表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/52

26:出来るなら別にいいじゃん。

 ひとまず、水そのもののことは横に置いておく。

 出来ることから片付けていかないと、一歩も進めなくなってしまうから。


「で、滑車なんだけど。竹をそのまま使えばいいんじゃないかな」

「そうさな。丸いし中は空洞だし、確かに滑車として使えるだろうよ。ひと工夫は必要だがな」

「うん。ロープが滑り落ちたりしないようにね」


 ということで、ひときわ太い竹と、逆に細い竹を切って来てもらった。

 太い方の更に太い部分を滑車本体として使う。筒の両端にロープが滑り落ちないよう、輪切りにした竹を差し込んで凹凸を作った。

 そして細い竹を中の空洞に通せば滑車の完成。

 魔法を使わなくたってこのぐらいは作れる。


「だったらなんで錬金魔法で作るんだよ」

「え? あ、やっぱり楽だし。そ、それに魔法の鍛錬にもなるからっ」

「はぁ……坊はノコギリも斧もハンマーも、この先ずっと使えそうにねぇなぁ」


 う……だ、だってそれがなくたって出来ちゃうんだし。出来るなら別にいいじゃん。

 気を取り直して、お次は滑車をぶら下げるための土台と屋根だ。これも全部竹で作る。

 竹でやぐらを組み、縦割りにした竹で三角屋根に。

 さすがにこれはドワーフのみなさんにやってもらった。

 で、三十分足らずで井戸の滑車と屋根が完成。


「チク。試しに使ってみてくれないか?」

「え、オレが? うん、まぁいいけど」


 日頃から使っている者に、実際の違いを確かめて欲しいからね。


「こんな輪っかを付けただけで変わるのか? うんしょ――え、ええぇぇ!?」

「軽くなったかい?」

「なった! なったよ、すっげぇー!!」


 滑車は大きな町なんかに行けば、そう珍しいものじゃない。

 だけどここは滑車の素材になる木材はまず手に入らないから、これまでも存在しなかったのだろう。

 この世界の人たちは、生まれてからの一生を同じ町や村で過ごす人がほとんど。旅行なんて概念が貴族ぐらいにしかないし。

 だから生まれ育った町や村での暮らしで得る知識が全てなんだ。


「よかった。これで少しは水汲みが楽になるかな」

「なるなる!」


 そんなことをしていると、町の住民たちが集まってきた。


「ちょ、ちょっとチク。あたしにもやらせてよ」

「本当に軽いのかい?」

「本当だっておばちゃん! な、軽いだろ?」

「あらまぁ、本当だわ。これだと楽でいいわねぇ」


 賑やかな声を聞いてなのか、続々と女性たちが集まって来る。


「あの、少しよろしいでしょうか?」


 俺が声を掛けると、しーんっと静まり返る。

 女性たちは顔を見合わせると、それから笑みを浮かべて俺を見た。


「なんだい、坊ちゃん。いってごらん」

「あ、ありがとうございます」


 よし。女性陣の警戒心は解けたよう……いや、まだ数人は不審そうな顔をしている。

 まぁいいか。一歩前進だ。


「この村って、何世帯が暮らしているんでしょうか。えっと、家の軒数とか」

「あぁ、そんなことかい。えぇーっと」

「家は二十八軒あるんだよ。でも空き家が四軒あってね」

「あんたたち、家がなくて困ってる人がいるんだろう? 使っちまえばいいさね」


 それがいいことを聞いた!


「村長、とかはいらっしゃらないのでしょうか?」

「村長? あっはっは。そんなのいやしないよ。まぁ一番年長のじいさんが、うちらを代表して役人にかけ合ってくれたりはしてたけどねぇ」


 いないのか。

 それからも少し女性らと話をし、この村には全部で百十人ぐらいが暮らしていると教えてもらった。

 ぐらいっていうのは、それぞれみんなが指折り数えたから、最小で百五人、最高で百十五人とバラツキが出たため中間をとって百十とした。


 帰ったら父上に、村長という役職がいないことを伝えよう。


「あの、女性のみなさんは、何かお困りごとってありますか? なんでも出来るわけじゃないのですが、僕には錬金魔法というのがありまして」

「錬金? それって錬金術みたいなものですかい? お薬を作ったり、石をこう、なんていったかしら?」

「錬成よ、錬成。そういうのをする錬金術ですの?」

「あはは。まぁそうなんですが、それ以外にも出来るです。まぁ物作りも出来るっていうか」


 それって錬金術っていうの? みたいなことも、普通にやってしまう。

 漫画で見た錬金術のそれに近いかな。

 女性たちは何事か小声で話し始め、それから年長の人が遠慮がちに口を開いた。


「あ、あのねぇ坊ちゃん。実はその……家の屋根がね」

「屋根ですか? もしかして傷んでいるんです?」


 俺の方からそう尋ねると、彼女らは実に嬉しそうに頷いた。

 そして屋根が傷んで困っている、ここから一番近い家にお邪魔してみると――。


「え? や、屋根が木材だ。この木材はどこから?」

「あぁ、この屋根はねぇ」

「ゼナスの開拓が始まったのは、今から五十年ぐらい前からだ。それは知ってるか」


 突然そう話し出したのは、この家のご主人だ。凄く……凄く逞しいマッチョです。

 ちょっとチビりそうになりながら頷くと、ご主人は話を続けた。


「俺らのじーさん世代がここを作ったと言っても過言じゃねえ。そのじーさんたちは、北西のリーガルから移住してきたんだ。あそこは水害の多い土地でな。当時、村が一つ洪水で流されてよ」

「生き残った村の人たちに、ゼナスへの開拓移住が勧められてねぇ」

「そうだったんですか。五十年前から開拓が始まったのは知っていましたが、そんな背景があったことまでは知りませんでした。教えてくださり、ありがとうございます」


 俺がそう言うと、マッチョは驚いたように目を丸くした。

 ん? なんかおかしなことでも言ったかな、俺。


「き、貴族ってのは平民に頭を下げねぇ生き物だって思ってたが……あんたといい、あんたの親父といい……違う貴族も、まぁ、いるもんだな」


 あぁ、それで驚いていたのか。

 まぁ俺は前世の記憶に引っ張られてるから、貴族だの平民だのあんまり気にはしないけど。確かに父上殿は変っているかもしれない。でも人としては、ごく当たり前のことをしているだけだと俺は思ってる。

 それが出来る父上殿は、良い人間なのだ。


「そ、それで屋根だがな」

「あ、はいっ。木材ですよね」

「これは当時、移住の際にリーガルから持ってきたもんだ」


 あぁ、そういうことか。ゼナスで伐採されたものじゃなく、別の土地から持ってきたものか。

 となると修繕するのは難しいな。他所の領地から木を売ってもらうしかない。

 まぁそのお金はあるんだけど……んー、木かぁ。


 竹、使えないかな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ものづくりのわくわくがw 竹かぁ。竹で集成材ってできますよね。突板とか。 応用したら、木材以上の建築資材になりますが…… ※接着剤が問題ですかね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