第128話 ユキ色 しずく色
ウラオモテメッセージの最新話はそこで終わっていた。
まさか他の主人公の話が、実は『小太郎の創作』だったという展開にはビックリした。
続きが気になる。面白すぎる。クライマックスの展開がどうなるのか全然想像つかない。
明日になればきっとキュウちゃんは更新してくれる。
もちろんワクワクしている。でもそれ以上に焦燥感が膨れ上がっていた。
「(キュウちゃんがこんなに面白い作品を書き続けているのに、私は——)」
何をしているのだろう。
キュウちゃんの更新を待ち続けるだけの日々。
それで満たされようとしてしまった自分への怒り。
私はいつまで『読者』のままでいるつもりだ?
ウラオモテメッセージは——誰の作品だ?
キュウちゃんと——『私』の二人の作品だったのではなかったのか?
——『クリエイター水河雫は格が違う。下々に位置する池が何を言ってきても鼻で笑っていいんだ」
キュウちゃんはこう言ってくれた。
——『格の違いを見せつけてやれ雫。池が二度と立ち直れなくなるくらい圧勝してやれ』
私を信じてこう言ってくれた。
——『先に僕が池に格の違いを見せつけてくる』
有言実行。
ウラオモテメッセージは連日みるみるランキング順位を上げ、そしてついに今日池さんの作品を追い抜いていた。
キュウちゃんと池さんとでは格が違う。
——『それが出来たら次は雫の番だ。僕に続いてアイツに圧倒するイラストを描くんだよ』
そして自分は雪野弓と同格のクリエイターだ。
それを証明したい。
それを証明しなければならない。
それが出来ないと……私の為に頑張ってくれている愛しい人にとても顔向けできないから。
「池さんが怖いとか、自分の過去が恥ずかしいとか、そんなこと言っている場合じゃない!」
どうして自分はそんな『小さい』ことを理由に描かなくなってしまっていたのだろう。
描け。自分にはイラストを描くことしか存在意義がないのだと自覚しろ。
そして証明するんだ。
「雪野弓の担当絵師は水河雫しか有り得ないと世界に証明してやるんだ!」
愛しい人の作品を輝かせるために私は再びペンを持つ。
力強く握ったそのペンをもう二度と捨てたりしない。
そう誓った。




