誕生日(ティモ・十一歳)―10歳―
リド暦789年 九の月 二日
王都へと向かっているわ。
やっぱりティモのお祝いのために王都に向かえると思うと嬉しいわね。
途中寄り道をしている街の人たちも、ティモの誕生日の事を話題にしていたわ。
それにしても早速、ティモが誕生日の一日を婚約者と過ごそうとしているというのも噂になっているみたいだったわ。
貴族たちから広まったのかしらね。
未来の王様と王妃様が仲が良く安泰だって噂されているみたいだわ。皆にティモと私が仲良しなのを分かってもらえると嬉しいなと思ったわ。
思わず嬉しくなって「ありがとう」って口にしてしまったの。私が噂の王太子の婚約者だって知られて少し騒ぎになっちゃったけれど、皆笑っててくれて嬉しかったわ。
ミリセント
リド暦789年 九の月 六日
ミリーがこちらに来るのを楽しみにしているよ。
ミリーが僕の誕生日を祝いに来てくれることが楽しみで仕方ないよ。
僕たちが仲が良いことがもっと広まればいいな。そしたらミリーを狙う輩もいなくなるだろうし。
王太子である僕の婚約者のミリーがとても可愛いっていうのがもっと広まるだろうね。ミリーの可愛さが広まるのは嬉しいけれど、ミリーを好きになる人が増えるんじゃないかって心配ではあるよ。
ティモ
リド暦789年 九の月 十日
やっぱり王宮でティモと一緒に過ごせると嬉しいわね。ユージョンもキッドと楽しそうにしているし。
本当にティモと一緒に過ごせると楽しいわね。
ミリセント
リド暦789年 九の月 十四日
今日はミリーを独り占めだね。ミリーを独り占めできると思うと、嬉しくて仕方がないよ。
僕の誕生日をミリーと一緒に二人きりで過ごせるなんて嬉しいよ。
ミリー、ありがとう。僕のために一日くれて。
ティモ
リド暦789年 九の月 十四日
本当にお誕生日おめでとう。ティモ。
今日はとても楽しかったわ。でもティモの誕生日なのにティモが作った料理をいっぱい食べさせてもらって、何だか不思議な気持ちだったけれどね。
ティモが私のプレゼントを喜んでくれてよかった。ティモと一緒に、ティモの誕生日をただ二人で過ごすことが出来て凄く楽しかったわ。
でも陛下たちも来ないで、本当に二人だけで少しびっくりしたけれどね。ティモってば誕生日なのに本当に私と二人で会話を交わしながら過ごしただけじゃない。これだけティモとしか話さないのなんて初めてだわね。忘れられないティモの誕生日になったわ。
ミリセント
リド暦789年 九の月 十四日
僕がミリーに料理を作ってあげたかったからね。ミリーを独り占めするために、最低限の人しか近寄らせなかったんだ。折角の特別な誕生日だから。
ミリーがくれるものならば、なんだって僕は嬉しいんだ。ミリーがくれるものだから、ミリーが心を込めて選んでくれたものならば、僕はなんだって嬉しいのだから。
僕もこれだけミリーとだけ会話を交わす誕生日がつくれて嬉しかった。ミリーが僕をお祝いしてくれようと一生懸命で、それだけで僕は幸せな気持ちになるんだよ。
僕にとっても忘れられない誕生日だよ。僕のためだけにおしゃれをしてくれたミリーが可愛くて、もう人前に出したくないって気持ちになったよ。
でも明日はパーティーだから、可愛いミリーはなるべく僕の側を離れないでね。
ティモ
リド暦789年 九の月 十五日
今日のパーティーでは、昨日のことを沢山聞かれてしまったわ。
皆、私とティモが二人でどう過ごしたか興味津々なのね。でも私とティモの仲良さを知って、ティモを狙う人が減るのは嬉しいわね。
今日も皆がぽーっとした目でティモのことを見ていて、私のティモは本当にかっこいいなって思ったの。
ミリセント
リド暦789年 九の月 十八日
誕生日のパーティーが終わっても、ミリーが王宮に留まっているのが嬉しいよ。
互いに勉学で忙しくて、ずっと一緒にいるわけにはいかないけれど、ミリーと一緒にこうして王宮で過ごすのも楽しいね。
いつも通りの日常がミリーが「お疲れ様」って迎えてくれるだけで特別な物に感じるよ。
やっぱりはやく結婚したいなと思って父上と母上に言ったら、「卒業したらね」って笑われてしまったよ。
ところでミリーの前世では学生結婚って言葉もあるぐらいなんだよね? 凄く素敵な言葉だと思うのだけど、ミリー、学園に入学したらそのまま結婚しない? そしたらミリーとずっと一緒にいれるし。
ティモ
リド暦789年 九の月 十八日
私も勉強した後にティモといられるのは嬉しいわ。楽しくて仕方がないもの。
学生結婚って言葉はあったけれど、それは大学生……十八歳より上の人たちが学生結婚することを言うのよ。お兄様のように大学に通う人が前世では多かったから。この世界では大学にまで通える人は少ないだろうけれど。
流石に学園に入学してすぐは早いかなと思うわ。結婚が早すぎても周りからどんなふうに言われるかわからないしね。
それに私はティモと恋人気分も味わいたいもの。学生時代は恋人としてイチャイチャしたいわ。学生時代の思い出って大切だと思うのよ。私、前世でそういう青春を経験してなかったから、ティモと経験したいなと思うのだけど、駄目かしら?
ミリセント
リド暦789年 九の月 二十五日
ミリーがもう帰っていくなんて寂しいな。
でも学園に入ればミリーと毎日会えるし、その後はすぐに結婚だからそれまでの我慢だね。
ミリーが望む通りに、学生時代は恋人として仲よくしようね。学園一の恋人になれたらいいなって思うよ。
可愛いミリーに誰も手を出さないようにね。
ティモ
リド暦789年 九の月 二十八にち
帰り道で交換日記を書いているわ。
恋人として過ごしたいって書いた後のティモが、「ミリー可愛い可愛い」って抱きしめてきて、構ってきて、凄く恥ずかしかったわ。嬉しかったけれど、陛下達の前でもその調子だと流石に私も照れるわよ。
ティモとの学園での恋人気分を味わえるのが今から楽しみだわ。でもほどほどにね。あまりにやりすぎられると私は照れちゃうから。それか学園に入るまでに私の事を慣らしておいてね。
次に会うのは私の誕生日の時かしら。
とても楽しみにしているわ。
ミリセント




