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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
2章

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51:ゲロ吐きそう。

 たっぷり二週間後、レトン商業国の旗を掲げた砂船十隻がやって来た。

 いやいや多すぎだろ、これ。

 でも盗賊やサルージ族の男たちを護送するなら、これぐらい必要なのか。


 キャロたちとここまで乗ってきた砂船より、レトンの船は一回り大きい。さすがに威圧感があるな。


「わたしはレトン商業国の評議会議員のひとり、南部統括を任されたアスデローペである。砂漠の民の族長らと面会願おう」


 四十前後の威風堂々とした男が船から下りてきて、こちらへ向かって声を上げた。張りのある、よく通る声だ。

 レトン商業国に国王はいない。

 十一人いる評議会の議員たちによって、国政が行われている。

 そして議員全員が商人でもあった。


 盗賊程度で国が動く理由が、ここにある。

 襲われた砂船は、議員たちの船でもあったのだろう。

 バカな盗賊たちだ。個人でやっている商人の船だけを狙っていたら、こうはならなかったかもしれないのに。

 いや、商業国相手にしたのが、そもそも間違っていたんだろうな。


 だから評議会議員がここに来た――だけではない。


 アスデローペ卿が面会を希望したが、主導権はあちらにある。そして面会はドーナツ岩山の中ではなく、彼らの砂船の船内で行われることになった。

 それだけ砂漠の民が信用されていない。そして――。


「単刀直入に聞こう。盗賊どもから話は聞いたか?」

「あぁ、聞い――」

「それが人にものを尋ねる態度でしょうか? 商人とはいえ、あなたは一国の議員です。王国で言うところの大臣ですよ。あなたの態度一つが国の評価に繋がるのです。もっと正すべきではありませんか?」


 面会を申し出たくせに、砂漠の民の族長たちを護衛すら許可せず自分の都合のいい場所に呼び出したのだ。周りはレトンの兵士に囲まれている。これほど侮辱的な状況はない。


「ん? この子供は……砂漠の民ではないようだな」

「失礼しました。僕はオルフォンス王国のディルムット・シュパンベルクと申します。父はサウル・シュパンベルク男爵です」

「なっ。オ、オルフォンス王国の貴族が何故ここに!?」

「砂漠の盗賊団の一部が、我がオルフォンス王国の領土を侵し、父が領主を務めるゼナスを襲撃したのです。その者たちは王都へと送られましたが、後日、キャット・ルー族のキャロ殿がゼナスを訪れまして」


 その件を王都に知らせ、アジトの場所を聞き出して貰い、そして領主の名代として事の顛末を見守るために僕が同行した。

 全てを話す間、アスデローペ卿の顔がどんどん青ざめていった。


「オ、オルフォンス王国の方々に、その……犠牲者は……」

「幸い、出ていません。よかったですね」

「くっ……」


 そう。うちに被害者が出なかったのは、レトン商業国にとってもよかったことなのだ。


「まさか盗賊の首領が、元ひょう……んっんっ。盗賊団のアジトの場所を知らせる(ふみ)には、その件に関してまだ何も書かれていませんでした。ですが文を手に入れてすぐ、僕は砂漠に来ています。その間にどうなっているかは知りません」

「そ、そうですか……。で、では直ぐ、評議会より……」


 アスデローペ卿は脂汗をだらだら流しつつ、何をどうしていいかわからない様子だった。


 砂漠の盗賊団。その首領は、元レトン商業国の評議会議員だった。

 そいつは二年前に評議会議員を辞職させられている。だけどサルージ族が盗賊と一緒になって商船を襲いだしたのは五年前から。

 つまり奴は、評議会議員でありながら盗賊の首領でもあった時期が三年もあるってわけだ。


「評議会の方々は気付かなかったのですか?」

「……それを知ったのは半年前だ」

「なるほど。それで慌てて討伐に乗り出そうとしたんですね。でもさすがに、砂漠の民との戦争は避けたかったと」

「それもある……我が国もわずかな軍を動かし、何度か砂漠に出て奴らを探したのだ。だが」


 砂漠はどの国にも属さない、少数部族が暮らす土地だけど……いやさすがに軍を動かすのはどうかと思うな。

 まぁこの際それは口を噤むとして。

 砂船で何度か探したものの、潜伏場所がわからないのでは偶然見つけるのを願うしかない。

 でも砂漠にはモンスターも生息している。無駄に兵の犠牲者を出したに過ぎなかったそうだ。


 そして。


「我々が直接動くことで、オルフォンス王国や東のチェトス国を刺激してしまわないか、心配もあったのだ」

「そりゃまぁ、あんな船団を見せられたら、どこに攻めに行くんだって思いますよね」


 元々商人だった議員だ。商船の航行ルートも熟知しているだろう。だがそれ以外の砂漠は知らないハズ。

 いくら探しても見つからないということは、砂漠の民が手引きしているに違いない。

 そう思ってレトン商業国は探りを入れた。

 その考えは正しく、砂漠の民が盗賊に協力していると知ったそうだ。


「でも実際にはサルージ族だけで、他の部族はまったく関係なかったんですよ」

「だから盗賊とサルージ族を捕え、差し出せば全て不問に――」

「無関係の人を脅迫し、上から目線で命令ですか。元はと言えば自分たちの身内でしょう! 何故評議会を追い出したのか知りませんが、自分たちで尻拭いもせず、それを他者に尻拭いをさせようなんて図々しいにもほどがある!」

「ぐ……い、言わせておけば小僧っ」

「商人なら! 一流の商人なら、自分の失態は自ら尻拭いをするはずです。違いますか」


 最後は語気を下げ、少し落ち着いた口調で言った。

 議員だなんだと言っても、彼らは商人だ。巨大な商会を抱え、大陸中に取引先を持つ商人だ。


「信用が一番、なんじゃないですか?」


 商人は信用が一番――なんてうたい文句は前世でもよく耳にしていたけど、まぁ実際のところ、詐欺も多かったよなぁ。

 でも、今の一言は彼に届いたようだ。

 項垂れ、肩を震わせていた。側に控えている副官のような人物も、眉間に皺を寄せて悲痛な表情を浮かべている。


 じゃ、ここで。


「では取引をしましょう」

「は? と、取引?」

「はい。取引です」

 

 俺は努めてにこやかに笑った。

 八歳児の俺は、笑うとかわいい――らしい。ゲロ吐きそう。

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