九百八十七生目 天秤
────VVの視点
まーあワアワア騒がれたけれど結果的にはオーライに。
次善策の勝負に引き込めたと思ったらまさかの逆転を許された。
おかしい。やはりロードライトのあの黄色の目はずっとこちらを見据えるようだったせいで動きにくいったらありゃしない。
ロードライトが……ローズオーラがここまでやりづらい相手だなんて聞いていないよ。
そもそもアイツおかしい。
対面していても存在感がなくなるときがあるのにいきなり目が離せないほどに強く存在感を放つこともある。
強い殺気の正体がまるでつかめない。
なのに蜃気楼のごとく殺気が消えて去っていく。
何も掴ませてくれないのはアタシを苛立たせるのには十分すぎた。
「そちらの痛手になるようなお願い一つ、聞いてもらうからね。今度はこちらが受ける側なんだから、それぐらいは融通きかせてよ」
その提案は少しだけアタシを悩ませた。
ただ勢いで乗った。
今アタシはノレている。
こういう時に主人公なのだとエイナから聴く物語の流れにあった。
そして戦いはジャンケンにするのもすぐに決まる。
怒っているアタシの裏で冷静なアタシが的確に勝利するプランを組み立てる。
アタシはこう見えて元々の運勢も良く相手の機微から簡単に見抜きそして最適解の遊びだってやれる。
野蛮な戦いでなければアタシの独壇場だ。
その場にはエイナすら重荷になるほどさ。
アタシはロードライトと話し均衡の神の前でジャンケンすることとなる。
アタシが不利に見えて実際はロードライトのほうが不利だろう。
あの子は見るからに全然ツキがきてないもの。
ユナが参加するならともかく1対1。
他の誰かならともかく相手はアタシ。
生まれた天運の星が違うって事をしらしめてやる。
「両者、心中で出す手を決め、宣誓せよ」
均衡の神があたりに響く声で話す。
じゃあアタシはどう相手の裏をかこうか。
アタシはロードの様子を――
「決まりました」
――見て……って早い!?
ロードライトはスッと手を上げて決まったことを宣誓する。
どういうことなのさ……!?
「宣誓は認められた」
「均衡をかけて祈ります」
「受諾した」
均衡の神とロードの会話があっという間に進む。
均衡の神の天秤片側に青く大きな炎が降りてくる。
乗ると天秤はそちらへ傾いた。
「これで決まるのに、そんなアッサリやるなんて、何たくらんでるのー?」
「いや、何も? ただ、あまり悩む必要はなかったから」
元々何か勝つ手が?
それとも考えなしに速攻で決めただけ?
正体が掴めない。
それは目の前で静かな顔で立っているはずのロードライトから感じる気配と同じ。
勝負師としてのカンが働かないような何も掴めない相手。
けれどどんなに考えても相手はジャンケンである以上何も出来ないよね……?
「道化の神よ、宣誓を」
「道化の神じゃなくてセクシィーな神なんですけど! まったく……わかった、わかったよ」
仕方ない。
アタシの中の勝負師としての力を信じるしかない。
決めた。絶対マウントとってやる。
「アタシも決めたよ。それと、均衡へ祈りだったね……」
「受託した」
適当に形だけやるとそれでも受託され赤い炎がアタシ側の皿に乗って天秤が傾く。
そして平行になった。
これで釣り合ったらしい。
へぇー……ここで興味本位で手を変えてやりたいがそんなことで負けるのは癪だなあ。
だからやるっきゃない。
この1回にすべてを賭ける。
賭け師はそれがただの運であるときほどに自分の力を信じて力を込めるのさ。
「両者、構え」
拳に力をこめる。
そしてこの後決めていたやりとりは。
「「最初はグー!」」
否が応にも互いが互いを見る。
その目がどこまでもこちらを見抜くように輝いている。
なんて嫌な目なんだ。
「「じゃんけん!」」
腰を捻って落とし拳を後ろに構え次の動きに備える。
まるで相手を殴りつけるかのようですこしクスリとしてしまうね。
しかしまあよくわからないなあロードライトは……
まるで手応えがつかめることなく拳を変えていく。
アタシも相手も決めた手を変えるわけにはいかない。
だからこれで決まる……!
「「ポン!」」
アタシが出したのはチョキ。
しかし敵が出したのは……チョキ。
……っ!?
「相殺。両者、宣誓からやり直すこと」
炎が双方の天秤から消える。
まさかのやり直し……あいこだなんて。
まだやれる。まだ進められるのよ。
結局3分の1なのだから。
「決めました、均衡に祈ります」
またロードはあっさり決めた。
「……アタシも決めたよー。はい、均衡に」
双方の天秤皿に炎が乗って釣り合いが取れる。
……今度こそ決めるから。




