九百八十八生目 無敵
────VVの視点
「1回目、相殺。2回目、相殺。3回目、相殺」
「ハァ……ハァ……なんで……?」
アタシはこれで決まると思いながらもう3回もあいこだ。
確率は27分の1。
ないわけではない。
「まだいけるよね?」
「もちろん、むしろそっちが気後れしてないー?」
「いいやまさか……あ、もう決めました。祈ります」
「受託した」
なんつー嫌らしい余裕のこもった笑みだ。
アタシの肉体の記憶にもあんな笑顔をするやつはいない。
こんなにも含んだ意味合いが掴めない笑みは。
「……同じく」
「受諾した」
あの天秤に乗る炎がアタシ達の魂を乗せているようで嫌になる。
ただ賭ける想いはそのぐらいはある。
アタシはこれに勝たなくちゃならないんだ……たとえ負けたときのリスクがなかったとしても。
「「ジャンケンポン!」」
そしてまた互いに手が揃う。
グー同士。
……81分の1。
その割に楽しそうなロードライト。
そして淡々と次を始める均衡の神。
それもそうだろう……なにせイカサマはないんだろうから。
天秤が崩れることはなかった。
アタシも相手もイカサマはしていない。
というよりしていたらどちらかが勝っている。
もうなんなの!?
アタシはなんで勝てないの?
なんで……ロードライトの手がまったく読めないの!?
「今度はアタシから! はい祈った!」
アタシの方から炎が灯る。
続けてロードライトも祈った。
「「ジャンケンポン」」
……パーで揃った。
何もかわらない。
243分の1はさすがにおかしいよね!?
「なに……なんなのこれは!?」
「さあ、次だよ」
ロードライトは淡々と手を決め祈る。
まるで崩せずまるでわからない。
わかりやすい殺意がみられないのに……
アタシに向けられる強い気迫は間違いなくそれだった。
正体が掴めない攻撃にずっと晒されているようで既に吐きそうだ。
どうして、終わらない!
────主視点
「「ジャンケンポン!」」
これで6回目も揃った。
さてVVの顔はどんどん無表情になっていく。
こうしてみるとさっきまで飛んだりはねたりまたは怒ったり嘆いたりしていた顔がどことなく嘘くさく見えるのはなんとも不思議なことだ。
もちろんあっちもVVの顔なんだろう。
ただ今は顔すら気にしている場合ではないらしい。
ありえない事象に対する考えが巡っているはず。
「ちょっと! もしかして729分の1くらいの確率じゃない!? 均衡ってとれてるのこの数字!?」
「告、ごく自然に発生しうる数値のため、均衡の崩壊はないとされている」
「む、ぐぐぐ……まさか均衡の神だからどちらの手も同じになるように揃えているとかじゃなければいいけれど……」
「現実改変と事象改変は行われていない」
均衡の神をにらみつけるVV。
しかしどれだけそこに答えを探してもない。
私は全ての心理と動きとにおいとでVVをつぶさに見てまるで戦いのときみたく備えているだけだ。
それは直感とも言う。
私のこれは戦闘で培われたセンスになる。
スキルではない。
先の先を読むといういつものやり方だ。
それではずしたら仕方ないが今のところ外してはいない。
そして相手も似たようなことは出来るだろうと判断している。
だから私への敵愾心をいつものようにコントロールしている。
まるで自然の一部みたいに。
そのせいか相手はどんどん読みやすくなってきていた。
もはやVVが考えていない先の先にある手も把握できている。
それは高く飛んだボールがどこに落ちるかの予測みたいなものだ。
それに戦いの時に悩んでいたらその間に死ぬ。
ここの判断で速度を出すのは何よりも私のためでしかない。
VVが早く手を打とうとしてきてもそこに私の正体はないのだから。
さあ勝ちに行こう……確実に。
私がやっている行動はミラーリング。
相手と同じうごきをするというもの。
それで相手の行動の中身を知るのだ。
だからこそVVは自分の内に真なる敵がいるときづければならないのだ。
「「ジャンケンポン」」
「……!」
7回目あいこ。
「「ジャンケンポン……!」」
「何……なんなの……?」
8回目あいこ。
「ジャン……ケン……!」
「「ポン!」」
9回目あいこ。
私達はやるたびに仕切り直し行事を繰り返してきた。
勢いで次に進めるわけじゃない。
それはVVのメンタルを削るのに的確な効果となったらしい。
私は勝ちに行く。
VVはきっと私が甘いからゴネ得したと考えていたはずだ。
正確には違う。
私はこの場を利用してもはやこれまでと思わせるまで徹底的に勝つ。
今回は禁止だから使っていないが……
それは普段私がやっている"無敵"による心での勝ち方そのものだ。




