第28話 小説家とイラストレーター
帰宅した僕は部屋の椅子に深く腰掛け、ふい~っと大きなため息をついていた。
とにかく盛りだくさんな一日だった。
でもすべてをやり終えることができて僕は大きな達成感に満ちていた。
「雫はもう帰ってきているかな?」
一応チャットを送ってみた。
『もう家だよ~。さぁ通話の時間だ親友』と即返信があった。
雫に一言チャットを入れてからいつものように通話を繋ぐ。
「あれ? おかしいな。出ない」
一旦通話モードをオフにし、もう一度チャットを入れようとする。
~~♪ ~~♪
おや、今度は向こうから掛かってきた。タイミングがかみ合わなかったのかな。
あれ? でもいつもとメロディが違う気がする。まあいいや。とにかく出てみよう。
「もしもし――って、うわ! 画面に雫が映ってる」
「ビデオ通話モードだぞキュウちゃん。もう顔バレしたから開放してもいいかなって」
「えっ、僕は恥ずかしいんだけど」
「両手で顔を隠さないの。乙女かキミは。可愛いを通り越してあざといぞ」
「雫は恥ずかしくないの?」
「んー、まぁ照れはあるけど、それ以上にキュウちゃんの顔を見ながら話せるのが嬉しい」
雫はこう言ってくれているがやっぱり僕は普通に恥ずかしい。
だって画面一杯に美少女が映っているんだよ? その美少女が僕に語り掛けてきているんだよ? とんでもないことじゃない?
雫の顔から目を離すように彼女の後ろに映っている背景へと視線を移した。
「雫の部屋も丸見えだけど」
「どうぞご覧あれ。別に隠すものもないし」
「年頃の女の子の反応としてそれでいいのか疑問だね」
「んー、今までの秘密主義の反動なのかなぁ。今はなんか全部さらけ出したい気分かも」
そういうことを素で言わないでほしい。
ちょっと変な想像してしまうではないか。
「キュウちゃんちょっとどいてみて。男の子の部屋がどんなのか見たい」
「いいけど。別に普通の部屋だよ?」
「見せてくれるんだ。ありがと。5分くらいあげるから見られたくなもの片づけてきてもいいよ」
言われ、部屋を見渡してみる。
んー、別にみられて困るものはないか。洗濯物を干しているわけでもないし。
「別に大丈夫だよ」
「キュウちゃんノートPCって言っていたよね? モニターもってぐるっと回れたりするかな? 部屋全体見たい」
「ほいよー」
雫の指示通りノートPCを持ち上げ部屋の中をゆっくり散歩する。
「おっ、ゲーム機発見」
「うん。男の子の必需品だよ」
「ちなみに私も持ってるぞ。もっと早く言え♪ なぜ隠してたー?」
「いや、女の子との会話でゲームの話題を出してくる男は幻滅されると思ったから」
「それは普通の女の子との会話でしょ?」
「そうだった。雫は普通じゃなかったね」
「おいこら」
「雫はゲームやってそうな印象なかったからちょっと慎重になってたかも」
「バリバリやるぞー! ていうか雫ちゃんはオタクだよ? イラストも萌え絵多いでしょ?」
「確かに」
勝手な印象で雫は暇ができたらイラスト執筆だけに時間を費やしているんだろうなって思っていた。先入観良くないな。
「ちなみに私は乙女ゲー大好きです」
「雫、めっちゃさらけ出してくるね。今までの『超秘密主義の雫さん』は本当に死んでしまったのか」
「あー、それなんだけど、自分もさらけ出さずに何が親友かとふと思っちゃってさ。良くないなって思った。だから可能な限りさらしていく方向性にシフトチェンジしたのだ」
「なるほど。理由は分かったけど無理してない? 親友とはいえ異性だからさ話しづらいこととかあると思うんだ。話してくれるのはすごく嬉しいけど、本当無理だけはしないでね」
「ありがと。キミ優しすぎない? 気配りの鬼かな?」
「小学生の頃にクラスメイトの良いところを書けという課題で、クラスメイトほぼ全員から『雪野君の良いところは優しいところ』と書かれたことがある」
