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転生未遂から始まる恋色開花  作者: にぃ


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第89話 ノヴァアカデミー第5期生ノベル科

申し訳ございません

第87話を投稿前に88話を更新していたみたいでしたので、昨日87話を差し込み致しました。

良かったら87話もご覧ください。

「諸君、スターノヴァのアプリは見てくれたかな?」


 校内専用クリエイト作投稿アプリ『スターノヴァ』。

 現2年生の小説、イラスト、声楽、音楽を早速拝見させて頂いた。

 分かってはいたけどレベルが高い。

 特にイラストと声楽はプロと遜色ないレベルの作品が並んでいた。

 イラスト科と声優科のみが定員割れを起こしていない理由の一端が見えた気がする。


「昨日の全校集会である程度説明したが、学科別に色々と制限がある。それをこれから説明しよう」


 昨日受けた説明の中では『出版作の投稿は不可とする』というものがあった。

 それ以外にも何か制限がある感じなのか?


「まず、諸君は『ノベル科』であるが、どうかそこに囚われすぎないでほしい。ノベル科だからといって小説だけがクリエイト作ではない。詩を投稿しても良いし、エッセイを投稿しても良い。何ならイラストや音楽を投稿することも可能だ」


 うーん。ノベル科生徒が他のジャンルを投稿するなんてあるのだろうか?

 ——いや、あるな。

 イラスト科にはイラストと小説の二刀流クリエイターが居た。

 昨日ベータポリスで見た瑠璃川さんの『星の詩人の物語』。

 あの作品ならかなりいい線行くのではないだろうか。


「次に、年に1回、年次ランキングというものが発表される。その年次ランキングで上位を取った作品はほぼ必ずメディア化される」


「な——!」


 思わず声が出てしまった。


「ノヴァアカデミーを舐めるな? 新設校でありながら各種業界への繋がりは相当なものだ。スポンサーの方々もスターノヴァのランキングへの注目度は高い。あの『ラブリーくりむぞん』の絵師もここからデビューしたのだぞ」


「「「ええええええっ!?」」」


 あの神アニメラブリーくりむぞんの絵師がノヴァアカデミー出身者!?

 この学校でイラストを学んで、あそこまでの大成功を収めたというのか。

 やばい、一気にこの場所が神聖な場所へ思えてきた。


「次に、スターノヴァに投稿していた作品が他所でメディア化した場合はすぐに申し出てくれ。先にも説明したが権利の問題が発生してくる為だ。故にスターノヴァでランキング上位に食い込んだ作品は公募やwebコンテストなどには応募しない方が良いかもしれない」


 む、むむむ。

 これは中々大きな問題だぞ。

 今書いている2作は正直書籍化を狙っている。

 だから『小説家だろぉ』ではがんがんコンテストに応募する予定だったのだけど……


「webコンテストで賞をもらうだけだったら制限には引っ掛からない。だが、そこからメディア化の打診を受けた際はスターノヴァでの投稿は諦めてもらう。どちらを選ぶかは諸君らに任せるさ。敢えて両方に参加して書籍化の打診を受けたら考えてみるのも良いかもしれない」


 そうしようかな。

 まぁ、僕の作品が書籍化されるほどの影響があるかはわからないけど、挑戦だけはしておいても良いかもしれない。


「ランキングは毎月更新される。面白いくらい順位は変動するぞ? 今まで高評価を出していたレビュアーが急に低評価に変更することもあったりするからな。無論、逆もある」


 小説家だろぉでは一度評価を貰ったら評価者が星の数を変えることはほとんどない。

 だけどスターノヴァはそうではないということか。

 見せ場の回では星は伸びるかもしれない。だけど溜めの回では評価は下がりそうだな。


「それとな。ここからは私個人のお願いだ」


 教卓に両手を付き、眼光を細めて懇願するように僕らを一瞥する。

 突然空気が変わり、一同が月見里先生の次の言葉に注目する。


「学科別ランキング、年次ランキングの他に全学課の生徒が競いあう『総合ランキング』というものがあることを昨日伝えたが——」


 ノベル科、イラスト科、声優科、音楽科。1年生計144名が星の数で競うランキング。


「総合ランキングの結果は毎月発表されるのだが、私個人の願いとしてぜひこのノベル科からランキング1位の者を輩出して欲しい」


 月見里先生はノベル科の講師だ。

 だからこのお願い自体はごく自然なこと。

 そう思っていたのだけど、月見里先生の真意は別にあった。


「ノヴァアカデミーは設立されて今年で5年目だ。総合ランキングも40回以上行われてきた」


 月見里先生の表情が一瞬歪む。

 何か言いにくいことをこれから伝えようとしていることが雰囲気から察することができる。


「総合ランキングでノベル科の作品がトップになれたことは過去1度もない(・・・・・・・)


