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転生未遂から始まる恋色開花  作者: にぃ


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第112話 隠れハイスペック

 

「はい。雫ちゃん。高級ヘッドホンよ」


「わ、わわわわ、瑠璃川さんがすごいの取ってる!? 私がとったやつ何の特徴もないクッションだけど、本当に交換していいの?」


「もちろんよ。私は美少女が喜ぶ姿が見たくて取ったのだから。そのクッションも大事にするわ」


「えへへ。瑠璃川さん大好きー!」


 嬉しそうに瑠璃川さんに抱き着く雫。

 瑠璃川さんも鼻の下を伸ばして口元を緩めまくっている。反応が男子なんだよなぁこの人。


「というわけでこっちもプレゼント交換だよ。はい、花恋さん」


 僕が取ったのは枕サイズの花のぬいぐるみだった。

 バラを模った可愛い感じの景品。

 美しくもあり、可愛らしくもある花恋さんにはピッタリだと思って2000円近くの投資でゲットした。


「うわぁぁぁっ! やったやった! 弓くんからのプレゼントです! 一生大事にしますね」


 言いながら雫と同じように抱き着いてくる花恋さん。

 鼻孔をくすぐる女の子の香りに瞬時に顔が真っ赤になった。


「わ、私からはこちらです。皆さんと比べると大したことなくてなんだか申し訳ないです」


 花恋さんが差し出してくれたのはシンプルな真っ白のストラップ。

 アーチ状を模っており、とあるものを連想させる。


「すごく嬉しいよ。『弓矢』のストラップか。格好良くて男心をくすぐるよ。僕の名前にちなんだプレゼントありがとう。早速スマホに付けさせてもらうよ」


 人生初の女の子からのプレゼント。

 嬉しくないわけがない。

 本当に良いものを頂いちゃったな。花恋さんも言っていたけど一生大事にしたくなるレベルで僕は喜んでいた。


「ゲームコーナーはこの辺にして、次はどこにいく?」


「うーん。上に行ってみようか」


 なんとなく目的地を上に定めてみた。

 階段を上ると、スポーティな道具が揃っている施設が見えてくる。


「バスケとかバドミントンとかできる施設みたいだね」


「でも混んでいるわね。土曜日だから仕方ないけど」


 どうやら家族ずれに人気のスポットのようだ。

 僕らよりも一回り小さい子供が無邪気に駆け回っている。


「奥にバッティングセンターありますよ。あちらは結構空いているみたいです!」


 バッティングか。やったことないんだよなぁ。

 でもこの機会に触ってみるのは有りだ。

 いつかスポーツ物の小説を書くかもしれないし。


「よーし! 一番バッター雫ちゃん! 打っちゃるよ~!」


 元気よく一番槍として飛び出していったのは勿論雫だ。

 なぜか一番長いバットを選び、打席に立つ。


「わ、わわわ! 全然当たらない!」


 バットを振ってもかすりもしない。

 それどころか重心が貧弱すぎてバットを振る度に一回転していた。

 僕の隣でその様子を見ていた瑠璃川さんが小声で話しかけてくる。


「ねえ。雫ちゃんってなんであんなに可愛いの? 持って帰っていいかしら?」


「キミは普通に監禁とかしそうで怖いよ」


「あんなお茶目なお母さんが欲しいです」


「せめてお姉さんって言ってあげて。花恋さんは雫にバブみを感じすぎだから!」


 二人にツッコミを返している僕も彼女が可愛らしくバットを振り回す姿から目が離せない。

 見ていて優しい気持ちになれる。

 それは雫だけが持つ大きな魅力に違いなかった。







 バッティングは1ゲーム20球で一旦ピッチングが止まる。

 そのタイミングでバッターを交代し、順番に打席に入った。

 成績には非常に個性が出ていた。


 雫……20球中1本ヒット。

 花恋さん……20球中0本ヒット。

 瑠璃川さん……20球中18本ヒット。


「けっ! これだから才女は! 才能の違いを見せつけて満足ですか」


「うふふ。惚れ直してもいいのよ」


「でもでも、瑠璃川さん本当に凄かったです。水河さんのボテボテゴロとは違ってちゃんとヒット性の当たりでしたもん!」