「悪いことじゃないはずなのになぜか悲しくなる!」
「他に記すような長所がなかったんだろうねぇ」
「言葉を濁してあげたのに!」
小学生ぼっちあるある、自分の長所は『優しいところ』になりがち。
しかも特段優しくした覚えのない人間にまでそういわれる傾向がある。
「でもキュウちゃんの場合は本当に優しいところがいいなって思われていた可能性あると思う。特に女の子は優しさに敏感だから」
「ハッ! 僕が小学生の頃女子とまともに話が出来たとでも?」
「自慢げに自嘲してきた!?」
「小学生の頃どころか中学の時も女子と会話した覚えないよ」
「なんでさー。キュウちゃんって話しやすい雰囲気あるのに」
「そんなこと言ってくれるのは雫だけだよ。雫の良いところは優しいところだね」
「今の流れでそれを言うか!」
「僕は本心で言っているよ。小学生の頃のクラスメイトとは違ってね」
「うぅ。ありがとうと言えばいいのか微妙だー」
冗談抜きにしても雫の一番の長所は優しさだと思う。
それは今日の行動からも十分に感じ取れた。
底なしに優しくなければ片道2時間もかけて僕を助けにきてくれたりしないだろう。
「そうだ。ありがとうは僕が言わなきゃいけなかったね。雫、今日は本当にありがとう。雫のおかげで黒龍問題は終着できそうだよ。それに――」
一瞬言い淀む。
これ言うの死ぬほど照れくさい。
でも今くらいしかいう機会無いしなぁ。
「それに?」
「それに――その――単純に――会えてうれしかった……です」
「~~~~っ!!」
画面越しの雫の目が見開かれる。
ノートPCの荒い画像でも彼女の頬の赤さまではっきり見て取れた。
「そ、そかそか。私も、キュウちゃんと会えてうれしかったよ」
「う、うん。そかそか」
「うん」
「うん」
「…………」
「…………」
ほら変な空気になっちゃった。
どうしたら良いのか、この桃色空気感。
ビデオ通話じゃなければまだ照れは隠せたかもしれないのになぁ。
とにかく、話を変えなければ。
「そ、そうだ。今日通話したかったのはお礼を言いたかったのともう一つ。小説の新作だけどさ」
「あっ、そ、そうだったね。プロット。そだそだ、プロット見せてくれるっていったよね」
「と言っても実はぼんやりとしか作ってなくて、良かったら雫の意見が欲しいんだ」
「あ、はい」
額の汗をぬぐいながら手で顔の熱を冷ますように手でパタパタ仰いでいる。あっ、ハンディファンつけた。
ビデオ通話だから雫の挙動が全て丸見えである。
「画面共有するね」
ディスプレイの全画面を共有モードにする。
プロット資料をドキュメントから立ち上げる。
「エロゲのアイコン見えたよ」
「……さて、まず世界観だけどね」
「全画面モードにして隠したな」
「僕がゲームなんてするわけないじゃないか。僕は昔から小説執筆一筋だよ」
「さっきゲーム機映していただろうがぃ」
「……ああ、そうだよ! エロゲ―だよ! 悪いか! 僕がエロゲやって悪いかー!」
「悪くないよ。男の子だもん。ねね。ちょっとやって見せてよ」
「やらないよ!? ちなみに言っておくけど、僕がもっているエロゲは年間シナリオ賞を受賞したものばかりなんだ。そう。これは資料! ゲームからシナリオを学んで自分の作品に活かすという勤勉さが垣間見えただけなんだ。雫がちらっと見たアイコンは泣きゲーで有名なソフトでさ。いやーこれがまた本当にシナリオが秀逸でゲームプレイ後は満足感でしばらく何も手が付かなかったなぁ。いやはやいつか僕もそんな一作を作りたいものだよ、うん」
「アイコンの可愛い女の子の18禁シーンを堪能したのかぁ」
「僕の言い訳聞いてた!?」
「言い訳って認めているがな。キュウちゃんのエッチ」
「うぅぅぅ!」
親友との初のビデオ通話でどうして僕はエロゲ趣味を暴露しているのだろうか。
しかも女の子との初ビデオ通話で。どうしてこうなった。
