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悪役令嬢と王子殿下の交換日記  作者: 池中織奈


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幕間:護衛騎士④




「セッタ。父上が影響を与えられたような魅了系の何かに対抗するためのものをどうにか考えないといけない」

「そうですね」


 陛下が魅了に影響されて、王城はしばらく騒がしかった。

 まさか国のトップである陛下に直接そんな風に影響を与えるような存在が近づくとは思わなかった。

 ティモ殿下主導で魅了対策は進められていた。



 だというのに、その対策を進めていたのにそれでも隙をつかれてしまった。


 ティモ殿下はそのことで、色んなことを考えておられた。ティモ殿下は結構特別な人だから、何が見えているのか俺には分からない。だけれど、ティモ殿下は先を見据えて、何らかの可能性を考えている。



 ――為政者というのは、たらればを何よりも考えなければならない。最悪の可能性を何通りも見据えて、そしてその一つ一つに対処していく。俺には絶対に無理なことなので、幼いながらにそういう姿を目指して行動し続けているティモ殿下を尊敬する。



「あくまで可能性の話だけど、父上がそういうのをかけられたってことは僕だって魅了の罠にはまる可能性だってあるかもしれない。――僕はさ、僕のミリーを悲しませたくないし、不安にもさせたくないんだ。だからそのための対策は幾らでもするよ」



 この人、本当に十三歳なのかなって話していると本当に思う。



 ミリセント様のことを心から愛していて、ミリセント様に不誠実なことはしたくないと思っている。

 ティモ殿下のそういう決意が分かるからこそ、俺はティモ殿下が望む通りに動こうと思っている。

 とはいえ、俺は護衛としての役割以外、役には立たないかもしれないけれど。





「とりあえずセッタは、僕の護衛騎士として僕の傍にいるんだから、僕がおかしくなったら正気に戻してほしいんだ。僕がミリーを蔑ろにすることは僕の意志では生涯ないから、そういうのがあったらまず何らかの力が働いていると思ってくれていいから」

「言い切るあたりティモ殿下ですね……。かしこまりました」




 生涯ないとか言い切る十三歳は早々居ないと思う。

 


 ティモ殿下の何がすごいってこういう気持ちを躊躇いもせずにミリセント様本人に伝えていることだと思う。


 このまま成長したらミリセント様限定でどれだけ甘々になるのだろうか。護衛としてそれを見なければいけないと思うとやっぱり俺も恋人がほしい。


 ちなみにお見合いは時々しているけれど、今の所纏まっていない。

 なんだろう、俺は運がないのか、相手に特定の相手がいたりとか、結婚相手としてまとまらなかったりとか、色々あるのだ。


 ティモ殿下には「セッタにはきっとそのうちいい子が見つかるよ」と言われたが、本当に見つかるだろうか……と少し不安は感じている。


 まぁ、そういう相手がいなかったとしてもティモ殿下とミリセント様のことを見守っているだけでも充実した日々を送れていると言えるので問題はないが。






「ところで、前に言った子って見つかった?」

「いいえ、見つからないですね。情報が少なすぎますし」



 ティモ殿下からある令嬢を探してほしいと言われて、秘密裏に探しているけれど該当する令嬢は見つからない。あくまで抽象的な情報しかないからというのもある。ティモ殿下もその令嬢がどういう相手なのか詳しくは分かっていないようだ。


 その令嬢を探しているのも良い意味ではなさそうだし、いまいちそのあたりは分からない。

 多分ミリセント様と話している内緒話に纏わる事だとは思うけれど。




「なら、いいや。引き続き探してはもらうけれど、見つからなかったらそれでもいいよ。学園の方は?」

「今いる生徒会長が結構好き勝手しているみたいで、少しおいたがすぎるみたいですね。陛下には報告してあります」

「やっぱりそういう輩も出てくるんだ。僕とミリーが通う前にもっと過ごしやすくしておかないとね」




 やっぱりティモ殿下はミリセント様のことばかり考えてるなとこの発言からも分かる。


 国全体のことも見据えて、この国をよくするためにと王太子として動いているけれど、ティモ殿下はミリセント様を本当に大切にしている。




 ティモ殿下とミリセント様が学園に通っている間は、学園内で好き勝手出来るものはまずいないだろう。お二人とも権力を悪いように使う方ではないし、身分差があるからと勝手をしている存在がいれば忠告もするだろう。

 


 今だって十分美しく育っているティモ殿下とミリセント様は学園に入学する頃にはさらに美しくなるだろうから、色んな人が寄ってくるだろうなとは予想が出来る。

 でもどんな相手が寄ってきたとしても、ティモ殿下とミリセント様はきっと互い以外みないだろう。というか他の人を見るお二人とか見たくもない。

 


 いまだにお二人を政略結婚だと思い込んで妃の座を狙っている令嬢もいるけれど、学園に入学した二人を見ればそういう思い込みもきっとなくなるだろうなと俺はそんなことを考えるのだった。




 

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