北方宗一の銃器語り #25 拳銃沼へようこそ 趣味の領域の拳銃たち その1 古かったり弱かったり、高かったり安かったり
5/23 うっかり書きそびれていたものを追加。
世界では様々な拳銃が生産されています。多くは軍・警察用に使えるものが多いですが、中にはもう実用に耐えないモデルや趣味性に富んだモデル、撃てればそれでいいというものも多くあります。
S&W M1
S&W初の金属薬莢使用拳銃。
銃身とフレーム前縁を上方向に開くチップアップ式。シリンダーごと弾薬を取り換えるという発想で高い連射性を実現しました。
坂本龍馬のリボルバーとして有名です。
S&W M3
ブレイクオープン機構を採用したリボルバー。
ブレイクオープンで6発全弾を排莢できるものの、強度や機構の問題から廃れました。
S&W M3566
9ミリ口径の改良弾.356TSW拳銃弾を使用する拳銃。
競技用の拳銃弾の規定に合わせるために.45ACPと同等の運動エネルギーを持っている。
なお、完全専用弾と専用拳銃なのでとっくの昔に廃盤になっている。
エアガンでPC356という名前で販売されたために日本では非常に知名度が高いですが、実際にはほぼ見無い銃なんだそう。実際、出てくる作品は日本の物ばかり。
コルト シングルアクション・アーミー SAA
コルト初の金属薬莢使用銃。ピースメーカーとも呼ばれます。
西部劇でよく見かける拳銃です。
頑丈な一体構造フレームで大口径弾を使用できるため、現在でも大威力のクローンモデルが生産されています。
トリガーとハンマーとシリンダーのメカニズムからファニングという6連射ができます。エクスペンダブルズでバーニー・ロスがよくやってますね。
弾薬の交換にはローディングゲートを開き、一個ずつエジェクタ―ロッドで突いて排莢するため時間がかかります。
テキサス州公安局の独立部隊テキサス・レンジャーでは未だに使用されています。
コルト M1877
コルト史上初のダブルアクション拳銃。S&Wより先に導入されました。
創業者のコルトの遺言を破って導入しましたが、結果は芳しくなく、S&Wがダブルアクションに参入するとたちまち客を奪われてしまいます。これ以降コルトはダブルアクションを苦手とするようになります。
しかしビリー・ザ・キッド等が愛用するなど、なかなか著名な愛用者がいます。
コルト M1900
ジョン・ブローニングが設計したショートリコイル式拳銃。
独特の味気ないデザインで、銃に詳しくない漫画家に自動拳銃を描かせたような外観をしています。
使用する弾薬が.38ACPとなっていますが.380ACPとは全く関係がなく、現在はほぼ存在しない弾薬です。
コルト ウッズマン
競技用の.22LRの拳銃です。
スタームルガーMkⅠが出るまで市場をほぼ独占していました。
キノの旅にも登場しました。
コルト ポケット
コルトのコンパクトオート。
アメリカの空軍兵の護身用やOSSのスパイの武装としてアメリカでは使用され、日本では将校が購入していました。
この銃の前期ロットには安全装置が無く薬室の確認もしづらかったため暴発事故がよくおこり、この事を基にした映画もあります。
また、日活の映画でよく出てきた拳銃でもあり、おじさん層に人気があります。
コルト ジュニア
スペインのアストラが製造したものをコルトがアメリカで販売したポケット拳銃です。
なおこの銃の1世代前のモデルはFN M1906です。
CZ コルト Z40
コルトの経営危機に際しアメリカ市場を見据えていたチェコのCZが支援として開発した拳銃です。
Cz75シリーズを基に.40S&Wを使用し、デザインをコルトのM1911に似せるように頼まれたと言います。
しかし、生産開始直後に一般発売中止が決定。数量限定で販売されました。
この銃を基にしたRAMIというモデルがCZのカタログには残っています。
スタームルガー MkⅠ
.22LRを使用する競技用自動拳銃。
コルトウッズマンの独壇場だった競技用.22LR市場に食い込むことに成功しました。
開発当時の社長、ビル・ルガーが日本好きで南部式拳銃を気に入ったこともあってスタイルを似せました。
改良が重なMkⅡ、MkⅢが存在します。
カスタムモデルにはMkⅡ AWSアンフィビアンSと呼ばれるものがあり、銃声が非常に静かでSEALsに暗殺用として納入されました。
ハイスタンダード デリンジャー
上下二連装の小型拳銃です。
トリガープルが11キロと非常に重く中指で引くため、非力な人には撃てず、撃てる人でも命中が期待できないんだとか。
レミントン デリンジャー
上と同じく上下二連装の小型拳銃です。
日本ではこちらの方が見慣れている人が多いといえます。
