過去の美麗と今の美麗
お気に入り900件突破!かなり驚きました。これも読んでくださるみなさまのおかげです。大感謝です
戸田家は秋登が小学校に入った年に、隣に引っ越してきた。
母親がお互いに似たもの同士だったからか、すぐに意気投合し家族ぐるみの付き合いが始まった。
秋登は10年上の姉がいた。ずっと弟や妹が欲しかったので、妹や弟みたいに美麗たちのことをかわいがった。
美麗は芸能界の子役以上に愛らしい容姿をしていて、素直ないい子だったので秋登の自慢だった。
大人たちは美少年、美少女の微笑ましい様子に、うっとりしていた。
母親同士はその頃から絶対に、2人を結婚させようと2人に「将来、秋くんと美麗ちゃんは結婚するのよ」とことあるごとに言い聞かせていた。
秋登自身、全然意味がわからなかったが、うんと言うと母親が喜ぶので言っていた。美麗もいまいちわかっていないようだったが「みれい、あきくんとけっこんする」と嬉しそうにいっていた。
小学校4年生ぐらいになると女の子と遊ぶよりも、男の子とカードやゲームで遊ぶのが楽しくなり、美麗とあまり遊ばなくなった。朋樹は物覚えがよく、秋登たちと混ざって遊んでいた。
秋登の母親はかわいいものが大好きで、娘にかわいい服とか小物とか買っていたが、姉はかわいいものがあまり好きではなく、母親とはまったく趣味が合わず、姉と母親には少しずつ溝ができていた。
そんな中、かわいいものが好きで、懐いてくれている美麗を実の娘よりかわいがり始めた。姉は対象が美麗に移ったのにほっとしたようだった。「母親だからあまり邪険にできなかったけど、自分の趣味を強引に押し付けるから、うんざりしていたんだよね」とこっそり秋登に話ていた。
美麗を邪険にしていたわけではなかったが、美麗が「あきくんがあそんでくれない」と秋登たちの母親にぼやいたらしく、いたく美麗のことお気に召していた母親に「美麗ちゃんと、遊びなさい」と怒られるようになった
秋登としては男友達と遊んでいたほうがずっと楽しかったが、いつまでもねちねちと言われるのも面倒くさいと思い、美麗と少し遊ぶようになった。
はっきりいてつまらなかったが、これも兄の務めだと妙に大人ぶった考え方をしていた。今思い返すとあまりの自分の幼稚さに苦笑がでる。
多分、この頃から美麗がわがままになってきたんだろう。回りは美麗をかわいがるばかりで注意したり、怒ったりする大人がいなかったのがまずかったんだろうと秋登は思う。いや、自分も注意とかしなかったから、自分も同じか。
しかも適当に付き合うことしかしておらず、もちろん結婚うんぬんなんてすっかり忘れていた。たまに言われていたが、冗談だと思って相手にもしなかった。
だから、美麗のこと表面の一部しかわかっていなかった。
朋樹に指摘され、調べた。その結果、自分の取り巻きをうまく使って、モトカノに嫌がらせしたり、自分のこと注意する同級生をいじめたりしていることがわかった。
美麗は秋登が一番嫌いな、外見ばかりきれいな、中身からっぽの少女に成長した。
もうそんな少女を妹とどころか、険悪感しか沸いてこない。
いまだに地面に座りこんだまま、何かいっているが無視して秋登は帰ろうとした。去ろうとしているのに気づき、美麗は慌てて立ち上がり、秋登の腕を掴もうとした瞬間
「さわるな!」
と秋登が怒鳴った。その声にびっくと体をふるわせ、掴もうとしていた手をひっこめて、きっと秋登のこと睨んだ
「おばさまに言いつけてやる」
「好きにすればいい」
冷え切った声で美麗にはき捨てるように言うと今度こそ足を止めずに、秋登は立ち去った。
心の中で結香に会いたいと思いながら
思ったように結香と秋登が動きません。なかなか話が進まないのに、作者が驚いてます。もっと短い話になる予定だったんですけど……




