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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
2章

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42/52

42:残念そうな顔で俺を見た。

「では、行ってまいります」


 なんとか父上殿の説得に成功し、俺はキャット・ルー族への同行を許された。もちろん、ロバート卿の同行が前提だけど。

 彼とは別にもう二人、騎士団から同行することになった。俺の護衛役は三人ってわけだ。


「はぁ……気をつけるんだよ」

「ロバート卿やキース卿、ウェイド卿の言うことをちゃんと守ってね」

「兄上ぇ」「にぃちゃまぁ」


 家族四人が俺を抱きしめる。

 それだけで俺の心は温かくなり、百人力のパワーを得た気分になった。


「なぁに、心配することないにゃ~。お姉さんのうちがしっかり守ってあげるにゃ」


 お姉さんって……中身で言えば俺は三十四歳プラス八歳のおっさんなんだけどな。

 

「そして俺がお嬢をお守りするんで、結果的に大丈夫です」

「にゃ!? オ、オルマンなんかいなくたって、うちひとりで大丈夫!」

「よろしくお願いするよ、オルマン殿」

「にゃー!?」


 大丈夫と言っても、キャロはそもそも護衛対象だろう。まさか前線に突撃する気じゃ……。

 オルマンさん、大変だろうなぁ。


 そんなことを思いながら、俺たちは辺境の村ゼナスを出発した。

 目指すは南の砂漠地帯。その丁度中心付近にあるという、巨大な岩山だ。


 村を出発した時は徒歩だった。このままずっと徒歩での移動だとばかり思っていたけれど、そうではない。

 早朝に出発し、日が暮れる前には足元は硬い土からサラサラの砂へと変わる。

 そこにあったのは船だ。サラサラの砂の上に帆船が一隻あった。


「お嬢、お待ちしておりました」

「待たせたにゃ~。さぁ、サンドロックへ出発にゃ~」


 船……この船で行くの!?

 そういえば、盗賊たちは砂漠を渡る商人の、砂船を襲っているって言ってたな。


「これが砂船、ですか?」

「ふっふっふ。そうにゃあ。どう、凄いにゃ?」

「はいっ。いったいどうやって砂の上を走らせるんですか?」

「ま、それは乗ってみればわかるにゃ。ささ、すぐに出発するにゃから、乗った乗った」


 言われるがまま俺たちは砂船に乗り込む。

 全員が乗船すると、キャロの号令と共に砂船が僅かに――浮いた!?


「ディルムット坊ちゃん、あれを見てください。あれって浮遊石じゃないですかね?」


 俺の護衛役で一番若いキース卿が、マストの根元を指さす。そこには青く光る水晶が浮かんでいた。

 浮遊石とは魔石の一種で、浮遊魔法が付与されたもの。

 あの魔石、結構大きいなぁ。あのサイズになると、大型モンスターからしか産出されないと思うけど。


 なるほど。浮遊石で砂船をほんの僅かだけ浮かせて、あとは帆で風を受けて進ませるのか。

 でも行きたい方角に風が吹いていなかったらどうするんだろう?

 と尋ねてみると、なんとも原始的な答えが返ってきた。


「決まってるにゃ。漕ぐにゃよ」

「漕ぐ、んですか。へぇ……」


 最後は結局、人力パワーってね。


 砂船の上で夜を四度迎えた翌日、前方に馬――いや、ラクダの一行を発見した。

 ちなみにこの世界のラクダは、足が六本ある。知識では知っていたけど、実際に見るとちょっとキモぃ。


「あれがうちのおとん」

「え?」

「おとーん」


 猫の獣人族キャット・ルー。その中にいて、ひとりだけゴリラみたいな人がいる。

 キャロが手を振ると、そのゴリラみたいなキャット・ルー族の男が同じように手を振った。

 似てない!

 でもキャロのお父さんってことは、砂漠のキャット・ルー族の族長か。


 砂船が停止し、族長が乗船してきた。


「おぉ、キャロ。ご苦労だった――ん? 人間も一緒か」

「にゃ。この子はディルにゃ。ディルはゼナスの領主の息子なんだにゃ」

「ほぉ。ってことは貴族の息子か。その貴族のお坊ちゃんが、砂漠に何の用だ。ひょろがりじゃ、ここでは生きていけねえぞ」

「あ、はは。あはははは。えっとその」


 今にも取って食うぞと言わんばかりの迫力に、思わず半歩下がってしまう。

 そこへ両手を広げて飛び込んできたのはキャロだ。


「おとん! ディルはうちが認めた男やっ。あんまり虐めるにゃ」

「な、なんだと!? お前が認めたって、ど、どど、どういうこった!」


 どういうこと?


「ディルは確かに強くはないけど、これからは強いだけがいい男じゃないってことにゃ」

「お、お前っ」

「にゃふふん。ね、ディル」

「え……いや、あの……えぇぇ?」


 だからどういう意味なんだってば!






「あれがサンドロックにゃ」

「大きな岩ですねぇ。一枚岩なんですか?」

「そう聞いてるにゃ」


 キャット・ルー族の本体と合流したあと、更にキンバル族という、こちらは人間種族の砂漠の民が合流した。

 彼らはキャット・ルー族からの報告を受け、援軍として駆け付けてくれた人たちだ。

 盗賊とサルージ族。彼らを捕まえてレトン商業国に引き渡さなければ、砂漠の民全員が敵とみなされる。


「戦いを挑まれるのであれば、我らは正々堂々と戦う。だが、言われなき不名誉を着せられるのは容認できん」

「それに、なんだかんだこちらは少数民族だ。国を相手にしていたのでは、いかに地の利があっても勝てはせん。子供たちのためにも、ここは戦闘を回避せねばならんのだよ」


 と、キンバル族の人たちが言う。

 その決断は正しいと思う。確かに彼らは砂漠では強いだろう。

 でも、それぞれの部族は千人にも満たないという。

 万を超す兵士がなだれ込んでくれば、勝ち目はないのだ。


「してダンドよ。お主はあの中へどうやって侵入するつもりだ?」

「む……むぅ……あの崖は登るのも厳しそうだな」


 砂船は見つかるかもしれないっていうんで、今朝から徒歩でここまで移動してきている。日中は熱くて、途中で死ぬかと思ったぐらいだ。

 だからこそ、ここまで近づけたってのもある。

 俺たちは今、サンドロックと呼ばれる巨岩から三百メートルぐらいの距離にいる。

 双眼鏡片手に岩山に入口がないか探してみると、ぐるっと半周した南側にそれはあった。

 岩の亀裂だ。そこに人影もあって、どうやら見張りのようだった。

 更に半周したけど、他に入口はなし。

 正面突破するにしても、あの亀裂はラクダが一頭通れる程度の幅しかなさそうだ。

 

「じゃ、階段を作りましょう」

 

 そう俺が提案すると、キャット・ルーの族長とキンバル族が残念そうな顔で俺を見た。

 

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