峰不二子をはじめとする美女が太もものガーターリングに挟んでたりする拳銃です。
COP 357
デリンジャーをさらに連装にしたようなスタイルの四連装拳銃です
.357マグナムを撃つことができますが、かさばるうえに軽く小さい本体と高威力な弾薬の組み合わせは銃身の位置が発射毎に上下左右が変わるのもあって命中が全く期待できず、洗練されていない設計もあって短命に終わりました。
D&D ブレン・テン
Cz75を基に10ミリオートを使用する拳銃です。
マガジンの生産をイタリアに任せたために生産遅れで銃本体のみで流通し、銃本体も強度不足。
トリガーの引き心地をよくするためにハンマーのばねを弱めたために撃発もうまく行かないことがあるなど、素人ゆえの失敗を重ね3年で会社ごと生産終了となります。
マイアミヴァイスで登場したものの、セールス改善には至らず、会社の資本が尽きたのが原因だったようです。
現在はAR向けアクセサリーメーカーのヴルター社が製造権を手に入れ再生産を目論んでいるようです。
イントラテック TEC‐9
スウェーデンのインターダイナミックが設計したサブマシンガンをアメリカ市場向けに仕立て直した拳銃。
性能面ではオープンボルトに射出成型のプラスチックフレームを使用した安価で単純なつくり。
しかしその単純さゆえに犯罪者によるサブマシンガン化が横行してアメリカ政府からの勧告から設計を変更し改造しにくいクローズドボルトにします。
しかしやっぱり安かったためにアメリカの武器規制法AWBで生産販売が完全禁止になります。
その後より拳銃のようにしたAB‐10を出しましたが数年後に倒産。
TEC‐9禁止を明言したAWB制定のきっかけになったサンフランシスコ弁護士事務所乱射事件で使用されたほか、あのコロンバイン高校銃乱射事件で犯人が使用したため、悪役の銃として浸透しました。
キメル AP‐9
TEC‐9の売れ行きから設計したというパッと見サブマシンガンっぽい拳銃。
実際映画ではサブマシンガンに改造され、おかげでみんなサブマシンガンだと思い込んでいた。
フレームはアルミ合金。
アキュ・テック HC‐380
何処をどう見てもPPK/Sにしか見えない外観の拳銃。しかしマガジンキャッチが欧州の爪を使うコンチネンタルスタイルで(PP系はボタンを使うアメリカンスタイル)、マガジンもハイキャパシティ、トリガーはシングルアクション、希望小売価格$330(PPKは実売$500)の安価な拳銃です。
しかし、ジャムを起こさずマガジンを空に出来ない。テイクダウンピンが反動でおれた。傷害補償で修理してもらったらすぐ他のところが壊れた。などの話が出てきます。
ブラックラグーンでバラライカがこきおろしていた銃でもあります。
レイヴンアームズ MP‐25
$100未満で変える格安自動拳銃です。
護身用でダイキャスト製。200万挺も売れたという知られざるベストセラー。
護身用としては十分な出来栄え。
コピー品が後に横行しますが、オリジナルが一番いいというのも特徴。
ハイポイント C
9ミリパラべラムなどの軍用弾を使用するダイキャスト製法で作られた安価な拳銃です。
ストレートブローバックなのでスライドが非常に重くなっています。
なんとスライドはトミカと同じ亜鉛ダイキャストです
ローシン L9
ハイポイントと同じような安価な拳銃です。
会社がつぶれてしまったのか情報がほぼ残っていません。
ウェブリー&スコット ウェブリーリボルバー
イギリス軍で19世紀末から1960年代まで使用された制式リボルバー。
自動排莢式ブレイクオープン機構を採用しています。
ウェブリー・フォスベリー オートマチックリボルバー
イギリス陸軍のジョージ・ビンセント・フォズベリー中佐が考案、ウェブリー&スコット社が製造した世界初の実用オートリボルバー。ブレイクオープン式で複雑な機構ゆえに一部の士官と空軍パイロット以外には好まれませんでした。
エンフィールド No.2
対戦車ライフルの設計で有名なボーイズ大尉が設計しエンフィールド造兵廠が製造したリボルバー。
しかしその設計はウェブリーリボルバーのコピーであり、ウェブリー&スコット社が政府に訴訟を起こす騒ぎになっています。
しかし完全なコピーではなく、簡略化のためにシリンダーのモールド省略やトリガーユニットの下部フレームとの一体化などが施されています。
天空の城ラピュタのムスカ大佐が三分間待つ時に持っていた拳銃です。その他のジブリ作品でも多く出てくるようです。
ボーチャードピストル
世界初の本格的自動拳銃。
トグルアクションを採用した全長352ミリ、重量1310グラムの大型銃です。
マガジンをグリップに収めたスタイルは量産品ではこれが初めて。
