三百九A生目 金陸
バードソウルは空へと飛んでいった。
あ……どうやって回収しようか。
「む? その手……」
「うわっ、びっくりした!」
「戻ってきたのか!」
指摘されて見ると手元に光に覆われてバードソウルが転移してきていた。
「念じると戻るみたい。これ、使い方によってはかなり凶悪だね……」
「使い手にもよるだろうが、一方的にこの威力で敵をなぶれるとなると話が変わってくるな。どれ、返してみろ」
興味津々なラーガに返してみる。
ラーガが持ってから私が離れる。
ラーガが強く振るってみると頷いた。
「うむ、オレが使う分にはどうやら問題ないらしいぞ」
「わあ、バードソウルに選ばれている……いいなあ」
やはり選ばれた存在というのは違うらしい。
バードソウルをケンカせずにおさめた。
そのままラーガは普段扱うように槍投げの体制に入る。
弓が生まれ腕が出てきて。
それが弦を引いてから放つ。
美しく空へと飛んでいった。
「む……」
しかし当のラーガは不満そうだ。
何が悪かったのだろう。
「どうしました?」
「今のは全力だった。しかし、槍が途中で落ちていくのすら見えたし、あの爆発的な勢いはなかった。なにより、1度やったときのこの疲労感……屈辱だ、オレはこの槍を扱いきれていない」
「そこに関しては、鍛え方が違うからねえ」
「嫌味か?」
「いや、そういうもんだよ、冒険者と王族の違いは」
現場中心のやつとパワー同じだったら怖いくらいだよ。
納得してもらっていないがそこはきたえてもらうしかない。
武器も手元に戻ってきているのを確認し神域をとく。
「うん、これで大丈夫そうだから戻すよ」
私は神域をとく。
すると一瞬にして前の景色が帰ってきた。
みんなその様子を見て結界だと思ってくれたらしい。
「兎にも角にも、これでこの槍は正式に宝石剣と相成るな」
「私、資格持ちじゃないので鑑定書はつけられませんけどね」
「問題ない。本物だとわかれば表で鑑定士に書かせる。宝石剣かもしれないと持ち出して、偽物だと言われたら国の恥だからな」
うーん政治というやつだ。
しかもそのあと語った話によると表で大々的に鑑定させるらしい。
国の権威のためだ。
[大事に使ってね]
「それは言われるまでもない。で……こいつは誰なんだ。押し切られる形でここに入ったが、結局十分な説明がなされていないが?」
「まあまあ、宝石剣の専門家みたいなもんで、必要だったんだよ」
フォウについてきてもらったのは当然フォウがその力を認識できるからだ。
観て判断するのは私だが根源的に理解できるのはフォウしかいない。
彼自身は宝石剣に……魔王の力に未練がないのも利点だ。
「まったく、まともな口もきけぬ、生物かも怪しいコイツがな……まあいい。こちらとしては仕事をこなしてもらえば問題ない。支払いは口座にしておく」
しかも今回は仕事扱いだ。
なんとこんなだけでお給料が発生する。
冒険者やってたら命がけで帰ってきてボロクソな状態でもまっとうな賃金が出ないこともある。
冒険者ギルドも利益を必要とするからね。
成否問わずなんて依頼はほぼない。
あとぶっちゃけ額が低い。
だけれども今のですんごい額が振り込まれる。
これはNDA……秘密保持契約も含まれている。
あくまでここは非公式なチェックだからだ。
それにしても多いあたりがこう……上の者って感じだ。
それはともかく。
これで管理済みの宝石剣が5本となった。
あと2本……きっとどこかにある。
フォウによると皇国より西はわかってる反応ばかりらしい。
つまるところあとは……東。
金の大陸と銀の大陸だ。
激動の日々から時間が過ぎていき私の次の目的地が決まった。
金大陸だ。
しかも呼び出しである。
[金の大陸に来てくれ! 歓迎する! なるべく急いでな!]