「ボテボテゴロで悪かったな! 1回もバットに当たらなかった人が馬鹿にすんなー!」


 瑠璃川さん本当に何でも出来るな。涼しい顔でヒットを連発する姿は本当に格好良かった。

 そして花恋さん本当に小説以外何にもできないな。そのポンコツ具合が溜まらなく可愛いのだけど。


「さっ、最後はキュウちゃんの番だよ」


 雫からバットを渡される。


「ごめんなさいね。私がプレッシャーを与えまくってしまって」


 本当だよ。キミの後に打席に入る身にもなってほしい。


「弓くん。頑張ってください!」


 胸元で手のひらを握りしめながら期待のまなざしを向けてくる花恋さん。

 美少女達に見送られるのって本当に気分が高揚する。

 さて、野球漫画や小説で得た知識で打てるだろうか。

 球はそんなに早くなさそうだし、よく見て降ればなんか当たりそうな気がする。

 瑠璃川さん超えは無理にしてもせめて雫には負けないように頑張ってみようかな。


「よーし! 来い!」


 気分は野球漫画の主人公。

 放たれる球をよーくみて、僕はタイミングを見計らって思いっきりバットを振った。


 キィィン


 一応当たりはしたが、球は後ろに飛ぶ。

 うーん。ファウルか。一瞬タイミングが遅れちゃったかな。


「わぁぁ。さすが男の子です。私達よりもスイングに迫力がありました!」


「う、うん。アイツ、あんなに力強い一面があったんだね。なんか、なんか……」


「雪野君良い調子よ! 雫ちゃんもギャップ萌えで顔を真っ赤にしているわよー!」


「いらんことをバラさんでいい!」


 ふむふむ。雫が僕のスイングにときめいてくれているようだ。

 これは頑張らないといけないな。不甲斐ない姿を見せたくない。

 次のボールが放たれる。

 球はしっかり前へ飛び、ヒットとなった。

 よし、これで花恋さんの成績は越した。

 でも、瑠璃川さんのような綺麗な打球ではないし、僕自身もヒッティングがしっくり来ていない

 ちょっと色々試してみようかな。


「あっ、弓くんが左の打席に入りました!」


「でも漫画とかだと左バッターの方がミート上手い印象あるよね。それを真似しているのかなぁ?」


「雪野君らしい試みね」


 キィィン!


 おっ。

 左で降り始めた途端、打撃の音色が良くなった。

 バットを握る手もこっちの方がしっくりくる。


 キィィィン!


 ピッチングの球速が遅いせいかヒットが量産される。

 これは気持ち良い。

 打つことが単純に楽しくなってきた僕は自然と口元を緩ませて微笑んでいた。

 やがて、20球全てが放出され、僕の打席は終了する。

 結果は20球中19ヒット。

 さすがにホームランは打てなかったけど、最初のファウル以外全て前に飛ばすことができていた。


「いやぁ、楽しかったよ。瑠璃川さんの記録を超えることができるなんて自分でもびっくりだった」


 汗をハンカチで拭いながらみんなの元へ寄っていく。


「「~~~~っ!!」」


 目が合った瞬間、花恋さんと雫は僕から目をそらしていた。

 なぜか頬が若干赤く染まっている。

 対して瑠璃川さんだけは悔しそうに僕を睨みつけている。


「雪野君、今までスペックを隠していたわね? 小説だけじゃなくて運動神経にまで差を付けられて正直ジェラシーだわ」


「べ、別にかくしていたわけじゃないよ!? たぶん日頃の基礎トレの効果だと思う」


 ランニングや筋トレは高校時代からずっと行っていた。

 その甲斐あって高校時代の体育の成績は4だったりする。


「貴方は何となく運動できない人だと勝手に思っていたからギャップでとても格好良く見えたわよ。この二人なんてこんなに真っ赤になっちゃっているし」


「「別に真っ赤になってないもん(です)」」


 顔を真っ赤にさせながら叫ぶ二人。

 この二人の好感度が得られたのなら今まで頑張った甲斐があるというものである。


「雪野君、次こそ負けないわ。バドミントンで勝負よ!」


 瑠璃川さんには完全にライバル認定されてしまったみたいであった。


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