にすいません! お金は払いますので!」
なんか将吾に頭を押さえつけられた。解せぬ。
「こちらの醤油、倒してもこぼれないやつ持ってきますね」
「本当にすいません!! こんなやつらばっかりで本当にすいません!!」
「子育てって大変なんですね……」
今度は将吾がアリサの頭を押さえつけて謝っていた。そして店員さんは若干顔を引きずっていた。
「アリスちゃん、サーモン取って」
「はい」
「ありがと」
「私子供じゃないのに……お母さんなのに……」
なんだこの光景は……カオス過ぎるだろ。
それからはアリサが割り箸の入った箱を落としたり、お茶をこぼしたりしてみんなで拭いたり、葉姉が「あの人のまね~」とか言いながらガリだけを食べたりしていろいろあった結果。
「出禁になったね」
「当然だな。じゃあ帰るぞ」
将吾が小鳥に報告したら小鳥様に頭を叩かれて「寿司屋で握りだけ戻すやつがいるか!」と言われたから「お皿だけ戻すのは?」と聞いたら無言でコンクリートブロックを積まれた。