こういった内容が金竜から来ていた。
えぇ……いきなり何? こわ……
とはいえだいたいわかるところがある。
前から話していた月の神やら宝石剣やらそれに……
終末の獣について。
予言の内容についての話があるんだろう。
じゃあ神の手紙こと脳内メールに書いてくれよと思うけれど……
まあそんな都合は向こうも考えた末だろう。
直接会ったほうがいいならそうするだけ。
私は金の大陸に赴いている魔物冒険者のワープ履歴を使って……
空魔法”ファストトラベル”をした!
”ファストトラベル”した先で向かったのは海岸。
旅の始まりはいつも港付近から始まる。
私は港近くにある灯台元へと来ていた。
確かに印象的だからファストトラベル先に向いている。
「##?」
「あっ」
ただ……たまたまその先を誰かにみられなければ。
第一村人発見である。
”観察”して早速言葉を覚える。
じゃないと説得も言いくるめもできやしない。
身なりはいかにも海の女性で快活そうな格好をしている。
ただその瞳や姿勢は快活さとは真逆でめちゃめちゃビビっている。
観た感じそんなに強くないから仕方ない。
「こんにちは!」
「ひえっ、いきなり現れた人がいきなり話しかけてきた!?」
「冒険者です、ワープしてきました。冒険者ギルドどこかしりません?」
「えっあっ、ワープ!? ああ、冒険者、冒険者かあ……」
冒険者。それだけでたいていのトンデモは誤魔化せる勢いのある言葉だ。
実際言いくるめられたらしくまだ汗の浮かぶ顔でこちらを見つつも。
「ええっと、街はあっち、ですよ?」
なんとかなったらしい。
「ローズオーラって言います、よろしく」
「あ、アリシアです……えっと、海から運ばれたものを港に卸して売る仕事、しています」
「港の市場で働いているんだね」
「ここでは、どんな立場であれ、働かなければまともに主張もできませんから……」
金の大陸は開拓土地ときいている。
もとはニンゲンがまともに住まわぬ土地だった金の大陸。
とある理由でその状態だったのを昨今……いやまあ10年程度再度アタックをかけているのが今だ。
そう。人類にとって金の大陸とは暗黒の大陸なのだ。
「こっちに来て短いんだけれど、やっぱり開拓土地だからみんな活気があるんですか?」
「あ、いえ、活気というのは違くてですね、むしろ、家庭業務しか行えない者、それこそ子供や妊娠中の方なんかは、この大陸にいること自体をなるべく避ける傾向があるんです。なんというか、みんな外で働いて、稼ぎがないと、そもそもこの大陸に来た意味がない、みたいな扱いが……」
「あー、それは大変そうだねえ」
「ぼ、冒険者たちほどでは……」
つまるところ実力主義というか……なんというか良くない偏り方になってそうだ。
まあそのぐらい危険な土地だとも言う。
冒険者は結局地道に信用を重ねていくしか勝ち取れるものはなにもない。
そういう意味では一番の実力主義かも。
とはいえずっと町中で活躍している冒険者でレベルが高くなくても信用性が高いからいいランクの冒険者もいるにはいるけど。
「そ、その、ここには最近来られたのですか?」
「まあねえ。まだ右も左もわからない感じだよ」
「そ、そうなんですか……この大陸に夢を見てくる人は多いんですが、その、気を悪くしないでほしいんですが、たいていは厳しい現実に負けてしまって、帰るか、もっと悪いことになるか、ううん、わたしも結構マズいかもなあ……」
「だ、大丈夫ー? なんか途中からどんどん声が……」
「あ! いえいえ! なんでもないんです!」
ニンゲンなら聞こえないくらいの声でボソボソしだしたので戻した。
なんとも彼女は不安になりそう。
私というイレギュラーがなくともなんというか……常に不安を抱えていそうな感じが。
自信のなさはこの大陸でやっていけるのかな……?
