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悪役令嬢と王子殿下の交換日記  作者: 池中織奈


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二度目のショーー10歳―

 リド暦789年 四の月 二日


 王城へと向かっているわ。

 春の訪れを感じられて、外の景色を見るのが楽しいわ。

 この世界にも桜の木があればいいのにって思ってしまったわ。桜というのは、私の前世で春の象徴とも言われていた植物なのよ。

 でも桜がなかったとしても、ティモと一緒に春を感じられるだけでも幸せだけどね。

 会えるの楽しみにしているわ。


 ミリセント



 リド暦789年 四の月 五日


 景色を見るのも心が穏やかな気持ちになっていいよね。

 こっちでは家族で王城の中庭でのんびり過ごしていたよ。母上が春の香りがするって喜んでいて、庭師が感涙していたよ。

 桜ね。ミリーがそれだけ記憶に残っているならよっぽど綺麗な植物なんだろうね。

 僕もミリーと春を感じられるだけでも幸せだよ。



 ティモ


 リド暦789年 四の月 八日


 もう、人前でも私のことをぎゅっと抱きしめて……ちょっと恥ずかしかったわ。嬉しかったけれど。

 周りに人が沢山いたからってすぐに離れてごめんね。二人っきりの時なら幾らでも抱きしめていいから。


 ミリセント



 リド暦789年 四の月 八日


 恥ずかしがっているミリーも可愛かったから大丈夫。

 じゃあお言葉に甘えて沢山ミリーを抱きしめるよ。



 ティモ




 リド暦789年 四の月 十二日


 ユージョンとキッドが仲良しで嬉しいわ。お友達が出来てにこにこしているユージョンが可愛くて思わず表情が緩んでしまいそうだったわ。

 私は未来の王妃になるのだから、そのあたりは表情を取り繕えるようにしないとね。


 ミリセント


 リド暦789年 四の月 十二日


 ミリーがにこにこしていて僕は嬉しいよ。キッドも楽しそうだし、可愛い弟たちが揃うといいね。

 僕たちしかいない時は、幾らでも表情が緩んでいいよ、ミリー。ミリーは人前ではちゃんと出来ているから。

 人前では公爵令嬢としてしっかりしていて、親しい人の前ではとても可愛くて、僕のミリーは最高だって思ったよ。


 ティモ




 リド暦789年 四の月 十五日


 ねぇ、ティモ。侍女たちからカメラで撮った写真を見せてもらったけど、私の写真を撮りすぎじゃない??

 しかも少し変な顔していたものもあるから、それは捨ててほしいっていったのにどうして取ってるの???


 ミリセント



 リド暦789年 四の月 十五日


 だって僕は可愛いミリーの写真が幾らでも欲しいからね。

 変な顔なんかじゃないよ。ミリーはどんな表情をしていても可愛いミリーだから。

 それにショーのために試着をしているミリーも、ユージョンたちを見て頬を緩めているミリーも、王妃教育を母上から習っているミリーも、全部可愛いから仕方ないよ。


 ティモ



 リド暦789年 四の月 十八日


 すっかりソロサヘル様はカメラの虜ね。夢中になれることは良いことだわ。ゲームではソロサヘル様は何か夢中になれることはなかったはずだし、良い傾向だと思うわ。

 やっぱり此処は現実だから、前世で私が知っている彼らと異なるものね。ティモは主人公の子に惚れたりはしないだろうけれど、他の方たちはどうなるのかしら。誰かを好きになるのは自由だけど、婚約者を蔑ろにしないでいてくれたらいいなぁって思うわ。

 

 ミリセント



 リド暦789年 四の月 十八日


 その辺は大丈夫だと思うよ。僕の側近候補たちは僕とミリーの仲のよさを見て、うらやましがってるみたいだから。

 それに彼らの言動に目が余る部分があったら意見は口にしているし、このまま成長したら婚約者を蔑ろにはしないんじゃないかな。

 あとドルゴラデーフとソロサヘルに関しては、そういう恋愛よりも僕に勝ちたいってのが強いみたいだし


 ティモ



 リド暦789年 四の月 二十一日



 ショーが無事に終わって良かったわね。今日のティモはとても素敵だったわ。

 こんなに素敵な婚約者がいる幸せを思いっきりかみしめたわ。ユージョンにも「お姫様!」って言ってもらえてうれしかったわ。

 今回は去年よりも規模を大きくして、参加者も増えて……、やっぱりこういうのは楽しいわね。

 綺麗な衣装を身にまとうのも楽しいし、これで服飾業界がもっと盛り上がること間違いなしだわ。



 ミリセント



 リド暦789年 四の月 二十一日


 僕の方こそ、ミリーみたいな可愛い婚約者がいて幸せだよ。

 こうして国家行事としてショーを行うことで、良い経済効果がうまれているから僕のミリーは流石だと思うよ。他国からの使者もきていたね。真似したいんだってよ。


 ティモ



 リド暦789年 四の月 二十五日


 今日は寝ちゃってごめんね。ついつい王城の庭園の居心地がよくて、はしたなくも昼寝をしてしまったわ。目が覚めた時にティモに膝枕されていてびっくりしちゃった。膝痛くならなかった? 何だかエドナにまるで絵画のように美しい光景でした! なんて言われたけど、私、寝ちゃってただけよね? 寝ぼけて変な事していないわよね?


 ミリセント


 リド暦789年 四の月 二十五日


 幾らでも膝を貸してあげるよ。ミリーが僕に気を許して眠ってくれるのは、幾らでも嬉しいから。

 ミリーの寝顔を見ながら風を感じて、とても幸せな時間だったよ。折角ミリーが王城にいても王太子としての責務があるかずっと一緒にいるわけにはいかないから、こうしてミリーと時間をとれるだけでも僕には良い息抜きなんだから。

 エドナは相変わらずミリーのことが大好きだね。大丈夫、可愛かっただけだよ。


 ティモ



 リド暦789年 四の月 二十九日


 また領地に帰らなければならないと思うと寂しくなるわ。

 またね、ティモ。次に会える時を楽しみにしているわ。



 ミリセント





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