九百八十九生目 直感
相手に勝つとは命を奪ったり運との戦いで勝ち抜くだけじゃない。
相手の心に勝ちに行く。
そういった戦いもある。
VVはどんどん表情が削ぎ落とされていたことでむしろシンプルな殺意が見えてくる。
美人の真顔はここまで恐ろしいか。
けれど同時にVVはまるで余裕がない。
9連続あいこ。
私の直感はどうやら冴えわたっているらしい。
まあVVのうごきをほぼ読み取れるようになったからそこから換算してジャンケンやるだけだからね。
そしてこっちは出来うる限り読ませない。
VVは私を読み取るのにも苦戦する。
いまごろ見えない敵でも相手しているのじゃないのだろうか。
だったら後は押すだけだ。
「VV」
「……な、なにさ」
「次、あいこになるよ」
双方の天秤に炎がともる。
VVは私に言われたことを咀嚼するかのように目線を彷徨わせ顔を平手で叩いている。
それでも表情筋は戻らないが。
「なんで、そうなるのさ」
「カンだよ。そして、この次は私が勝つよ」
「……そこまでできるのなら、もはや運なんてもの、ないよねー? そこんとこどうなの、均衡の神はさ」
「我はただ均衡を見守るのみ。卑屈な手や、違反行動はない。それを感知した瞬間に、我が天秤は傾く。理屈や感知の問題ではなく、概念である」
「わかってるよ、クソ……」
VVは小声で吐き捨てるように悪態をつく。
そしてエイナとユナだがもはや戦いを見守り唖然とし続けている。
何が起こっているかわからないようだ。
私も直感というのは結局頭で正確に思考した結果ではない。
それが脳内で瞬時におそらくそうなると導き出されるだけ。
危険な橋ではあるけれど。
「VV、私はキミの想いの強さに勝つ。もはや紛れもない力で勝つ。
私は私を信じるから」
「減らず口を……! アタシの運が、ロードライトの策略かなにかを打ち破ってみせるっ!」
VVは気丈に振る舞うもののその顔に戦い前までのニンゲン相手に伝えるような顔つきはない。
アレは神だ。
神として絶対的に君臨し続ける者の顔だ。
そう目力がなくなった。
ならば変わりに発揮する殺気はどこなのか。
それはニンゲンではなかなかありえない位置。
腰上といえばいいのか。
背中腰部から吹き出るように力を感じる。
まるで翼でもあるかのようだ。
腹に力を込めていると言うか肝が据わっているというか。
ここまで来てもVVの精神性は崩れることはない。
もちろんニンゲンとしてのハリボテは別としてだが。
さてそれでも直感で降ってくることは降ってくる。
VVはあくまで外に敵を求めているのだから。
メチャクチャ対処しづらいだろうなあ。
「「最初は、グー!」」
本来戦いならその場一瞬で手先を変えられフェイントを使われる。
それがないだけだいぶ楽だ。
後はしっかり私の力を押し付ける。
「「ジャンケンポン!」」
はい10回目あいこのパー。
VVからギリリと奥歯を噛みしめる音がするものの本人はまるで気づいていない。
どうやらだいぶまいっているらしい。
「ちなみに59049分の1だよ、確率。ラッキーだね」
「均・衡! どこへいったのさバランスは……!」
「均衡は保たれている」
VVも感じ続けているだろうこちらを精査しつづけるような……むしろ保ち続けるような感覚。
均衡の力が私達にかかっている。
それをVVもわかっているからこそ納得ができないのだろう。
明らかにあいこにさせられているという深みに陥る感覚。
ただこれはイカサマでもなんでもない。
私はひたすら相手を見て『右スウェーから左ジャブ顔面フェイント体2回回り込むような右フック体フェイント頬1回』という感じでわかる直感に従っているだけだ。
そしてカンはイカサマじゃない。
というより勝負師としてのカンなら絶対VVのほうが上だ。
私を正確に捉えられればVVの読みのほうが増す。
でもそうはさせないしそうならない。
VVは全力を出すからこそ私を捉えられていない。
敵愾心を操りそのまま何もない相手の影をずっと戦えばその先に待つのは。
「くぅ……」
VVは汗を流しながらうずくまる。
スカートがあがるのではっきりわかるが浮いているらしい。
浮いていなければ膝をついているだろう。
見ようによってはまるでいじめだがそうではないのはここにいるエイナとユナが見ている。
VVがムチャクチャやってきて結果こうなっただけだ。
私だってこんなに綱渡りはしたくない。
心中はヒヤヒヤしながら細いロープを渡っている。
でもおもったよりこのロープはしっかりしているらしい。
ならば私が堂々とわたり切るだけだ。
「さあ、続ける?」
「もち、ろん!」
VVも最大限に殺意を高めてこちらを向いた。