灯台にはたまたま荷物を別の場所に運んだ帰りだったらしい。
地元民はあんまり寄らない場所だ。
灯台はここに来る船のために重要な施設であり不要な立ち入りは禁じられているらしい。
まあ場所自体が辺鄙なところだから新しく来た冒険者が来たり管理人や荷運びの道中見るくらいだと説明してくれた。
そうして歩いて少しの時間。
「見えましたよ、あれが港町です」
「うわぁ……大きい!」
「本拠点でもありますからね。人類側の最終ラインですから」
そこは今まで見たどの港よりも……巨大で立派だった。
何がすごいかってあらゆる大型の施設がたくさん見えている点だ。
それなのに見通しが良いのは見た目よりもやれるもので建造をたくさん組んであるからか。
本来の街なら景観や危険性で隠されそうなものすらむき出しに街中囲んでいる。
魔物素材もふんだんに使われており何よりもあの素材は……
「もしかして、あの白っぽい金の兜みたいな大きなやつって」
「ええ。この街が昔しとめた、ホワイトスです」
ホワイトス。
目の前にある頭の部分は家の屋根くらいある。
この金大陸を支配するニンゲンよりも旧い……ナニカだ。
私も直接見たわけではないがホワイトスは有名な存在だ。
金の大陸や銀の大陸で見かける謎の生物。
いや生物なのかもよくわかっていない。
魔物とも争うが一番はニンゲンが集ったときに牙を剥く。
強力な力に強力な力で跳ね返してくるので厄介な存在。
姿は様々だが白系統のイメージカラーと一切コミュニケーションが取れないのは共通。
ただ蒼大陸や朱大陸それに翠大陸では一切いないうえ銀大陸でも一部地域にしかいない。
人類の生存圏が狭まっている以外困ったことがないためそんなにどうこう言われていない。
ただここに暮らすものたちにとっては死活問題だ。
特に昔の進行で失敗した者たちにとっては……
それはともかくとして今の者たちは開拓リベンジで来ている。
港街に入ってわかったが明らかに雰囲気がギラついている。
確かに活気づいているというよりも何かに追われて余裕がないかのような雰囲気。
まあおそらく本当にそうなのだろう。
各々がこの開拓土地に赴いて自分の実力でなりあがるか。
はたまた食い物にされて落とされてしまうか。
その瀬戸際で戦っているんだ。
だからこそのギラつきだろう。
「あ、あの、こっちです、表に出てくると、危ないですよ」
「はいはいー、わざわざ最後まで付き合ってくれてありがとうございますね」
「い、いえいえ。わたし、どうせ帰ってもダメダメだから、いてもいなくても同じというか……」
「なんというか色々と大丈夫……?」
話来ているだけで不安になるなあこの人。
ただ責任感はあるらしい。
自己評価の低さの割にスイスイと道を歩んで誰ともぶつからない。
本人の足運びとか周囲の目線なんかもまったくもってしっかりしたものだ。
これでこの怯え方は異様だなあ。
まあビビリグセがあるおかげで生き延びる術が身についているのかもしれないけれど。
「ギルド、です」
「おお……ここが!? なんというか、大きいなあ!」
そこは建物ではあるが建物と形容するには広すぎた。
具体的に言うと薄く屋根は張ってあるものの全体的に開放的に広々としている。
もっといってしまえば『建物』ではなく『広場』だ。
なんというか入り口は確かに冒険者ギルドあるけれど……
全然違うなあ。他の大陸と。
当然そんなフリーな環境なのでかなり広々としている……のに。
人、人、人。
いや多いなニンゲン!
冒険者ギルドは昼時が一番こまないはずなのに。
「ふ、普段からこんなにいるの!?」
「今は、すこし、少ない、かな? 夜は人が芋洗いみたいに、なります」
「ひえぇー、すごいねえ。ここかなり広いのに、普段からこんなに……」
「金の大陸ですから、冒険者は1番人気じゃないかと」
私が言うことじゃないけれどこんなカタギじゃない職が人気なのはこの大陸の危険さと野望渦巻く力強さ両方感じさせる。
ぼーっと立っているだけでも危ないので着々と中へ歩みを進めた。




