一連の出来事の考察―12歳―
リド暦791年 八の月 一日
ミリーはそろそろ領地に帰宅した頃かな?
ミリーが僕を誰にも渡す気がないと書いてくれてて僕は嬉しいよ。そうやってミリーに独占欲を現わしてもらえることが僕は心地よいよ。
王城では一連の占い師の出来事でバタバタしているよ。一国の王があんなふうに占い師に影響を受けるなんて大事だからね。他国にはそこまで広まっていないけれど、国内の貴族達もこのことでは不安にさせてしまっていたし。エイブルガンたちも王城の雰囲気が元通りになったって安心していたみたい。
ティモ
リド暦791年 八の月 四日
領地でのんびりと過ごしているわ。
お母様たちも占い師の事件で、色々考えたことがあったみたいで、そういう魅了系の力に対してもっと対策を進めて行こうとしてくれているみたい。これでもっと魅了系の魔法などに対する対策が進められればいいわ。
それにしてもこういう魅了系の魔法の力を目の当たりにすると、乙女ゲームのヒロインという存在に疑問が募るわ。ゲームをプレイしていた時は乙女ゲームのヒロインは可愛くて素敵だから皆に好かれていても違和感がなかったけれど現実だとそれだけ違う性格の人たちに好かれるってすごいことだものね。
ヒロインはもしかしたらそういうものを使用していたっていう可能性もある。もちろん、本当に素晴らしい方だからこそ皆が惹かれる可能性もあるけれど。
ミリセント
リド暦791年 八の月 九日
王城だけではなくて、この国の貴族たちは皆魅了対策に精を出しているよ。やっぱり父上がそういうのにあってしまったことは衝撃だったのだと思う。
こういう魅了の力を悪い風に使おうとする人もやっぱりいるだろうから、そのあたりのことも対策しないといけない。特に僕はまだ子供で、次期国王という立場だからそういうのも多いだろうから。
母上を見て、僕は改めてそういうのに影響されたくないって思ったよ。だってミリーがあんなふうに悲しむ姿を考えただけで悲しくなったから。
本当に複数名の心を惹きつけるっていう女性なだけでもすごいことだよね。本当にそういう手腕を持つ相手なら是非国に登用したいものだよ。
というかそのヒロインの有能力者を知ったものがいれば、利用しようとする相手もいるだろうね。
そのヒロインは、今どこにいるかもわからないんだよね? もし分かったら早急に保護したほうがいいかもしれない。
ティモ
リド暦791年 八の月 十三日
やはりどこででも対策に精を出すようになるわよね。魅了の力について利用しようとするものが出てきたら困るわね。
私もティモが魅了に影響されたらと思うと悲しいわ。ティモがそういうものにかからないように、そして私自身もそういうのをかけられることがないように自衛していくことも大切よね。どんな風にしたらいいのかを考えながら、少しずつ頑張りましょう。
ヒロインの場所は分からないわ。乙女ゲームでもヒロインが何処の街でどんなふうに過ごしていたかというのは、あまり語られてなかったわ。
転生してしばらく経っていて、私の記憶も結構薄れてきているのもあるけれど……。ヒロインが悪い人に利用されるかもと考えるとそれは嫌だから少し探してみましょうか。
でもあの占い師が言っていたように乙女ゲームのことを知っている人が他にもいるのならば、先にヒロインのことを見つけて利用しようとしている可能性もあるわよね……。
ヒロインが自分の意志で人の感情をもてあそんでいたら私は容赦はしないわ。でも誰かに利用されているならどうにかしたいわ。
ミリセント
リド暦791年 八の月 十六日
自衛は大事だよね。自分ならば魅了にかけられないっていう慢心の気持ちはきっと油断を産むから。
ミリーのように乙女ゲームというのを知っている存在が何人かいるなら、その乙女ゲームからはこの世界は少しずつ変わっている。
ならばミリーの知識ばかりを頼ることはしないほうがきっといいね。乙女ゲームの通りに動かしたいという人がいるならば、ヒロインのことはそのままでミリーのことを悪役令嬢にしようとするのかもしれないね。そうではなくて、その知識を利用してヒロインに国をどうにかさせようとしているのならば先にヒロインのことを見つけて、保護して洗脳する可能性もある。
そういうあらゆる可能性を考えて、動く必要があるね。
来月の僕の誕生日のパーティーの時にもきっとこの前の出来事の関係でバタバタはしているだろうね。僕やミリーに一連の出来事を探ろうとしてくる人も多いだろうし。
ティモ
リド暦791年 八の月 二十日
ヒロインが誰かに利用されている可能性は考えたくないけれど、ヒロインが異性を惹きつける魅力を持つことを知っていればそうやって利用しようとする人はいるものね。
私の知識はあくまでそうあったかもしれない未来ってだけで、絶対ではないもの。でもその乙女ゲームの知識を絶対視している人もいるだろうし。
正直、こんな風にややこしい事態だとは思っていなかったわ。乙女ゲームを楽しんでいた時は、ただヒロインが素敵な子だと思っていたから。
これからどうなるか分からない不安は大きいけれど、ティモがいてくれるから私は頑張れるわ。
そうね。隙を見せないようにしないと。ティモの婚約者として相応しくあれるように気を引き締めるわ。
もうすこししたらそちらに向かうわ。王都でまた対策について話し合いましょうね。
ミリセント
リド暦791年 八の月 二十五日
僕もミリーがいるから、なんだって出来ると思うよ。
ミリーの言う乙女ゲームというのは、空想の世界だからこそ許されるものなんだよね。現実で複数人の子息が一人に夢中になったら大変なことになるだろうし。
ミリーがこっちにきてくれること、楽しみにしている。きっと色々探ってくる人もいるだろうけれど、ミリーと一緒なら問題ないからね。
母上も、変な噂が出回らないように父上と仲が良いのを示すっていってたよ。
ティモ