グリップが垂直で重心が後方に寄りすぎなため軍用には採用されませんでしたが、そこそこセールスは好調だったそうな。
この銃の拳銃弾はその後9ミリパラべラムと7.63ミリマウザーから7.62ミリトカレフへと派生し、東西双方の拳銃弾として活躍しました。
ルガー P08
ボーチャードピストルを基にゲオルゲ・ルガーが設計を見直して完成させた拳銃。
スイス軍に制式化され、その後ドイツ軍が制式化しました。
トグルアクションゆえの複雑な設計は動作不良を起こしやすいものの、精巧な設計は評価が高い。
ゲーリング向けの装飾付きルガーは100万ドルの値打ちがあります。
日本にもオランダ軍が制式化したものに彫刻を入れて使用した「菊ルガー」が存在します。
9ミリパラペラムを採用した初めての拳銃であり、パラべラム弾はルガー弾と呼ぶことがあります。
マウザー C96
モーゼルミリタリー、ブルームハンドルとも呼ばれる自動拳銃。
M16の機関部とよく似た配置をしています。チャージングハンドルの位置もどこか似ています。
マガジンがグリップ、トリガーの前にあるのは特許対策のためとされます。
連射可能なシュネルフォイアーというモデルが存在します。
ストックにもなるホルスターもあります。
満州の馬賊が使用した拳銃として有名です。
ワルサー TPH
PPKをさらに小型にしたようなデザインのポケットピストル。
小型化によって重量は半減しました。
.22LRや.25ACPを使用する護身用のポケットピストルとしては珍しく、コンベンショナルダブルアクションを採用しています。
ワルサー P22
P99を基にした競技向け拳銃。
ハンマー式に変更され使用する.22LRに合わせサイズも75%程度になるよう縮小。
.22LRの拳銃の中では重く大きいため反動が相対的に小さくなり、初心者向けにもってこいだとか。
バージニア工科大学銃乱射事件で犯人が使用した銃でもあります。
FN M1900
ジョン・ブローニングが初めて市販品として設計した拳銃。
.32ACPはこの銃のために設計されました。
1909年、ハルビンで起こった伊藤博文暗殺事件で安重根が使用し、以前には1914年のサラエボ事件で実行犯のガブリロ・プリンチプが暗殺に使ったのはこの銃とされていたようです。
北朝鮮ではある種神聖な銃として扱われていて、金日成が抗日運動を行っていた際の愛銃であったことから国産化、独自改良を進めました。
FN M1906
ジョン・ブローニングによって設計されたポケットピストル。
.25ACPを使用します。
デザインを変更し軽量小型化したFNベビーや実質的なコピーモデルのコルト ベストポケットもありました。
北朝鮮の工作員が暗殺用としてサプレッサー搭載のコピーモデルを使用しており、日本でも押収されています。
FN 1910
ジョン・ブローニングによって設計されたM1900の後継モデル。
衣服に引っかからないように角を落とされ、サイト類も出っ張らないようになっている。
シングルアクション、ストライカーファイア、ストレートブローバックという設計です。
戦前の日本では軍将校が愛用し、警察では新撰組とも呼ばれた特別警備隊や警官突撃隊の制式装備となっていました。
1914年のサラエボ事件で、オーストリア皇太子夫妻暗殺の実行犯ガブリロ・プリンチプが使用したのは現在ではこの銃とされ、ウィーン軍事博物館に展示されているのだそう。
月光仮面の拳銃であるため日本人にもなじみがある拳銃です。
ベレッタ M1934
イタリア陸軍が制式化していた拳銃。
ベレッタの大きく開いたスライドはこの銃から知られていました。
。380ACPを採用する軍用のM1934と.32ACPを採用するM1935が存在します。
1980年代まで製造が続き、100万丁が生産されました。
ベレッタ M950
.25ACPを使用するポケットピストル。通称ジェットファイア。
アルミフレームを採用したシングルアクション、ストレートブローバックで設計されました。
初弾をスライドを引かずに装填できるようレバー操作でバレルを中折れ式のように持ち上げるチップアップ機構を採用しました。
ベレッタ M3032
.32ACPを使用するポケットピストル。通称トムキャット。
ダブルアクション機構とM950と同様チップアップ機構を搭載しています。
パルディーニ PC
シングルアクションの競技用拳銃。
軍用級の弾薬を使用します。
グリップが寝ているため、.45ACP弾では反動吸収に難があります。
9ミリモデルがパラべラム弾ではないのはイタリアの国内法の問題があるためで、寸法も威力もほぼ変わらないIMI弾を使用します。パラべラム弾でも難なく使えるとされています。
