第89話 イリス先生の職業体験
今日から再び授業が始まる。
「じゃあ早速だけど、職業体験の説明をするね。職業体験は明日から3日間。各自好きなところに行ってね。それから3日間はこの紙に必要なことを書くこと。以上。頑張ってね。今日は職業を探す日だから終わり。解散!」
……ことはなく、職業体験らしい。何故中3のこの時期にやるのかは謎だ。
「イリスちゃんどこ行く? 一緒にやらない?」
光ちゃんが誘ってきた。
まあ、俺なんているだけで迷惑かける存在だから誰か居てくれると助かるしいいかな?
「あっ、イリスちゃんは私の所で教師やって貰うから」
……ん? 教師? まあ、いいか。面倒だけど、そういうのは小鳥に押し付ければいいか。
「せ、先生! 私もやりたいです!」
「五十鈴さん、それを言ったらみんなやりたがるからダメよ。大丈夫。授業中の可愛いイリスちゃんは私が見守っておくから」
お前さては俺が黒板届かないとかやってるのを見たいだけだな!?
「ほら、早く探さないと日が暮れるわよ」
「はーい」
光ちゃんの謎の哀愁が凄い。でも探すのも面倒だし、光ちゃんには悪いけどいいか。
「じゃあイリスちゃんは明日の打ち合わせするよ」
それから明日教えるクラスと教える内容の説明。小鳥が作ったプリントの把握。授業の教え方を教わった。どうやらこの3日間で教えるクラスは全部で6回。全クラス1回ずつらしい。
翌日……
「イリスちゃん、これ着てね」
白衣か……ならばすることは1つ!
「メガネと色の付いた液体が入っている試験管とフラスコ! どう?」
これがマッドサイエンティストの姿よ。
「フラスコはない方がいいわね。メガネは……男どもが壊れるわね。はい没収」
白衣以外の装備が奪われた……っていうかコートの上に白衣はおかしいだろ。
「じゃあ行くよ」
「はいはい」
それから授業をするクラスに向かった。今日は1年生のAとBをやるらしい。
「今日はこの幼女がみんなを教えるからね」
「「「先輩可愛いです!」」」
先輩呼ばわりと可愛い呼ばわりで感情がおかしくなりそうなんだが……
「じゃあこれから授業を始めましゅ!」
「「「(かわいい……)」」」
いきなり噛んだし……もうどうにでもなれよ!
「まじゅはきょーかしょのろくじゅーきゅーぺーじをひらいてくらひゃい!」
凄い『ちた』……『したったらず』になったんだけど!?
「きょーはれんりちゅほーてーしきをやりましゅ!」
ナニコレ!? 全然舌が回らない! しかも全員でニヤニヤしながら見てくるのヤメロ! お前らは教科書と向き合ってろ!
「じゃーまずは問いの1番を解いてくらひゃい」
「先生、わかりません!」
一人の生徒が手をあげた。
全く、仕方ないな。教えてやろう。
「ちょっと見えらいでしゅ。きょーかしょとのーとをみしぇてくらしゃい」
この舌足らずをなんとかしたい!
「は、はい。どうぞ」
なるほどね。これぐらいは簡単に出来ないと今後きつくなるだろうからしっかり教えて置かないとな。
「この問題はここにあるえっくすの式をだいにゅーすると……ほらこんな感じ! どう? わかりまちたか?」
「ありがとうございます!」
「先生! 私もわかりません!」
「僕も!」
「私も!」
……なんでこんなに分からないやつが多いんだよ。
「じゃあかいしぇちゅをしましゅ!
この式はここをこーしてこんなふーにだいにゅーしてくらしゃい。すると答えはえっくすがしゃんでわいがじゅーにになりましゅ!」
「先生何を言ってるかわからないのでこっちきて教えてください!」
分かってるよ! でも何故か呂律が上手く回らないんだよ!
「もーい!! てしゅとしゅる!」
「「「えー」」」
お前らはテストがいやだろ? でも俺は授業するのが嫌なんだよ。
「じゃーてしゅとはじめ!」
それから授業終わりまでテストで粘った。他のクラスでも同様のことをした。
「イリスちゃん、テストやったらなら丸つけしないとね?」
「ねえなんで私、あんなに舌足らずになったの?」
「……知らないわよ。ほら、丸つけする!」
俺は小鳥に言われた通りに丸つけや、こうすると良いみたいなアドバイスを書いた。
「終わった……」
「お疲れさま、イリスちゃん。ほら、今日のレポート書いてないわよ」
「ふぇ~~」
それからレポートを書いて小鳥と家に帰った。……という行動を残りの2日間繰り返した。
「アイちゃんは何をやったの?」
「私はね。向かい側にあるアパートの大家さんのお仕事したよ」
大家さんは金髪幼女!? いや、幼児か。男の娘だもんな。
「だれが幼児なの!? イリスちゃんだって幼女でしょ!」
「なっ!? 誰が幼女だって! 私を幼女と呼ぶな!」
俺たちが小さなことでもめているとアリスが入ってきた。
「二人とも幼児だから早く晩御飯食べてよ」
「「黙れ雑魚が!」」
「何故にいきなり罵倒!?」
ちなみに俺が授業中に呂律が回らなくなった理由は小鳥がリラックス出来ると俺に飲ませたお茶に魔法が混入していたからだった。




