弟自慢と、魔法師団長の息子―9歳―
リド暦788年 十一の月 一日
ティモは本当に私の事を甘やかすわね。
そうね。陛下に相談すると良いわ。それにしても陛下は私たち子供の意見も必要なものであったら聞いてくれてとても助かるわ。
私はティモほどではないわよ。ティモの方がかっこよくて、聡明よ。
そうそう、ユージョンがとても可愛いのよ。ティモがくれたカメラで沢山写真を撮ってしまったわ。
見て見て、とっても可愛いでしょ? 私の弟、世界で一番可愛いって気持ちになるわ!!
まだ一歳なのに、「ねーね」って私のこと、覚えてくれたのよ。凄い可愛いの。
ミリセント
リド暦788年 十一の月 四日
僕がミリーを甘やかすのは当然だよ。
うん、父上はとても尊敬できる父上だよ。
色んな国の歴史を学んでいると子供がでしゃばると子供ごとつぶそうとする王もいたみたいだし。
僕がそういう人の子どもだったら生きにくかったと思う。
もっと小さな頃の僕は父上に対してそういう風に考えたことはなかったけど、父上は良い父上だなって思うよ。そう本人に口にしたら何だか泣かれて、びっくりしたけどね。
ユージョンも可愛いね。じゃあ僕は変わりにキッドの写真を送るよ。でもまだカメラと写真は世間に広まってないから、あまり他にはばらまかないようにね。王族の写真はそれだけ価値があるから。僕もミリーからもらった写真は全部厳重に保管してあるよ。
あと僕はミリーの写真をもっとほしいから。ミリーの写真も送って。
ティモ
リド暦788年 十一の月 七日
本当にティモはぶれないわね。
ティモが陛下と仲がよさそうで嬉しいわ。そうね。とても素敵な王様だわ。私も次期王妃として学んでいけば学んでいくほど、陛下と王妃様が凄い方だってわかるわ。
それにしてももっと小さな頃の僕は~ってティモは今だって十分小さいでしょう? まだ十歳になったばかりなのに相変わらずティモは達観しているわね。
キッドも可愛いわね。
でも私の弟のユージョンの方が可愛い! って思ってしまうのは私がブラコンだからかしらね。でもきっとキッドとユージョンを並べたらもっと素敵な気がするわ。
ええ、もちろんよ。ちゃんと厳重に保管してあるわ。
お母様にとってもらった写真を送るわ。最近、分家の子どもが屋敷に来ていたのよ。楽しかったわ。
ミリセント
リド暦788年 十一の月 十一日
僕がもっと小さな頃、特にミリーに出会う前は、ミリーを大切に思う前の僕は人にそこまで関心を持てなかったからね。
そう考えると今の僕がいるのはやっぱりミリーのおかげだね。僕にとってミリーは本当に大切な子だよ。
僕もやっぱり自分の弟だからかキッドの方が可愛く見えるんだよね。でもまぁ、ユージョンもミリーに似ていて可愛いなって思うけど。これもやっぱり血が繋がっているからかな。自分の弟だと思うと特別な気持ちになるっていうか。
ミリーの写真ありがとう。可愛いね。でも分家の子どもって結構年が近い子いるんだね? 僕がミリーの傍に居ない時に、他の人がいるの、ちょっと嫌かな。何だか自分の心が狭く感じられるよ。
ティモ
リド暦788年 十一の月 十五日
何だか口にされるのも恥ずかしいけど、文章にされるのも嬉しいけど恥ずかしいわね。
私もティモに出会えたから今の私がいるの。だから、お互い様よ。
そうよね。自分の弟だと思うと不思議な気持ちになるわよね。弟なんて昔もいなかったから、凄く可愛いなって嬉しいのよ。
嫉妬しているのね。私は嬉しいわよ。それはティモが私を大切に思ってくれている証だから。でも心配しなくていいわ。私にとっての一番はティモだから。
ミリセント
リド暦788年 十一の月 十九日
僕は全然恥ずかしくないよ。本心だしね。
ミリーがそう言ってくれると嬉しい。
昔っていうのがいつかは分からないけど、僕も弟はいなかったから弟がいるのが不思議で、だけど可愛いね。この小さな子が大人になった時に誇れる自分でありたいって思うから。
僕は嫉妬してばかりだよ? 僕はミリーが僕以外と仲よくしているとちょっともやもやするし、異性が近づくと可愛いミリーを好きになるんじゃないかって思うし。僕にとっても一番はミリーだよ。
そういえばソロサヘルがとてもカメラのことに関心持ってるんだ。何だか今まで僕に魔法で勝てないからって何とも言えない表情浮かべていたりしたのに、「これを作ったのはティモ殿下なのか、凄い!!」って目を輝かせていてびっくりした。
魔法具作りにも凄く興味があるみたいだね。
ティモ
リド暦788年 十一の月 二十三日
恥ずかしがらないのは流石王子様っていうべきかしら。ティモって本当に理想の王子様よね。女の子は自分だけの王子様を求めるものだって昔の知り合いが言っていたけど、ティモは私だけの王子様ね!
そうね。立派な自分でありたい。私は何よりもティモの前で胸を張れる自分でいたいわね。
私もティモに女の子が近づいていると少しだけ嫉妬するわ。それに私より素敵な子が現れたらティモがそっちにいくのかなって不安もあるわ。でもね、ティモが私を大切だって示してくれるからその不安も少ないの。
ソロサヘル様が関心を持っているのね。ソロサヘル様は魔法具作りの天才になるもの。その片鱗は今からあったのね。是非ともソロサヘル様にも魔法具作りをやらせてあげてね。
ミリセント
リド暦788年 十一の月 二十六日
ミリーだけの王子様っていいね。ミリーは僕だけのお姫様だね。
僕も一番はミリーの前で誇れる自分がいいかな。ミリーに失望されたくないし。
ミリーが嫉妬してくれていると何だか可愛いね。僕はミリー以外に興味がないからね。
天才になる……ね。そっか。ミリーが言うなら父上にも進言してみる。そういう未来を知っているみたいな発言についても、ミリーの誕生日に教えてもらえるのかな?
ティモ
リド暦788年 十一の月 二十九日
互いに互いだけの王子様で、お姫様ってとても良い響きだわ。
私はどんなティモにだって失望しないわよ。
そうね……。私も心を落ち着かせて、ティモに話す準備出来ているの。だから、来月の誕生日に全部話すからね。
私の誕生日にティモが会いに来てくれるの楽しみにしているわ。
ミリセント