ベルナルデリ P‐018
イタリアのベルナルデリ社が設計した自動拳銃。
SIG P210・220、ベレッタ 92、FN ハイパワーを掛け合わせたようなデザインのオーソドックスな拳銃です。
しかしセールスは鈍く、有名にはなりませんでした。
タンフォリオ TA90
Cz75クローンとして非常に有名な拳銃。ジェリコの原形にもなりました。
デコッキングセーフティーのスライドへの装備等で安全に気を配ったつくりになっているうえに、資本主義国であるイタリア製なのでアメリカ市場にCz75より流通した。
マテバ MTR‐8
1983年に発売されたマテバで最もマイナーな拳銃。
8連発シリンダーがトリガーの前にあるという、マテバの中でももっとも一般的なリボルバーとはかけ離れたデザインをしている。
この設計は銃身の線とグリップ上端の距離を最小化し重心を前にすることで跳ね上がりを抑制する効果を期待したものだった。
撃発はストライカー式。コッキングレバーでコックするという特徴がある。
マテバ 2006M
1985年に発売されたマテバの代名詞であるフレーム下部のバレル配置を最初に実現したモデル。
円筒形シリンダーに単純な面構成のバレル外装が特徴。
スイングアウトが上方で、再装填に手間取るという欠点を有していました。
映画GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊のトグサのマテバはこのモデルを基にしたものです。
マテバ 6ウニカ
1997年に発売された2006Mを基にオートマチック化したモデル。
六角柱形シリンダーに複雑な面構成のバレル回り、一般的な左下方スイングアウトを採用しています。
攻殻機動隊SACシリーズのトグサのマテバはこのモデルを基にしたもの。
キアッパ ライノ
マテバの拳銃を設計してきたエミリオ・ギゾーニがマテバ社の車種死亡に伴う方向転換からアントニオ・グダッツォと組んで設計製造したリボルバー。
デザイン自体は6ウニカと2006Mの折衷で、六角柱形シリンダーに単純な面構成にシュラウドの肉抜きを施したバレル回り、4インチモデル以上にはピカティニーレイルを搭載。スリングアウトは一般的な左下。
メカニズムは2006Mと同様な非オートマチック設計。
まだ、マテバ程メディアに露出していません。
ローム RG14
ドイツ製の格安拳銃。
装弾がSAAよりさらに面倒で、手間がかかります。
材質も亜鉛ダイキャストなので威力もたかが知れており、6発撃ったら逃げる以外策がないと言えます。
スフィンクス AT
スイスのスフィンクス社のCz75クローン。
削り出しでできた堅剛なつくりの高精度拳銃なので生産数は多くなく非常に高価。
最近はポリマー化したSDPが主力。
ナガン M1895
ナガンリボルバーと呼ばれるベルギー設計のリボルバー拳銃。
ロシアのトゥーラ造兵廠で生産されました。
ガス漏れを防ぐ機構を有しているためサプレッサーを使用しても大丈夫な珍しいリボルバーです。
1950年ごろからソ連で退役が進み、日本の暴力団に流れていきました。
二十六年式拳銃
日本初の国産拳銃です。
中折れ式のダブルアクションオンリーで騎兵用に開発されました。
銃身の口径と比べて弾丸の径が小さいためにガス漏れが酷く威力は低く、豚の鼻すら撃ち抜けないというジョークが生まれました。
南部式自動拳銃
国産初の本格的自動拳銃です。
大型の甲、乙、小型、そして乙型改の十四年式が存在します。
ボルト式でボルトストップがマガジン兼用で銃本体にないためホールドオープン状態でマガジンを抜くとボルトが閉じてしまいます。
十四年式はトリガーガードやボルトハンドルの形状によって製造時期が分かります。
部品の強度やクリアランスの問題から事故がよくおこったと言います。
戦後警察に払い下げられました。
九四式拳銃
十四年式の後継として設計された拳銃です。
マガジン、マガジンセーフティーが搭載されています。
スライドストップが無かったりバネが硬かったりトリガーが重かったり、さらに言えばシアーの構造上暴発の危険があります。
しかし、日本軍では薬室を空にし、マガジンも抜いた状態で携帯したため事故は全く起きなかったとか。
ミロク リバティ・チーフ
ミロクが輸出を目的として製造したリボルバー拳銃。
コルト系の外観ですがS&Wに類似した設計です。しかし、輸出当時の日本製品は安かろう悪かろうの印象が強く、この銃の売れ行きはそこまでよくなかったとか。
なお、地味にハリウッド映画にも出ていたりします。
このほかにも自動拳銃の輸出計画があったもの室戸台風や武器禁輸原則の設定で計画はなくなってしまいました。




