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   記憶喪失

読んでくださってありがとうございます

誰かが呼んでいる……いや呼ぶひとなどいない。私はカラッポなのだから







少女はゆっくりと目を開けた。視界に入ってきたのは白の天井そして右腕に刺さっている点滴……

病院という言葉が浮かんできた。頭に痛みを感じ、左手を動かして触ると包帯がまかれているのがわかった


「えーと、どうして私ここにいるのかな?」


と少女がつぶやくとパタパタと足音が聞こえてきた。扉に視線をやると二十代後半ぐらいのきちりと化粧をしたきれいな女性が入ってきた。少女が目を覚ましているのに気がつくとうれしそうに抱きついた


「よかった。目が覚めたのね」


少女は抱きつかれ驚き、頭の中が混乱した。少女は女性が誰だかわからなかったからだ。失礼なことかも知れないと思いつつ聞いてみることにした


「えーと……どちらさまでしょうか?」


「ああ、ずいぶん会ってなかったからわからないか…最後にあったのは確か結香ちゃんが小学校に入る頃だったかな?では改めて麻里まりよ」


少女に抱きつくのをやめ、目を合わせにっこり微笑む女性―麻里はウインクして


「叔母さんはよしてね。麻里さんって呼んでね。もしくは昔みたくお姉ちゃんって呼んでもいいわよ」


少女―結香は麻里の言っていることがわからずさらに混乱した。取りあえず落ち着いて整理しょうと深呼吸をした。すると少しだけ冷静になれた。


まず目の前にいる女性が自分の叔母で麻里という名前。では自分の名前は?と思い考えてみたが出てこない。そういえば麻里はさっき自分のことを結香ちゃんと呼んだ気がする。ということは自分は結香なのだろう。


名前がわかったが苗字がわからない…普通は自分の名前がわかるはず。ということはさっきから思い出そうとしているが思い出せない自分ってもしかして記憶喪失ということだろうか?そもそもなぜ病院にいるのかもわからないし。


と結香が考えこんでいると急に眉間にしわ寄せ、しゃべらなくなった姪っ子を心配して声かけた


「ねぇもしかして、どこか痛むの?先生もうすぐ来てくれるから」


ああこの人は本当に自分のこと心配してくれているんだと思うとなぜか胸がほっとして暖かくなった。


「体は少し痛みますけど…それよりも私は結香ですか?」


「へ?もちろんそうよ。どうしたの?」


麻里が首を傾げ不思議そうな表情をした。それでこれはあれだろうなぁとうすうす感じていたことが確信に変わった。こいう状況になっても意外と冷静な自分がいるのに結香は驚きつつ、他人事みたいだなと感じた


「ごめんなさい。なにも覚えていないんです。というより自分がどこの誰か忘れてしまったようです。

多分、記憶喪失だと思います」


「え?…冗談とかじゃなくって?」


麻里の言葉に結香は首を縦に頷いて肯定した


「ええー!!」


麻里の驚きの声が上がると同時に医者と看護婦が部屋に入ってきた


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