 その言葉を受けて教室内が戦慄した。

 なるほど。ノベル科からトップを輩出して欲しいというのはそういう理由か。

 今まで一度もランキングトップ者が出ていないノベル科。

 つまり、その事実は講師である月見里先生の手腕が疑われてしまうということ。

 ノベル科の受験者が極端に少なかった理由も関係しているのかもしれない。

 不甲斐ない結果を出してしまっている先生は生徒に対して申し訳なく思っているのだろう。


「それとな、毎年秋を過ぎるとライバル校であるエデンアカデミーとクリエイト対決を行っている。」


 エデンアカデミー。

 受験生の頃、ノヴァアカデミーのことを調べていると節々でその名前が登場していた。

 ノヴァアカデミーと同じく、ノベル科、イラスト科、声優科、音楽科の4学科が存在し、噂によると質はエデンの方が上と聞く。

 その分、入学費がくっそ高く僕は早々にエデンアカデミーは志望校候補から排除していた。


「各学科2名ずつ+1名。計9名を各学年から選抜する。もちろんスターノヴァのランキングも選考の一部となる」


「あの……先生、プラス1名というのは?」


 おずおずと挙手をして質問をしてみる。

 一瞬、すべての視線が僕に集中し、つい物怖じしてしまった。


「ああ。選考人数を奇数にしないと4対4の引き分けになる可能性があるからな。どこかの学科だけは『3名』選考されるのだ。それがどの学科からなのかは未定だ」


 なるほど。ちゃんと勝敗に白黒つける為のプラス1名選考というわけか。

 引き分けが考慮されているということはきっと毎年拮抗した戦いが繰り広げられているのだろう。


「ちなみに去年の結果は1年生選抜チームは0-9で敗北。2年生選抜チームは1-8で敗北。はっはっは惨敗だな」


「全然拮抗してなかった!?」


 エデンが強すぎるのか、ノヴァがアレすぎるのか、先輩達は苦渋を飲まされていたようだ。


「大丈夫だ雪野君」


「えっ?」


「今年の1年生はイケる。私はそう確信している。第5期生のキミらは『黄金世代』になると私は思っているぞ」


 黄金世代。

 そうか、今年の1年生は有名人が多い。

 僕の横に座っている桜宮恋、僕の後ろに座っている氷上与一、イラスト科には雫や淀川さんもいる。

 これだけ強いメンバーがそろっていればどんな敵にも負けない気がする。


「期待しているぞ。雪野君」


「……えっ?」


 なに?

 なんで今僕名指しで期待されたの?

 花恋さんでもなく、氷上与一でもなく……もしかして月見里先生は僕をそれほど高く評価してくれているのだろうか。

 そういえば面接の時に恋愛小説の革命を起こせる2大巨頭の一角のように評価してくれていたっけ。

 僕なんかが選考に選ばれる可能性などかなり低いと思うけど、期待してくれる人がいるのなら精一杯頑張ってみよう。


「先生。質問よろしいっすか?」


 一人の生徒がおずおずと挙手をする。


「キミは……『風味爽快ぬれマスク』の加藤さんだったな。何かな?」


「わわ。著名まで覚えてもらって光栄っす。えと、スターノヴァへの投稿作品って何作でも応募しても良いものなのすか? 私、没作合わせると300作くらいあるのですが」


 すごいな!? この人!

 僕もPCの中に没作はたくさんあるけれど、せいぜい70作程度だ。

 あとキミの本当に著名それでいいのか……。


「おっと、そうだったな。言い忘れていた。スターノヴァへの応募は一人3作までにしてくれ。もし4作目を投稿したい場合はスターノヴァから1作品を削除してもらえれば投稿可能だ」


「むむむ……3作っすか。承知したっす。ふぅむ……『スキル:単三電池召喚』と『好きな子の眼鏡拭きに転生してみた』のどちらかは諦めなければならないっすね……ぶつぶつ……」


 どっちも読みてぇ!

 なんだその気になりすぎるタイトル!?

 風味爽快ぬれマスクの加藤さんか。覚えておこう。ていうか忘れられないほどのインパクトを与えられてしまった。


「先生、我も質問よろしいかな?」


「『アルティメット=インフィニティ=サイレントミラージュ=サクリファイスデーモン』の井上くんか。質問を許可する」


 どうなってるの? この空間のクリエイターネームは。

 どうして皆してまともな著名を付けようとしないの?


