公爵領での催し―12歳―
リド暦791年 十の月 一日
公爵領に帰ってきたので、のんびりと過ごしているわ。
王城の混乱が国内に少し広まっていたからか、公爵領でも皆に心配そうな顔をされてしまったわ。皆を不安にさせないようにしたいわね。この混乱は王侯貴族だけじゃなくて、国民たちにも少なからず影響を与えるのね。
そう考えると結局乙女ゲームの世界って、ハッピーエンドになったとしても決してその後まで平穏だったとは限らないわよね。
魅了を使っていたとしても使っていなかったとしても、婚約者がいた相手から奪った相手と結婚したというだけでも民だってよく思わないのではないか? と正直そうも思ってしまうわ。
幾らヒロインたちのことをよく思うように印象操作をしたとしても真実が違えば限界があるもの。
私、やっぱりヒロインがどういう存在だろうとティモを渡せないなと思ったわ。
ミリセント
リド暦791年 十の月 五日
やっぱりこの前の事件の影響力は大きいね。父上を魅了の力から解放したとしてもこれなんだから、ミリーの言う乙女ゲームというのが実際に起きたら我が国はやばい事態になること間違いなしだよ。
もっと事前に対策出来ることは対策していきたいけれども、それにも限りがあってもどかしいよ。
僕にもっと力があればミリーを不安にさせることなく、何でも解消できるのにななんて思っちゃう。
父上と母上は、仲が良い様子をまわりに見せつけて不安を払拭しようとしているよ。あとは父上は相変わらず母上の機嫌をとろうと必死だね。キッドも父上と母上が仲よくしていてにこにこしていて、そういう様子を見るとほっとするよ。
ティモ
リド暦791年 十の月 八日
ヒロインが見つからないのがもどかしいわね。見つかったらもっと対策の仕様があるのに。
こういうのって、ヒロインは乙女ゲームの舞台まで見つからない運命なのかしら?
ティモは十分色々やってくれているわ。力があればなんて言わなくていいわ。ティモが完璧で、私を頼ってくれなくなったら私が寂しいじゃない。
陛下たちが仲がよさそうなのは嬉しいわ。
そういえば全然違う話なのだけど、こちらの領地では楽しい話題で不安を打ち砕こうと催しをやる予定なの。新しい絵本の発表会とか、お菓子の創作大会とか。そういうのを行うの。
恒常化するかは分からないけれど、一つでも恒常化していけば楽しいなと思っているわ。そういうわけで結構忙しく動いているのよ。
ミリセント
リド暦791年 十の月 十二日
やっぱり最悪の可能性として、ヒロインを利用しようとしている勢力がヒロインを保護している可能性も考えた方がいいね。表立って僕たちが一人の少女を探していると広まれば大変なことになるから、秘密裏に探すしかないし、見つからなかったら見つからなかったで対策を練らないと。
ミリーは本当に可愛いね。僕は王太子として完璧を求められる立場だから、完璧だと頼られなくて寂しいなんてミリーしか言わないことだよ。ミリー以外に言われてもどうも思わないけど、ミリーがそんな風に言ってくれることが僕は嬉しいよ。
王都でも噂を払拭するための行動を起こそうと必死だよ。国全体で何か目出度い行事をするにしても準備期間がかかるからもっとお手軽にできるものがいいよねとは思っているけど。
とりあえず父上が母上を連れて視察には行くって言ってた。その間、僕はお留守番だけどね。仲よくしているからまた弟か妹でも出来るかな? ってちょっと期待しているけれど、どうだろう?
ティモ
リド暦791年 十の月 十六日
ヒロインがそう言う存在に保護されていたら、怖いわね。利用されてしまっていたら大変だわ。でもヒロインが私と同じように前世の記憶持ちだったら自分からティモたちを落としに行く可能性もあるのよね。
ティモが喜んでくれて嬉しいわ。
そうね。お手軽にできる催しの方がいいわね。領地での催しで成功したものがあったら伝えるわね。
下の子がまた増えたらきっと楽しいわね。お二人とも乙女ゲームの世界よりも仲がいいから、そういう可能性もあるわね。私の所も下の子が増えたらいいのになと思うわ。
ミリセント
リド暦791年 十の月 二十日
自分から婚約者のいる相手に迫るようならそれはそれで大問題だよね。それならそれで断罪しやすいからいいけれど。
下の子が増えるときっと楽しいだろうね。まぁ、僕の場合は王位の争いにならないように気を付けなければならないけれど、それは気を付ければどうにでもできるから。
王都の子供たちの中に父上を侮る発言をした子がいたからとりあえずその家を調べているよ。子供がそういうことを言うってことは、親がそういうことを言っているってことだろうから。
ティモ
リド暦791年 十の月 二十五日
ティモは優しいようで、王族らしい一面もきちんともっていてそういう優しくて冷たい所もティモらしいと思うわ。でもそういう冷たい選択をするときはちゃんと私にも相談してね。私にもティモと同じだけのものを背負わせてね。
そういう貴族は何かあった時に反乱を起こしたり、他国と繋がったりしそうね。目を光らせておく必要があるわ。
そういえば、こちらではいくつか催しを開催したわ。
お菓子の創作大会では美味しそうなお菓子が沢山あったの。他にない作り方をしてくれたりして、是非とも売り出すようにお父様が話を持ちかけていたわ。こちらに来た時に一緒に食べましょうね。そのころには売られていると思うから。
ミリセント