「大丈夫! キュウちゃんの知らない一面を知れて私はむしろ嬉しかったよ。キミ突けばまだまだ色々出てきそうだね」
「出てこないから!」
嘘である。
エロゲ趣味なんて実はまだ序の口で……いや、やめておこう。ボロが出てしまう危険性があるし。
「ごめんごめん。話が逸れたね。さぁ見せるのだ」
「エロゲ―を!?」
「プロットだよ!」
「ああ。そうかプロットプロット。んと。今画面に映っているやつです。はい」
プロットメモ帳以外に変なものが映っていないか不安で仕方がない。画面共有なんてするんじゃなかった。
「わっ、今回は恋愛物に戻すんだね。いいねいいね。キュウちゃんといえば恋愛だよね」
「うん。雫からも雨宮さんからも好評だったからまた恋愛物書こうと思ったんだけどさ。でもちょっと迷ってもいて……実は書いていて筆が乗ったのは異世ペンみたいな無双モノの方だったんだ」
「それは私も感じてたよ。異世ペンって世界観凝っていたもんね。キャラ設定もしっかりしていたし、キュウちゃんが乗って書いているんだろうなって思ったよ」
凝り過ぎなくらい凝った異世ペンの世界感。
書いていて楽しかったことは楽しかったけど、設定が凝りすぎてクドイのではないかと感じる一面もあった。
世界観の説明回は明らかにPV数下がっていたし。
逆にキャラクターの会話シーンが多い回はPV数が伸びていた。
キャラクター会話は全部フィーリングで書いていたけどそちらの方が好評だったのは嬉しいけど複雑だった。
そうだ。この際雫に聞いてみよう。
「ね、雫。異世ペンの7話と8話どっちが好き?」
「8話」
「おぉう。即答」
ちなみに7話は世界観説明回。8話は会話シーンしかない日常回だ
「キュウちゃんの作品ってキャラクター同士のテンポ良い会話が魅力的だと思うんだ。もちろんそれ以外にも秀でているところはたくさんいるけど飛び抜けてのいるのは間違いなく会話回だとずーっと昔から感じていた」
そういえば7000文字小説を送ったとき、雨宮さんも同じようなことを言っていた。
会話シーンが武器、か。あまり意識したことなかったけど、この2人が言っているのだから間違いないのだろう。
「ずっと疑問に思っていたんだけど、あの面白い会話シーンってどんな風に思いつくの? なんか参考にしている作品とか影響されているものとかあるの?」
「うーん。言うの恥ずかしい」
「いいなさい」
「……影響されているはエロゲです」
「そこに話戻るんかい!」
エロゲの共有ルートはギャグ多めの日常回が多い。
その日常回が好きで何度もセーブ&ロードして繰り返し視聴しているのは僕だけじゃないはずだ。
そして確実に言えるのは僕の作品の会話回はエロゲのテンポ良さが影響されているということだ。
「ともかく僕の作品は会話重視で進めるのが良さそうってことがわかったよ。でも設定もある程度凝りたいんだよなぁ」
「そっか。確かに今見ているプロットだと普通の高校生同士の恋愛小説っぽいよね」
「そうなんだ。世界観も何もない空虚なものだよ。せめてキャラクターに魅力的な設定があればそこから話が広げられると思うんだ。そこで雫先生の意見が欲しかったのだ!」
「わわ。雫ちゃんの出番か。うーん。私素人だから思いつきでしか意見出せないよ?」
「もちろんそれでいいよ! どんな設定のキャラクターが魅力的だと思う? 世界観でもいいけど」
できればこの主人公には無双させたい。
そんな秘めたる願いがあるのだけど、とりあえずフラットな気持ちで考えて欲しかったので黙っておいた。
「この主人公キュウちゃん自身がモデルだったりする?」
雫からの返答は僕が予想もしない質問であった。
「えっ? 全然そんなことないけど、どうして?」
「ほら。小柄で読書趣味。一人称は『僕』で親友キャラもいる設定」
「言われてみれば僕と結構共通しているな。無意識だった」
