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悪役令嬢と王子殿下の交換日記  作者: 池中織奈


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幕間:護衛騎士③



「ミリーの体調がよくなって良かった」



 ティモ殿下はほっとした様子で、帰路についていた。



 ミリセント様が体調を崩し、ティモ殿下はミリセント様の元へ向かっていた。今はその帰りである。ミリセント様が体調を崩したというのを知ったティモ殿下は珍しく取り乱していた。

 俺もミリセント様が体調を崩していることを知って心配していたので、体調がよくなってくれたことにほっとした。


 ミリセント様はティモ殿下にとっても、この国にとっても大事な方である。

 ミリセント様がいなければ今のティモ殿下はいなかっただろう。ティモ殿下が今のティモ殿下でなければ、この国は此処まで発展しなかっただろう。



 だからこそ、他でもないミリセント様のおかげだと思う。



 ティモ殿下は、少しずつ成長していっている。まだ十一歳だけど、相変わらず大人びている。この前なんてミリセント様にキスしていた。……俺なんて相変わらず恋人一ついないのに、十一歳のティモ殿下の方が進んでいる。

 正直いってティモ殿下はミリセント様のことを心から愛しているので、そのうち我慢の出来なくなったティモ殿下がミリセント様のことを食べてしまうのではないかと不安に思っている。

 結婚するのならばありだろうけれど、婚前交渉はなるべくしなほうがいいだろう。陛下にもティモ殿下が暴走しすぎないように止めるようには言われている。俺も学園卒業まではティモ殿下がおいたをしすぎないように見守ることにする。





「ティモ殿下、ショーは上手く行ったようですよ」

「それは良かった。僕らがいなくても上手く回せるっていうのは朗報だからね。こういう行事というのは一人や二人いないからといって上手くいかないようでは続かないからね」

「そうですね。ティモ殿下とミリセント様は、代えがたい人ですけれどお二人がいなければ成り立たないものは脆いですから」

「よくわかっているね。セッタ。そういう一強だけの国というのは、壊れやすい。僕たちがやるべきことは僕たちだけで成り立つ国をつくることではなく、この国を支えていく国民を育てていくことだよ」



 本当にティモ殿下は本当に十一歳なのだろうかと思えるほどである。

 これは俺だけではなく、ティモ殿下と関わった者たちは皆そう思っているだろう。




「ティモ殿下はアレですね、人生を一度経験したって言われても納得できます」

 



 俺がそう言ったら、ティモ殿下は何故だかおかしそうに笑った。何がそんなにおかしいのか俺にはさっぱり分からない。

 本当にそうだったりするんだろうか?



「僕はそんなのではないよ。正真正銘の十一歳」



 そう言ってティモ殿下は笑った。







「そうだ、セッタ。僕とミリセントが学園に入学するまでの間に、色々と準備を進めておきたいんだ。僕の護衛として、情報収集も含めてよろしくね?」

「まだ四年近くありますけど……もう準備するんですか?」

「ああ。僕のミリーが学園生活を心配しているからね。ミリーのためにも準備万端にしておかないとだからね」

「……ああ、そうなんですか? でもミリセント様って周りとの関係も良好ですし、そんなに心配しなくていいと思いますけど。ティモ殿下が味方ってだけでも何も心配いらないですし」

「可愛いよね、僕のミリー。僕はミリーのためならなんだってしたいよ。ミリーが笑ってくれるならそれだけで嬉しいし、ミリーを僕が幸せにしたいんだから」

「本当にティモ殿下は、ミリセント様が大好きですね」

「うん。僕はミリーが大好きだよ。セッタもそういう子見つけたら?」

「……俺に彼女がいないの知ってていってます? 作りたくても見つからないんですよ」

「セッタは僕の護衛騎士だし、もてるだろう?」

「まぁ、確かにそれはそうなんですけど……俺はティモ殿下とミリセント様をみていると、そういう関係になれる恋人がほしいんですよ」

「へぇ」

「ティモ殿下、俺に良い子でも紹介してくれません?」

「いいよ。セッタにも良い子と幸せになってほしいからね。父上にいっとくよ。お見合いをくんであげる。もちろん、あわないようなら断ってもいいからさ」



 ティモ殿下はご機嫌そうにそう言って微笑んだ。


 それにしても本当にティモ殿下は、同性の俺の目から見ても綺麗だと思う。こういう子供がいたら男の子だろうとも可愛がる自信がある。恋人さえ出来る気配はないけれど、そんなことを思ってしまった。




 ティモ殿下の進めてくれるらしいお見合いで、恋人が出来ればいいななどと俺は思った。

 




 それから俺たちは王宮へと戻った。

 陛下たちもミリセント様が回復に向かったことを安堵していた。やっぱりこの国にとって、ミリセント様は大切な人だと思った。



 俺はティモ殿下の護衛として、次期王妃であるミリセント様のことも改めて脅威から守っていこうと決意するのだった。



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