三A生目 副長
冒険者ギルドの奥に案内してもらい私達は客室に通される。
やがて気難しそうな顔をした男が中に入ってきた。
「おまたせして済まない。私は、ここの副長を勤めている。今回例の件の担当である、シドニー・ブレイクだ。よろしく」
シドニーはそう言ってゆっくり腰掛ける。
私達もそれに従った。
こちらも自己紹介を済ませる。
向こうはその間資料とこちらを見比べていた。
おそらく齟齬がないかチェックしていたのだろう。
やがて溜息のように深く息を吐いた。
「問題ない。こちらもことがことだけに、厳戒態勢ゆえ容赦願う」
「……妨害があるのですか?」
「今のところ成功はしていないが。ただそのおかげで、こちらも動きを制限されている。1つの行動に何重にも保護をかけねば、いつ破綻するかわからないからな」
「だいぶしんどいですね、それ」
ミアが緊張しているので私が話を回す。
それにしてもやはり直下なだけあって嫌がらせを受けているらしい。
ほんとよくないなあ……
シドニーは気難しそうだが確かにこういった微妙なバランスで成り立つことに絶妙な立ち方を出来るタイプなんだろう。
細い黒目は光をうつさないが多分意識的にやっている。
感情が顔からよみとれないのだ。
もちろん私達相手にやる意味はあまりないが癖になっているのだろう。
一般的に言う表情筋が死んでいるというやつだ。
ただわりかし感情に温度があるのはにおいでわかる。
緊張をしていたのが徐々に解けているようだ。
「ああ。だから貴殿らが無事ここにこれたことで、だいぶ情勢が定まり、余計なことに手を回して時間をとられずに済む。ありがたいことだ」
「こちらも、協力してくださり助かりました。どうしても孤立無援だと、領主館に乗り込むのは困難ですから」
「そのことだが、実は首都本部ギルドから正式な返答が届いた、これだ」
「拝見します」
シドニーさんが渡してくれた資料はこの国……つまり翠の大陸全体の本部ギルドから来た資料。
ざっくり読むと全面的に肯定するからやっちゃえとかいてある。
真面目な文章だがどこか浮き足だっていてむしろ貴重な機会かだからよく第三者的な資料を残すようにとも書かれていた。
「これ……もしかして、一種の吊し上げ効果も狙っているんですかね?」
「どうやら、我が領の悩みは多かれ少なかれ他の領も抱える悩みのようでな。もちろんこの力、乱用など以ての外だが、民たちを搾り取ることのみを考えているような者たちには、早々に萎縮していただきたいのでな」
「あはは……これは失敗できませんね」
「無論、絶対に失敗などないよう何重にも組む。本来強硬手段など愚の骨頂ながら、今回は『派手にやれ』とのことだ。各々に、そのように通達するつもりだ」
「わぁ……なんでそんなに怒っているんだろう、本部」
「どうやら、ほぼ同時期にあちらに領主名で抗議が行っていたそうだ。かなり事実を捻じ曲げてあり、さすがにおかしいと、判断をした。普段から密に連絡は取っていたから、そのうちの1つの支部とはいえ、データと矛盾した話をされれば違和感を覚える。さらにこちらの報告書も届くことで、遺憾の意を示したそうだ」
「それはそれは……」
なんとも返しづらい。
私のしらないところでバトルが行われているなあ。
ある意味私達のせいであり大半は領主たちのせいなので曖昧に返すしかなかった。
シドニーもわかっているのか深くは反応せず流した。
「つまりはだ、何かしらの尻拭いはやってくれるということになる。我々は、我々の業務に専念すればいい」
「それは助かりますね。正直、今回大暴れしてさらに大きな相手と揉めたらどうしようかと悩んでいましたから」
当たり前だが相手にも横のつながりはある。
権力者たちはどちらかといえば正義のヒーローからは遠いものが多い。
結果として心根まで邪悪に染まるものもいるのだ。
幼い頃からの環境もある。
帝王学をねじれきって信じ込むような行為だが。
「うむ、面倒なことをこなすために、我々という組織がある。そちらは任せておきたまえ。あくまでこれは個人たちの戦いではなく、組織と組織との戦いにする。言い方を変えれば利権争いだ。個々人への攻撃は出来得る限り防ごう」
「助かります。それとそれにつながることと言いますか……領都って、随分路地の治安が悪そうですよね? 大丈夫なんですか、あれ」
「む、やはり気づくか。あれらはやはりここ数年で一気に目立つようになったな。理由はわかっている、税の締め付けと横暴な領主一族による、強制的な廃職被害書たちだな」
「まさか、無理やり仕事を辞めさせられているの!?」
何を考えているんだここの領主一族は!?




