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   あたたかいこころ

短くってすみません


はぁはぁはぁ


暗闇の仲足がもつれて転びそうに何度もなるがなんとか踏みとどまり、また走る

どのくらい走ったのか……


それともたいして走ってないのかわからない


だが走り続けなければ嫌なものから逃れられない


だから走る。だが、いつまで走っていればいいのだろう?


ずっと走り続けるのは無理なこと。今だってかなり息苦しく、休みたい


でも走ることをやめたら追いつかれる


追いつかれたらどうなる?


自分はカラッポなのだから別にいいんじゃないか?


そうだ自分はカラッポ


だって自分が誰か忘れてしまったんだから


いやはたして自分というものは存在したのだろうか?




もしかして………自分は初めからいなかった…?





「―――――」


結香は声にならない叫び声を上げ飛び起きた


荒い息を静めるため大きく息を吸った。まだ心臓がバクバクと音を立てているがいくらか落ち着いた


見渡せば白い天井と頭の近くにある台にある少し時期が早いひまわりが目に入ってきた


そこでまだ自分が病院に入院しているのを思い出した


精密検査をした結果異常なしだったので明日には退院する


いや時計を見ると深夜の2時すぎだから今日だ


叔母の麻里には記憶がないことを不安に思っていることを表情や態度に出ないように押し込めていた


よくわからないがそうしなきゃいけない気がしたのだ。もしかしたら同情されるというか可哀想だと思われたくなかったのかもしれない


多分麻里とはあまり親しくないのかもしれない。接する態度がよそよそしいというかぎこちない感じがしたのだ


それでも心配していることはわかっていたので結香からは何も聞かなかった


両親がなぜここにいないのかなど


ふと昼間にお見舞いにきてひまわりを持ってきてくれた自分が身を挺して助けた…というのは大袈裟だが、かばったという少年―志田蒼史と母親の志田さくら親子が来てくれたのを思い出す


麻里とさくらはあまり歳が変わらないのと気が合うみたいですぐに意気投合していた。2人が話しているのをぼんやり聞いていたら、蒼史が結香に話かけてきた


「お姉ちゃん、まだ痛む?」


「大丈夫だよ。…ごめんね。君のこと覚えてなくって」

最初にお礼を言われた時、結香の記憶喪失の件は話した。すごく驚かれ、何度も謝られたので傷が原因ではなく精神からきているものだから関係ないとも説明した


記憶喪失になるきっかけではあるかもしれないが


蒼史は首を横に振った


「だいじようぶだよ。お姉ちゃんが忘れてもぼくがおぼえているから」


その言葉を聞いて胸の奥が温かくなった


自分が一番欲しい言葉を蒼史がくれた


ああ、自分を少しでも覚えているひとがいることがこんなにも嬉しいことだなんて


結香は思わず泣きそうになったのをぐっとこらえ微笑みを浮かべた




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