二A生目 領都
さて論文はともかくとして。
これは時間をかけて詰めて行かなくてはならないから優先して処理するタスクが先だ。
ミアの件でまだ片付いていないことがある。
私は翠の大地の荒れ果てた領地にある冒険者ギルドにきていていた。
「ま、まさかハーリー様の真なる行方が、今ごろになってわかるとは……さすがの追跡術です」
「今回は運も味方しました。まさか奴隷売人を追う途中で痕跡が見つかるとは」
「ええ、亡くなられたのは聞き及んでいたのですが、まさかそれほど前とは……しかも醜聞とは……」
ただし神が憑いた云々は全部やめておいた。
間違いなく混乱するので。
それにハーリー元領主が亡くなったのは事実だから。
目の前で頭抱えているのはそろそろ領主邸に乗り込む準備をしていたここのギルド長。
ここにきて爆弾を放り投げられた形になった。
ただ知っておいた方が有利をとれる爆弾だ。
「わりかし多くの情報を得られたので資料にまとめておきました。詳しいことはそちらで。もはや中身は名ばかり領主のあらくれものどもの住処かもしれませんね」
「幸い……正当な後継者らしきものたちもいるが、不幸にも彼らはもはや荒くれ者どもの味方、ということですか……この子どもがいるかもしれないというのだけが気がかりだが……」
「もし彼もしくは彼女を見つけられれば、確保出来るかもしれませんね。完全に犠牲者ですし」
とはいえそんなに簡単にはいかないかもしれないが。
なにせ長年そんな毒に晒されていたら本人もその毒に染まっているかもしれない。
こどもは良くも悪くもオトナの言うことを聴きすぎる。
私は話し合いのあとに冒険者ギルドのカウンター付近にいるミアと合流した。
「あ、ローズオーラさん! どうでした、話、まとまりそうでしたか?
」
「いい感じ。この調子なら、そろそろ乗り込むときかもしれない」
「やった!」
「まあ逆に言えば、あらゆる交渉が無駄に終わったということなんだけど。ただ、根回しはすんだしあとは詰めるだけだよ」
「だそうですよ、みなさん!」
「「やったあああああ!!」」
周囲から響くほどの歓喜の声があがる。
なにせ冒険者たちはずっと苦しめられてきたのだ。
今回の未払い事件が最大のきっかけなのは間違いないが。
「あんなやつら、民のことを、俺たちのこともなんとも思ってねえ! やってやる!」
「そうだ! 私達がやらなきゃいけない! じゃなきゃ、まともに子どもも暮らしていけないさ!」
「倒すぞーー!!」
「……倒すわけじゃなあなくて、強制捜査なんだけどね」
私が呟いた声は熱狂の渦にかき消えていった。
まあ……結果的にそうなるだろうからなあ。
そのぐらいの想定はしているけれどさ。
「あくまでみんな、内密に、ね?」
その日はきっとこの国にとって歴史が動く1つの日となった。
あとから振り返ればそう思う。
私がここに暮らしていないからこそ実感が薄かっただけで。
私はミアと共に先に領都へとたどり着いた。
領都はさすがに他と比べればよく発展している都市だ。
ただそれも他の領地にいけばよく見られるほどではあるが。
何がきついかって明らかにずっと悪かったわけではないのだ。
捨てられた家や閉められた店たちを見るに最近徐々に減っていっている。
最近といってもここ30年くらいで。
「ここ、領地で1番立派な都市なんですよね? いえ、確かに立派ではあるんですが……」
「中身がなくなっちゃってる。寂れているね……」
なんともかなしいことである。
歩む都市はなんとも活気が薄れている。
私達はまるでシャッター街のようにどことなく悲しい風の吹く中を歩く。
とはいえこの街だって活動している人々はいる。
活気はそこまでなくてもちゃんと商人が市場を開いているし。
街の中には多くの店と……暗がりがある。
正直1歩それるだけでそこらへんでニンゲンが座ってるのこわい。
しかもギラついた気配を感じる。
なんとも悲しい状態だ。
「あんまり街の管理ができてなさそうだなぁ……職にあぶれて浮浪者になって、そこから治安が悪化していっている。自然に寂れていく流れができているなあ」
「やっぱり、あんまりよくないんですよね……? R.A.C.2を見た跡だと、なんだか静かで」
「まあ確かに。あっちはひときわ騒がしかったもんね」
ミアが体験した世界は特別だったとはいえここも特別寂れている。
正直他と比較してもしなくてもひどい。
そこまで見るべきところがないので私達は早々に冒険者ギルドへと足を運んだ。
冒険者ギルドはさすがに私達がいた冒険者ギルドより建物が立派だ。
古くもあるから活気のある時代のものなんだろう。
既に時間的に昼なので中に入るとあんまりニンゲンたちはいない。
掃除をしていて夕方帰ってくる冒険者たちを待ち構えていた。




