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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け後編
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九百九十生目 名前

 この戦いを最後にする。

 ジャンケンに勝つにはただ浮いた羽根のように相手の動きに合わせていればいいわけじゃない。

 攻めるとは最大のスキを晒すということだ。


 もっともこちらの意志を読み取られやすい瞬間。

 ここで逃げ切れなければ意味のない行動になる。

 しっかり勝ち切るからここで慢心はしない。


「「決めた!」」


 やっぱり同時になった。

 VVは表情がかわらないのにとにかく嫌な雰囲気だけ醸し出している。

 これまで同じタイミングで話すことはなかったからより嫌悪感が出てきたのだろう。


「祈りを捧げよ」


「均衡へ祈ります」


「きんこう」


 ゆっくりと祈りを捧げる。

 天秤皿双方に炎が灯った。

 天秤は釣り合う。


 VVが発する力をさらに増してきているがそもそも力をますことを読んでいれば……

 崩すのは容易いのだ。


「負けるか……負けるかぁ……!!」


 もはやユナくらいの常識人ならば震え上がり倒れるような殺気を浴びせられる。

 または神気とでもいうべきか。

 一種の神々しさに浴びたものはその存在を無条件に差し出すかもしれない。


 まあ私がそれを浴びても平気だ。

 ユナたちには向けられていない。

 そこの分別はあるらしい。


 ただVVは発汗が異様なほどにある。

 だいぶ思考をこねくり回しているのだろう。

 それでもわからないものを相手にして。


 わからないようにしているからだけどここまでなんとかやってきたんだ。

 ならば後は最後までやり抜く。


「構え」


「「最初は」」


 同じ動きで腰を落とし捻りつつ背後に右手をやって親指を内側に閉じ込めつつ拳を握る。

 無駄な力はいらない。

 かわりに必要な力はここに少しだす。


 それだけでいい。

 その方が正しく力が出る。


「「グー! ジャンケン!」」


 前に拳を突き出したあとまた背後へ拳を回す。

 もう結果は決まっている。

 祈った時点で変えられないのだから。


 均衡神はただここから勝手に変えられないか見届けるのみ。

 決められたシナリオを演舞する我らを見続けるだけ。


 今までは柔よく剛を制していた。

 今度は剛能く柔を断つ!


「「ポンッ」」


 VVが出したのはチョキ。

 そして私がだしたのは……


「グーの勝ちだ!!」


「わあああァァァァーーっ!!」


 硬い拳が相手の刃を砕いた。

 貫いた力はもちろん何も当たってはいないが。

 それでもVVはエコーがかる叫びをあげながら突如電気スパークを発しつつ吹き飛び。


 背中方向へ倒れ……


「あっVV!」


 エイナの叫びもむなしく私に向かってスカートの中身を晒しながら倒れ伏した。

 ……その中身が何もない(・・・・)ということを。



──VV戦 勝利──




「天秤は今、勝敗を示した。勝敗とは、不均衡である。敗者は誓約を果たし、均衡を支払うこと。これにて、神前試合を(つい)とす。世に均衡のあらんことを」


 大きな天秤こと均衡の神はそれだけ話すとVVを放置して光となって消えていく。


「……親切な神様でしたね」


 ユナがぽつりとこぼした。

 今の言葉はリップサービス以上のものがあるだろう。

 つまり約束は守れよというVVへの脅しだ。


 ただそのVV自身は白目向いてひっくり返ってるが。

 エイナが慌てて駆けつけて揺すっている。

 よほどショックだったのか……


 周りの景色が戻ってくる。

 それにしてもだ。


「VVに、足はなかったんですね」


 さすがに気になったことなのでエイナに聞いてみた。

 有るように見せかけていたから余計にだ。

 同じ顔のない神たちの欠けはすぐ割とわかったけれど。


「ええ……普段は電磁力で浮遊をしています。足は(わたくし)が知り合ったときからありません。過去のことが原因なのですが……」


 エイナは溶けゆく空間で語る。

 VVを介抱しながら。


「VVの、その神たちの成り立ちは知っているようですよね? では手短に。この肉体の主は、相当な色狂いだったらしく、違法手術を繰り返していました。しかし所詮は外法、ある時下半身のあらゆる機能が止まったそうです。そして切り落とすしかなくなった」


 下半身不随とかソレ以上とか何かかな……?


「そして肉体の主は発狂したのち死に……神がやどりました。それがVVです。VVはもろもろあったあと元の場所を抜け出しました。ちなみに肉体の元々は男性だったそうですよ」


「えっ」


「機能しなくなった男としての部位は肉体の記憶と思いに従い処理したとか」


 なんだそりゃ……

 突然のシモ話はともかく凄まじい経歴だ。

 ……色狂い?


「その、身体の器の時の名前とかは知っていますか?」


「いえ、さすがにそこまでは……」


「ハーリー・イー・ドルノネード……それが……この身体の名前……」


「VV?」


 意識が少し戻ったらしくうなだれた声が聞こえた。

 というか今の名前ってもしかして!

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