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悪役令嬢と王子殿下の交換日記  作者: 池中織奈


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救えた者の姿―10歳―

 リド暦789年 八の月 一日


 ティモはまだ王宮に帰っている最中かしら?

 ティモと一緒に視察旅行が出来て、とても楽しかったわ。

 モアはうちの屋敷にいる間、使用人たちに構われてかわいらしい鳴き声をあげていたわよ。

 そうね。ティモが私の前でだけこういう表情を浮かべてくれていると思うと嬉しいわ。

 陛下に伝えてくれるのね。ありがとう。これでまたこの国がよくなればいいわね。

 次にティモに会うのは来月のティモの誕生日かしら。この前までティモと一緒に居たのに、私はもうティモに会いたくなっているわ。


 ミリセント



 リド暦789年 八の月 五日


 王宮に今帰れたよ。

 モアはそちらで可愛がられてたんだね。戻ってきた時、状態が良かったのはそのおかげなんだね。

 父上に視察のまとめを渡しておいたよ。父上もこれを役立てるっていってくれた。こうして僕たちがまとめた資料が国のためになるんだと思うと嬉しいね。

 僕の誕生日にミリーがお祝いしに来てくれると思うと楽しみだよ。僕もずっとミリーと一緒に居たいというその気持ちでいっぱいだよ。


 ティモ



 リド暦789年 八の月 八日


 無事に王宮にたどり着いたのね。ティモに何もなくてほっとしたわ。

 モアの事を皆で思いっきりかわいがったのよ。やっぱり使い魔って可愛いわねって思ったわ。ユージョンもモアと仲よくしていたわよ。

 最近は新しく絵本を作ったり、カメラの活用方法を調べたり、視察旅行で手に入れた情報を纏めたりと色々やっているわ。もちろん、王妃になるための勉強も頑張っているわ。

 来月のティモの誕生日をお祝いする準備をしているわ。

 あとね、領地をお父様と一緒にぶらぶらしているの。大学から戻ってきているお兄様と、ユージョンも一緒なの。お兄様はユージョンとたまにしか接していないから、少しユージョンに人見知りされていたわ。でもすぐに仲良くなっていて、兄弟っていいなってなったわ。

 

 ミリセント



 リド暦789年 八の月 十二日


 ユージョンとモアは仲良しになったんだね。ユージョンもすくすくと育っているようで良かった。

 僕も相変わらず王太子としての勉学に励んでいるよ。エイブルガンたちも一緒に行動しているよ。

 皆、婚約者たちと文通しているみたいだね。僕とミリーほどじゃないみたいだけど。というかエイブルガンに「そんな数日ごとにやり取りするなんて……そんな話すことあるんですか?」なんて言われたけど、エイブルガンは婚約者への愛が足りないだけだよね。

 僕はミリーとなら幾らでも交換日記を交わせるのにさ。

 僕の誕生日の日さ、パーティーせずにミリーと二人でお祝いできそうだよ。流石にパーティーをしないというのは許可されなかったけれど、一日はミリーとだけでお祝いしてもいいって。だから一緒にずっと過ごしてお祝いしようね。ミリーの日程も一日だけ僕のためにあけているから。翌日はパーティーだけど、二人でお祝いしようね。

 フィガニードは人見知りされていたんだね。でも子供って時々しか会わない相手に人見知りするものだもんね。将来ミリーと僕の子供が出来たら王としての仕事が忙しくても、ちゃんと接していきたいなって思ったよ。


 ティモ



 リド暦789年 八の月 十六日


 そうよね。

 私もティモとならば、幾らでも交換日記を交わせるわ。

 ティモの事が大切だからこそ、幾らでも話せることが多いわ。

 ティモと一緒に二人でお祝い出来るのね。とても楽しみだわ。ティモと二人でその日にお祝いするなんて、これから出来るか分からないから思いっきり楽しみましょうね。

 そうね。子供が産まれたら忙しくても子供に寂しい思いはさせたくないわよね。

 ティモ、あのね、聞いて。この前、領地を回っている時に、あの前に言った疫病で親を亡くして国を憎むことになる子がいるって言ったじゃない? その子がね、親と一緒に楽しく生きていることが確認出来たわ。

 嬉しかったわ。

 誰かの不幸をこうして防げたこと、それが私は嬉しいわ。

 本当はね、ゲームの設定から大幅に外れてしまうのもどうなんだろうってそれも思ってたの。でもやっぱり此処はゲームと違って、私も周りも皆生きている。目の前にいる人を助けられることは嬉しいわ。

 私は全てを救うなんてそんなことは出来ないけれども、それでも手の届く範囲はどうにかしたいなって思ったの。


 ミリセント


 リド暦789年 八の月 二十一日


 二人でお祝いするための準備を少しずつ進めているよ。

 ミリーにとっても思い出に残る僕の誕生日にしたいからね。

 ミリーとの誕生日を思うと楽しみで仕方がなくて、母上たちにも「ご機嫌ね」って言われた。

 来月の誕生日を思うと僕は幾らでも王太子としての勉学を頑張れるよ。

 良かったね。国を憎む人が憎まなくなったことはいいことだよね。その子が将来的に国のためになってくれると嬉しいね。

 結局ミリーがこの世界に似ているものの記憶を持っていたとしても、その情報を知っていたとしても、それでもこの世界は人の動き次第でどうにでも変わるからね。

 ミリーは何も不安に思わずにただ、自由に動いてくれたらいいよ。

 僕はどんな時でもミリーの味方だから。


 ティモ



 リド暦789年 八の月 二十四日


 私も来月またティモに会えるんだと思えると、勉強が大変でも幾らでも頑張れるわ。

 ティモを喜ばせるためのプレゼントを準備しているから、楽しみにしていてね。一日だけでもティモを独占出来るんだもの。思いっきりティモに喜んでもらえるように頑張るわ。

 本当にティモは心が広いというか、優しいわよね。そんな風にティモが私のすべてを受け入れてくれているから、私は何でもできるわ。

 私はこれからも好き勝手に動くから、ティモも好き勝手動いてね。

 私もティモがどんなふうに動いてもティモの味方でいたいって思っているの。もう少ししたら私はそっちに行くわ。ユージョンやお母様、お父様も一緒よ。

 めいいっぱいティモにおしゃれな私を見せるわ。一日だけ、ティモだけの私として、ティモの誕生日を祝うのよ。



 ミリセント



 リド暦789年 八の月 二十八日


 ミリーはいつでも僕のことを独占していいんだよ。僕のことを独占出来る権利を持つのはミリーだけなんだから。

 ミリー、もうこっちにくるんだね。

 ミリーに僕ははやく会いたくて仕方ないよ。ミリー、おしゃれしたミリーを独占できるの楽しみにしてるよ。あった時に、沢山、お話聞かせてね。


 ティモ





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