それぞれの想い
今回も更新遅くなりすみません。誤字・脱字も少しずつ直していきます
立蔵は結香の頭を軽くポンポンと叩いてて、髪をかき混ぜくしゃくしゃにした。結香は顔をしかめ、乱れた髪を手でなでつけ直した。
そんな結香を見て顔に出さないように努力しながら、立蔵は心の中で笑った。前はなにされてもほとんど無表情だったので、記憶を失くしたことはつらいだろうが、逆に得るものもあるだろうと立蔵は思う。例えば今の表情とか。
家庭内のことはどうにもできないが、学校でできる限り、いや自分が出来る限りのことを。
自分はあまり熱心に仕事ができないので教師に向いていないと立蔵は思っていたが、そうでもないらしい。結香が変わるように自分も変わっていくような予感がする。良くも悪くも。
とりあえずこれ以上悪くならないはず。記憶も、近いうちに思い出すかもしれない。鍵は環境の変化じ
ゃないかと立蔵は思っている。
まぁ、なるようにしかならないか。
と思いつつ、じゃあなと結香に手を振って、立蔵は去っていった。
早瀬秋登はかなりいらついていた。表に出さないようにしているが、顔が引きつるが自分でもわかったが、どうしようもなかった。それくらい限界に近づいていた。原因は戸田母娘と秋登の母。
何かにつけて美麗とくっつけようとするのだ。きっぱりと好きでないと否定しているのにもかかわらず。照れ隠しだろうと全然取り合わないのだ。
戸田母娘は今も暴れたりするが、少しずつ落ち着いてきた。その代わり当然だというように早瀬家に居座っている。母が歓迎しているからだ。
父も呆れているものの、母に惚れているせいか何も言わない。
家
にいれば秋登に美麗がつきまとう。完全無視しているが、美麗はおかまいなし。しかし、この頃業を煮やしたようで、秋登の部屋と美麗の部屋を一緒にしようと計画しているらしい。
それを朋樹から聞いて、秋登は家を出でいくことに決めた。必要最低限の物だけをバックに詰め、3人仲良く買い物に出掛けている今がチャンスだから。
携帯も持っていくか悩んだが、やめた。昨日、携帯を部屋に忘れしまい取りに戻ってきたら、すでに壊されていたのだ。慌ててショップに行くと中身のデータも破損されていて直すことは出来ないと言われた。
こんなことするのは美麗しかおらず、問い詰めたらしていないと泣き、秋登は母に美麗がそんなことするはずがないでしょうと怒られた。しかし、一瞬母の影に隠れた美麗がにやりと笑ったのを見た。
怒りが頂点に達して、怒鳴りそうなのをなんとか堪えた。とりあえず今はそんなこと思い出している場合じゃないと思い、バックと制服を持て家を出た。
絶縁までいってないが、あまり会わない姉夫婦のところへ行くことにした。
姉にはすでにこちらの事情を話してある。そのさいに姉はあの人変わっていないねとつぶやいた。姉が結婚するときにかなりもめたのだ。母いわく、外見もいまひとつ、収入もいまひとつな男なんて認めないと。
姉は最後には母の反対を押し切って結婚した。秋登は姉の結婚相手に好感持っていたので、親はほとんど連絡しないが、秋登は連絡もしていたし、ちょくちょく会ってもいた。
それに甥っ子も遊んでくれる秋登に懐いていた。がしばらく忙しく、会えなかったので会うのが楽しみだ。とそういえば姉は最近女の子を出産したので行ったら姉夫婦の迷惑になるかもと思ったが、姉が察したらしく、全然かまわない。邪魔だと思ったら、遠慮なく追い出すから大丈夫だと言ってくれた。
今回はその言葉に甘えることにした。家に行く前に甥っ子と生まれたばかりの姪っ子に何か買っていこうと店に寄り、買い物をすませた。途中、携帯ショップに寄りスマホを購入した。
両親や美麗から連絡を取りたくなく、番号やメアドを変えることも考えたが、結香から連絡が来るかもしれないのでやめた。
番号やメルアドを覚えていなかったのだ。携帯のアドレスに入っていたので。昨日壊される前に連絡していれば違ったのかもしれない、いや番号だけでも覚えていればと何度も後悔した。
もし、美麗たちに結香の存在がバレたら何をされるかわからないと、もう別れたと思い、拒否されるかもしれないと不安になり連絡できなかった。
このままずっと連絡できなかったら…学校に行くしかない。でもそうなれば周りに結香の存在がばれる。でも別れることなんて絶対にできない。
なんだか無限ループにはまったようできりがないなと秋登は大きくタメ息をついた。
秋登は気づかない。そんな憂いの表情をしたフェロモン垂れ流しの美少年に注目していることを。
すれ違う女性がみな、振り返り秋登を見ると頬をそめタメ息をもらしていることを。
まだ、再会できず。あともう少しで再会する予定です……多分。作者の予想より長くなってきて驚いています




