北方宗一の軍事語り #4 自衛隊史上初の特殊部隊 特別警備隊
今回は自衛隊に行きます。
自衛隊史上初の特殊部隊は海上自衛隊に設立されたという事実を知らない人って、結構多いんですよねぇ。
今回からは警察ではなく自衛隊に行こうと思います。
さて、意外なことに自衛隊には創立以来長らく特殊部隊が存在しませんでした。
しかし、年々安全保障環境は過酷さが増していく。
そんな中、最も前線に近い海上自衛隊が口火を切りました。
特別警備隊の設立です。
特別警備隊は海上自衛隊版SEALsとでもいうべき部隊です。
選抜は掃海部隊を中心にし、潜水技能を有した人物を利用した特殊急襲戦を前提とした編成のようです。
空挺のようなラぺリングや小型ボートからの乗り移りで目標船舶に侵入し、武装勢力を排除、内部探索を行うというこの組織の設立の裏には、海上自衛隊と海上保安庁の苦い経験がありました。
1999年3月23日、能登半島沖に不審船が確認されました。この時、舞鶴の第3護衛隊群が出撃。海上警備行動に基づく威嚇爆撃とともに隊員を完全武装させたうえで不審船を急襲、臨検する臨時編成の臨検隊が設置されました。これが今のSBUと一般隊員による立入検査隊設立の原点となります。
当時、海上自衛隊の歩兵戦力は基地警備部隊のみで、護衛艦には一応もしもの時に対応できるよう64式小銃と9ミリ拳銃はあったものの、満足な戦闘ができる隊員がいないといった状況でした。
その後、不審船は彼方へと消え、臨時の臨検隊を編成した「みょうこう」航海長はSBU設立のために動いたのです。
基本的にSBUは先行する海上保安庁の特別警備隊(警察の機動隊に相当)と特殊警備隊SST(警察の銃対やSATに相当)で対応できない場合や、海上警備行動発令下で不審船を襲撃制圧するのが任務となっています。
海上自衛隊のSBUは、不審船事案に対応するための切り札となります。しかし、設立当初とはまた違う任務も指向されつつあるようです。
SEALsは潜水能力に長けたものが多いため、上陸作戦における切り込み役や単独潜入による急襲を任されることも多いです。
SBUもまた、同様の任務の請負を考えているとされます。世界的に見ても掃海能力に長けた海上自衛隊からすれば、SEALsの真似事も容易なのでしょう。
また、イラクの邦人人質事件の際は、SEALsとともに人質奪還作戦の準備に入っていたとされます。バビロンの桜作戦とされるこの作戦は、最悪の事態が予想された際の最後の賭けとして温存されました。結果は知っての通り、人質は運よく解放され、今でも反自衛隊活動に精を出しているようです。
また、この部隊の訓練は過酷を極めることでも有名です。餞別として行われた徒手格闘訓練で死者が出た事故の際、かなりのバッシングが起こりましたが、この際初めて訓練が公開されました。
訓練では、高速ボートやヘリから対象船舶へと乗り移り89式小銃でクリアリングしていくさまが見られましたが、実際の手順よりも多くの変更がなされているという指摘もあります。
詳細が不明のこの組織。それでも装備に関して言えばかなりのことがわかっています。P226、MP5A5、折り曲げ銃床の89式小銃、機種不明の狙撃銃が対人対物各種といったところで、さらにフラッシュバン、そして試験導入されたというHK416が基本装備です。さらに一般隊員向けの装備の使用もあり得るので、ウィンチェスターM1300やベネリM3といった散弾銃や62式やミニミといった軽機関銃などが増えると考えられます。
装備はかなり充実している印象のあるSBU。日本の特殊部隊の先駆けとしてかなり活発な研究が行われているのでしょう。