「キュウちゃんがモデルならさ、主人公は小説を書いている設定にするとか? どうせなら親友キャラも男じゃなくてイラストレーターの女の子にしちゃえよ~」
雫が冗談めに嘲笑いながら設定変更を勧めてくる。
小説執筆主人公か。ふむ。
「雫、その意見全面的に採用していい? おかげでちょっと閃いたかも」
「えっ? 本当に?」
「うん。主人公は小説執筆者。だけど全然受賞できずに悩んでいた」
「ふむふむ」
「それどころか根暗でコミュ症。日常生活も上手くいっていない」
「自分をモデルに対比しようとしてる? 言っておくけどキュウちゃんはそこまで卑屈な設定の人じゃないよ」
「ある程度誇張はしているよ。それくらい大げさに設定を振った方が物語は作りやすいんだ」
「それならいいけど」
正直言うと誇張なんてしていない。雪野弓を客観的に見たとき僕がそう見えただけなのだけど、雫はそれを見抜いてフォローしてくれたのだろう。
優しいな雫。
「話続けるね。主人公はある日交通事故にを見舞われる」
「いきなりすごい展開だ!?」
「ここで『だろぉ』要素を一撮み。意識不明の中、主人公の夢の中に女神が現れる。そこで女神は主人公に選択を迫る。異世界に転生し魔王討伐を条件にチート能力を与えられるか、それともこのまま何も与えられないまま現世に目を覚ますか」
「夢の中に女神様が登場するのは『だろぉ』ではお約束だけど、選択させてくれるパターンって逆に珍しいね」
こういうパターンで有無を言わさず転生送りされるパターンが多い。
だけどこんな風に選択させてくれるパターンも稀にある。
他作品の主人公は現世に後悔がないという理由で異世界転生を選ぶのだけど……
「この主人公は現世を選ぶんだ。自分の作品が読まれてメディア化されることが夢だからね。その夢をかなえる為ならチート転生を捨ててまで戻りたいと願うんだ」
「素敵。苦労せずにチート能力を手に入れることも出来るのにそれを選ばなかったんだ。夢をかなえる為ってところが雫ちゃん的にポイント高いよ」
「現世に戻り、療養生活の末退院した主人公はもう一度執筆活動に励む。そこで気づくんだ。執筆力が格段に上がっていることに。文章力、話の構成力はもちろん、今後どのようなジャンルが流行るのかという先見の予知まで身についていた」
「それは強いね。先見の予知は私も欲しいよ。正直それ一本だけでもある程度無双できると思う」
「もちろんこれは主人公の力っていうよりは女神の計らいで付与してもらった特殊能力の一種なんだ。いわば執筆に特有した覚醒かな」
「ファンタジー要素! 覚醒するのが執筆能力だけってのが異世ペンとちょっと違うね」
「ついにヒット作を立ち上げた主人公はクリエイティブ世界に飛び込んでいく」
「そこでイラストレーターの親友と出会うんだね」
「いや、親友キャラはヒット作が書籍化されたときにイラスト担当になったことがきっかけで仲良くなったという設定にしよう」
「おぉう。どこかで聞いたことがある設定だ。きっとキャラクターモデルの人は美少女イラストレーターなんだろうなぁ! この親友キャラ私の推しにしよう」
「とまぁ、なんとなく思いつきで設定をくみ上げてみたんだけど、どうかな?」
「すごくワクワクするよ! いいと思う! 覚醒要素あるし『だろぉ』でもウケると思うよ」
よし、雫のお墨付きをもらえた。
次回作の方向性は決まったな。
「って、ちょっと待って。この話恋愛小説だよね?」
「うん。そこはブラさずいくつもり」
「そ、そかそか。恋愛するのか。ふむふむ。ちなみに親友キャラは攻略ヒロインなのかね?」
「キャラ設定を女の子に変更するならそうなるかなぁ。イラストレーターヒロインなんてキャラ立ちまくっているしね」
「い、いいんじゃないかな。うん。イラストレーターちゃんを幸せにさせるのはいいことだ!」
「どうせなら大恋愛は忘れた頃にやってくる以上のスケールの恋愛物を書いてやろうと思っているよ!」
