隣国の王城―9歳―
リド暦788年 八の月 二日
何だか今まで昼間も回していた交換日記を夜にだけ回すのは不思議な気持ちね。
もうすぐ隣国の王城に行くのが初めてだからドキドキするわ。噂には聞いているけれど、やはりこういう時にカメラがあるといいわよね。
でも流石に王城の写真はあまり撮らない方がいいかしら。敵国にその写真が渡ってしまったら大変だし。
ミリセント
リド暦788年 八の月 二日
こんばんは。ミリー。
そうだね。夜だけ回すのは不思議な気持ちだね。
僕は緊張よりも楽しみの方が多いかな。ミリーと一緒だからね。
そうだね、カメラが出来たら色んな写真は撮りたいけれど僕らは立場を考えて、政治的なことで撮らない方がいいことも考えないとね。
ティモ
リド暦788年 八の月 七日
なんだか隣国の王城で交換日記をモアに持たせるのドキドキするわね。
ティモが手をまわしてくれているから問題はないのは分かっているけれど。なんか王城に仕えている侍女たちに微笑ましい目で見られて恥ずかしかったけれど。
この国の王族たちは、何だかまた違った感じで綺麗な方たちね。どちらかというと筋肉質でガタイがいい感じで、今はまだかわいらしかった王子様もいつか王様のようになるのかしら? ティモとはまた違ったイケメンに育つと思うわ。
王城のつくりや文化も、国が違えばがらりと変わるのだなと面白くて仕方ないわ。外交のために来ているからはしゃがないけれど!!
ミリセント
リド暦788年 八の月 七日
僕は隣国でも僕とミリーが仲良しだと広められることが嬉しいよ。
ミリーはこの国の王族たちの顔が好きなの? ミリーが僕以外の異性を褒めていると僕は悲しいよ。
内心はしゃいでいるけれど一生懸命『王太子の婚約者』の仮面をかぶっているミリーも可愛いよね。流石、僕のミリー。
ティモ
リド暦788年 八の月 七日
私も嬉しいわよ。ちょっと恥ずかしいけどね。
確かに美形だと思うけれど、私にはティモの顔が一番よ。顔だけじゃなくて、ティモは全部素敵よ。
ティモは本当に私の事が大好きね。
ミリセント
リド暦788年 八の月 十日
今日は隣国のエルコッペ殿下と何を話していたの?
見間違えじゃなければ顔が赤かったけど。
ティモ
リド暦788年 八の月 十日
世間話をしていただけよ。
なんだか私とティモが隣国だから仲が良いふりをしているのではないかって子供らしくない疑りをされたのよ。
確かに王侯貴族だとそういう事もあるかもしれないけれど、私とティモは仲良しなのに。
だから恥ずかしくない程度にティモとのことを話しただけよ。その後、態度が変だったわね。どうしたのかしら。
ミリセント
リド暦788年 八の月 十日
そっか。了解。僕からもミリーと僕の間には割り込めないってことを知らしめておく。
そういえば町を見に行ける日程もたったから楽しみだね。
ティモ
リド暦788年 八の月 十三日
今日のお忍び視察、楽しかったわね!!
なんだろう、私とティモの顔を隣国の人たちは知らないからこそ、身分を偽ってゆっくり街を見て回るのが出来て楽しかったわ。
ティモに買ってもらった髪飾りはずっと大事にするわよ。それにしても疫病の影響で少し暗い顔をしている方たちもいたけれど、大分街が元気になっていて良かったわ。
ミリセント
リド暦788年 八の月 十三日
そうだね。僕も凄く楽しかった。ミリーと一緒にお出かけをするだけでも僕は幸せだよ。
ミリーにはこれからも沢山、身に着けるものを買うからね。僕が用意したものを身に着けるミリーを想像するだけで楽しい。
そうだね。疫病の影響が大分落ち着いたのは良かったね。
ティモ
リド暦788年 八の月 十七日
隣国との国交も上手くいっていて嬉しいわ。
でもなんだかエルコッペ殿下の様子が少しおかしいのが気になるわ。
最近、なぜか私に話しかけてくるのよね。まぁ、美少年が私に話しかけようとしているのは可愛いけれど。
ミリセント
リド暦788年 八の月 十七日
そうだね。僕とミリーの初めての国交が上手く行って嬉しいよ。
それは気にしなくていいよ。僕の方でエルコッペ殿下に話しておくから。
ティモ
リド暦788年 八の月 二十日
すっかりティモとエルコッペ殿下は仲良くなったわね。
私が話しかけると逃げようとするけれど、ティモ、何かした?
ミリセント
リド暦788年 八の月 二十日
ただちょっとおしゃべりをしただけだよ。
エルコッペ殿下は同年代で親しい人がいないみたいだから僕に結構話しかけるようになったね。
ミリーに話しかけないならそれでいいけど。
ちょっと僕のミリーだからっていうのを分からせただけだよ。
ティモ
リド暦788年 八の月 二十五日
あっと言う間に隣国から去る日になったわね。
エルコッペ殿下ともお友達になれてよかったわ。私とティモのように仲が良い婚約者が欲しいっていっていたわね。そんな風に言われるとちょっと嬉しかったわ。
エルコッペ殿下の婚約者はどんな方になるのかしら。
ミリセント
リド暦788年 八の月 二十五日
ミリーと一緒に過ごすと隣国での日々もあっと言う間だったよ。
僕とミリーのようにって言ってもらえるのは嬉しいね。あいつにも僕とミリーの仲の良さが伝わったってことだろうし。
ティモ




