北方宗一の銃器語り #27 拳銃沼へようこそ 趣味の領域の拳銃たち その3 アメリカの香り。ガバメントクローンズ
世界一の銃器市場を有するアメリカでは長らく軍の制式であったM1911に対し強い信頼と信仰があります。
現在でも家庭向け、軍用、警察用にM1911とこの銃のために設計された.45ACPが多数生産され使用されています。
世界各国の銃器メーカーもM1911に似た設計を取ることでアメリカ市場で信頼を得ようとしたほか、M1911を独自の視点や思想で再設計、改良、生産しています。
これらの中でも著名なものをあげていきましょう。
コルト ゴールドカップナショナルマッチ
コルト製M1911A1で最も人気の高いシリーズ70をベースにし高精度な部品で熟練工が組んだ最高級モデル。
その名の通り競技用です。
サイトは可動式リアサイトとパートリッジフロントサイトを組み込んでいる。
映画「コブラ」のコブレッティ刑事の拳銃として有名。
コルト コマンダー/コンバットコマンダー
M1911A1を4.3インチ銃身で短縮したモデル。
コマンダーではフレームにアルミ合金を使用していたもののコンバットコマンダーでは鋼鉄に変更されました。
リトルバスターズ!の18禁版から登場した朱鷺戸沙耶が使用しました。
コルト オフィサーズ/ディフェンダー
オフィサーズはコンバットコマンダーを基にさらに銃身を3.5インチにしたモデル。
ディフェンダーはさらに銃身を3インチに切り詰めたモデル。
M15 ジェネラル・オフィサーズ
オフィサーズを軍が採用したモデル。
フレームはフルサイズになっている。
コルト ソーコム・プロト
ダブルイーグルを基にロータリーロックバレル、装弾数12発に延長されたグリップ、アンビマニュアルセーフティ、レーザーサイトなどが装着可能な着脱式ダストカバーマウント、ワンタッチ着脱式ナイツ社製消音器が特徴。
H&KのMk.23採用で存在は忘れ去られてしまいました。
コルト 380ガバメント
M1911を基にストレートブローバックにしたモデル。
.380ACPを使用します。
S&W M945
S&WがM1911を設計の基礎にして4506のスライドを使用するようにしたもの。
M1911クローンのSW1911とは違い完全独自設計で、部品互換性はない。
高級品ながらかなり売れたようです。
S&W SW1911
S&Wによる完全なM1911クローン。
エキストラクターを外装式にし、グリップセーフティと連動するファイアリングピンブロックを搭載しました。
やっぱり好調だった模様。
ウィルソン M1996A2 CQB
フロントセレーション入りのスライドとロングセーフティを持ち、トリガーにはアジャスタブルの軽量パーツを採用している$1800の高級モデル。
スプリングフィールド FBIスペシャル・ビューローモデル
グリップ前面のチェッカリング加工、アンビセーフティとマグウェル一体型のメインスプリングハウジング、トリチウムノバックサイトを搭載したFBI制式化モデル。$2500という超高級品。
キンバー カスタムⅡ
キンバー社のカスタム部品を詰め込んだオールインワンモデル。
各部の組み合わせで名前が変わる。
LAPDのSWATが採用した高性能モデル。
AMT ハードボーラー
ステンレス製モデル。
有名なのはターミネーターに登場したロングスライドモデルですが、通常の長さのモデルやショートバレルモデルもあります。
デトニクス コンバットマスター
量産型コンパクトガバメントの元祖。
バレルプッシングを廃してコーンバレルで銃身をスライドに収め、またリアサイトを若干前方に移植しスライド後端をスロープ化。グリップは短くしグリップセーフティも排除、マガジンの後端を若干斜めにはみ出させて小指を拾うようにしています。ハンマーも小さくしています。
デトニクスといえばこのコンバットマスターですが、実際にはサービスマスターなどのミドルモデルやスコアマスターやネメシスといったフルサイズモデルも存在します。
水谷豊が刑事貴族2の本城慎太郎の使用した拳銃です。
パラ・オードナンス P14
フレームを大型化し、ダブルカラムマガジンに対応させた初のハイキャパシティガバメント。
カナダで生産されていましたが現在ではアメリカに会社が移っています。
STI 2011
アメリカのカスタムガンメーカーSTIによって設計されたハイキャパシティガバメント。
ハンマーやトリガー、サイト、バレルなどなどあらゆる部品が複数種類存在し自由に選ぶことができます。
SV インフィニティ
STIからの部品供給で製造されたストレイヤーヴォイト社製のハイキャパシティガバメント。
トリガーやハンマーを簡単に取り換えられるよう設計がされており、趣味に合わせて調整変更ができます。
Z‐Mウェポンズ ストライクガン
STIエッヂを基に肉叩きみたいなスパイクのついたマズルガードにマガジン底部のスパイク、スライド後部両脇にシールドを追加してハンマーを防御などなど近接戦で銃を使うと起こりそうなシチュエーションに徹底して対策を施した拳銃。
このコンセプトはリベリオンのクラリックガンを中心に創作の世界にかなりの影響を与えました。
SIG GSR
世界で最も高性能なガバメントクローンとも言われるSIG製1911。
外観は二種類存在し、有名なのはP22Xの雰囲気を纏ったスライドデザインの物。
大型のノバックサイトを標準で搭載し、セーフティも尾ひれの大きいビーバーテールが標準。
センチメーターマスター
南アフリカで設計された10ミリオート弾使用の競技用ガバメントクローン。
サムガードと大型コンペンセイターが特徴的。
ラドム VIS‐Wz1935
ポーランドで第二次大戦前製造されていた拳銃。
9ミリパラべラムでデザインが違うものの、ほとんどM1911と変わらない設計でした。
この時代の拳銃、そしてシングルアクション拳銃としては珍しくデコッキングレバーが存在します。
冷戦終結後ラドムは再生産を始めましたが会社は衰退。残ったモデルは2500ドル以上で取引されているとのこと。
この銃の.45ACPモデルはその後改良され、第二次大戦後の米軍向けトライアルに提出され高い評価を得ました。この銃からコルト社が学んだものはその後のM1911シリーズに生きているとされます。
アーセナル AF2011A1
2012年に世界中を震撼させYahoo!Japanのトップページのニュースにすら登場した史上最狂のゲテ物拳銃。
ロシア資本イタリア生産の新興銃器メーカー、アーセナルが開発した拳銃です。
その見てくれはまさしく連装砲かツインバスターライフルかといった具合です。
デザインはM1911A1シリーズ70以降のモデルを鏡に張り付けたかのようにしたものですが、フレーム、スライド、ハンマー、トリガーバーその他各部品が新規設計という特徴があります。厚みは1.5倍、重さはほぼ1.7倍、装弾数2倍、弾薬消費量2倍、リコイルスプリングの総ばね係数2倍、しかし反動はほぼ据え置きという異様さを誇る拳銃です。また通常のシングルカラム二本が専用マガジンの代用にできるというのも特徴。
いつかハリウッドに出てくるだろうと思いきや、007 スペクターに登場するとのこと。
これら以外にもマグナムオートや競技用.22口径モデルなど数多くのモデルがあります。
M1911は実銃でもモデルガンやエアガンでも数多くのバリエーションとカスタムパーツが存在します。
たった一丁M1911を買えば一生かけていじり倒すことができます。
自分好みの銃を作りたいとき、この銃は味方になってくれるはずです。