「我の小説は約300万文字あるのだが、それすらも評価してくれるのだろうか?」


「結論からいうとノーだ。スターノヴァの小説投稿機能は1話1万文字までとなっており、審査対象は週5話ずつまでと決まっている。つまり最長で5万文字ずつしか評価されないことになる」


「むむむ……そうであるか。残念無念。1023話が一番自信のあるの回だったのだがな」


「それは書籍化してから読者に評価をもらうと良いさ。まずは序盤の展開で書籍化に持ち込むよう添削してみると良い」


「承知の助」


 ノベル科の同級生が個性豊か過ぎる。


「先生。俺からも質問いいですか?」


 続いて挙手をしたのは池君だった。

 ものすっごい後ろの方の席にいる。氷上与一に睨まれたのがよほど怖かったのだろう。


「噂なんですけどー、このクラスに盗作魔がいるっぽいんすよね。せんせーはどうしてそんな盗作魔を入学させたんですか? そんな奴と同じ学び舎にいるの嫌なんですけど」


 質問でもなんでもなかった。

 単に僕へ対する誹謗中傷を当てつけているだけに過ぎない。

 花恋さんが物凄い形相で池君を睨みつけている。

 そんな視線に気づいているのかどうかは知らないが池君は口上の続きを並べだした。


「ていうか盗作魔を入学させる学校ってどうなんですかね? ランキング上位作品がメディア化されるっつー話もにわかには信じられな——うっ!?」


 池君が急に言葉を詰まらせていた。

 何かに気づいてしまったと言わんばかりの反応だ。

 彼を黙らせたのは教壇に立っている月見里先生の雰囲気からだった。

 先生は眼光を鋭くしながら無言で池君のことを見つめている。

 それだけなのに先生が苛立っているのが分かった。

 一転した場の雰囲気が池君の言葉を詰まらせたのだ。


「高談社、大学館、宝玉社、三葉者、門蔵社……日本だけでも10社以上のメディアと当校は繋がっている。中国やフランスのメディアも合わせればノベル関係だけでも20社以上とのつながりがある。イラスト、音楽、声優事務所なども含めれば3桁は超えるだろうな」


「な——っ!?」


 それは小説家を目指すものなら一度は聞いたことがある超有名企業の名前だった。

 あの桜宮恋が所属していた事務所の名前すらある。


「このスポンサー企業様達では不服か? そう思うなら無理にスターノヴァに参加することはないさ。一生チャンスを棒に奮っているが良い」


 絶句しているのは池君だけではない。

 この場にいる全員がノヴァアカデミーの偉大さを思い知らされていた。


「それに、だ。盗作魔がどうのこうの言っていたが、対象者は法的に前科が与えられたわけじゃない。言わば未遂事件のまま終焉している。いや、法的に訴えがあったけではないのだから『事件』ですらない」


 月見里先生。僕の過去を知っていたのか。

 知っていながら僕の入学を認めてくれたんだ。


「私も当時の経緯知っているさ。ネット民が勝手に大騒ぎしているだけの出来事という認識としてな。確たる証拠もないのに多数派に躍らされて1人のクリエイターを傷つけるだけ傷つけた痛ましい事件さ。その者には是非再起し、素晴らしい作品を作り出してほしいと願っている」


「で、でも、盗作は——」


「——いいかげんにしろ!!!!」


「「「「……!?」」」」


 突然の激昂が講義室内に大きく木霊した。


「(氷上……与一?)」


 大声の発信源は僕の真後ろに席を取っていた氷上与一の存在だった。

 遠くにいる人すらも威圧されるくらいの殺気。

 それが離れた場所にいる池君にもビリビリと伝わっていた。


「過去の話をぶり返すのはやめろ! 関係ない所からグチグチ言われるのはもうウンザリなんだよ! そんなに人の悪口を言いたいのならその辺の肥溜めにでも叫んでいろ!」


「ひ、氷上君? お、俺はキミの味方をして……」


「誰がそんなことを頼んだ? お前に擁護されて俺になんの得があるんだ? いつまでも人の過去に首を突っ込んでないで自分の作品に向き合ってみたらどうなんだ? だろぉランキング10位男よ」


「な……な……!?」


「ついでにお前ら全員にも言っておく! 今後『盗作魔』などと口にした奴は俺が絶対に許さん。覚えておけ!!」


 しん、と講義室内が静まり返った。

 どういうことなのだろうこれは。

 一般的には氷上与一は盗作事件の被害者とされている。

 だから池君含めネットの皆は彼に同情し、煽るようにして僕を陥れようとしているのに。


 もちろん真実は逆である。

 氷上与一が盗作し、僕が被害者なのだ。

 氷上与一もその事実を知られたくないはずだ。

 知られたくないはずなのに、彼は僕への批判の言葉に激昂し、かばってくれるような発言をしてくれた。


 突然の出来事に全員が委縮しながら唖然としている。

 月見里先生だけは口元で小さく微笑み、その様子を眺めていた。


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