「おおおぉう! あんな壮大なスケールの恋愛するのかイラストレーターちゃん……逆にちょっと羨ましさが……い、いや、なんでもない!」
「あれ以上のものが書けるかはまだ分からないけど、頑張ってみるよ。ありがとう雫。すごく実りのある相談になったよ」
「い、いえいえ、またキュウちゃんの力になれて嬉しいよ。え、えと、じゃあ私はさっそくこのプロットから新作のイラストを立ち上げてみるね。というわけでまたね――」
「あっ、ちょっと待って!」
急に慌ただしく通話を切ろうとしてきたところを僕は慌てて静止する
「な、なんだよぉ。照れくさいんだから切らせてよぉ」
何を照れているんだろう? 自分がモデルの主人公と雫がモデルのヒロインが出来上がった辺りからやたら歯切れが悪くなったというか。
この二人の恋愛物を書こうとするだけでどうして照れる必要が――
「…………」
そういうことか。
そ、そりゃあ照れくさいわな。
「え、えと、もう一つだけ雫に言っておかないといけないことがあって」
「これ以上照れさせたら殺す」
「急に物騒なこと言い出さないで。ちゃんと真面目な話だから」
「う、うん。どうしたの?」
僕の真剣な雰囲気を察してくれたのか、雫も若干物怖じするように僕の言葉に耳を傾けているようだ。
「実は――さ。次回作は2作同時に立ち上げようと思っている」
「まだ隠し玉あったのか! 見せなさい!」
だよね。そうくるよね。
だけどそうできない理由が僕側にもあったりするわけで――
「ごめん。もう1作の方は公開まで見せるつもりはなくてさ」
「えっ……」
「あっ、ごめん! その! もう1作は本当にどうでもいい作品というか、僕一人が道楽でやるような感覚だから。クオリティも気にしないでほしい」
「キュウちゃんが見せたくないっていうなら私も強くは言わないけど……でも……」
「もう1作の方に関してはイラストの方も描かないでいいからね。雫には小説家とイラストレーターの話の方に注力してもらえると嬉しいよ」
「……っ!!」
「だから【だろぉ】に急に2作上がっても驚かないでほしいという意味での情報の前出しというか――雫? どうかした?」
「……キュウちゃんにイラストを拒否られた」
「そういうつもりじゃないよ!?」
「キュウちゃんのバカっ!」
「あっ――」
切られた。
まずい、喧嘩別れみたいになってしまった。
慌ててチャットの方でフォローを入れてみるが『キュウちゃんのバーカ』と一言返信があるだけだ。
駄目だ。1日時間を置こう。明日通話してくれるかなぁ?
もう1作の件、やっぱり雫には言うべきではなかったのかな。
でも言わなければ言わないでアップした時『なんで言わないのさ!』と文句ありそうだし。
何より雫にはあらかじめ知っておいて欲しかったという僕の気持ちもある。
『小説家とイラストレーター』の恋愛話はある程度軌道に乗るとは思う。
だけどたぶんもう1作の方はコケる。『だろぉ』向きではないし、雫の挿絵もない。文章としての面白さもあるのかどうか今のところ不明だ。
そもそも僕が2作同時並行で更新することなんてできるのかすら不明である。
だけど、それでもこの1作は試してみたかった。
「うぅ。もやもやする。何か気晴らしをしよう」
エロゲか? いや、正直そんな気分でもない。
そうだ。雨宮さんの7000文字小説を読ませてもらおう。
何々? 題名は【黒マスターと白ドールちゃん】。題名入れて6189文字か。
気持ちが籠っている作品に仕上がったって言っていたな。相当な力作なのだろう。楽しみだ。
桜宮恋の地の文のない会話のみの小説。これは僕にとっても貴重な参考資料になるかもしれない。
僕の会話文はどうしてもエロゲっぽさが付きまとうからなぁ。根っからの文学少女が会話文を描くとどんなものが生み出されるのか、未知の興味があった。
やがて僕はこの7000文字小説を読了するのだが。
僕は2つの意味で驚愕することとなった。




