九百七十九生目 水魚
エイナ親番。
私は上がれて3翻のちいさなものでここからおいあがるには物足りない。
ユナは……
『わたくしめは今回、上がるのは厳しいでしょう。けれど、いずれVV様を勝負の舞台に引きずり込みます。それまで耐えられたら、勝ちです!』
『わかった。形だけ整えて、とにかく死なないようにする』
私は残り13100点。
下手な直撃を喰らうと十分大打撃を喰らう。
ただ降りに集中して防ぎユナに勝ち上がらせれば私の運勢的にもいけるはず。
私は自分自身で運を引くのは困難だ。
けれど誰かの勝ち上がりなら……別だ!
どんどんチャレンジしていってやる。
「ふむ……」
エイナが悩みつつ牌を捨てる。
なんとなく嘘の気配がある。
さらに1周してまたエイナの番になると悩みつつ牌を入れ替えて捨てた。
『あれってダマテンだよね?』
『え、そうなんですか!?』
『多分エイナはそう』
『き、気をつけます!』
ダマテンとは黙って聴牌の略である。
リーチせずに様子をみている。
この状態からも和了れるので油断はできない。
……始まる前ルール確認のさいに言われたことがある。
VVの発言で『確かにイカサマは罰符ものだけれど……バレて指摘されるまでがセットだからね』と言っていた。
逆に言えばVVはイカサマ前提で来ている。
しかし私達はザンネンながらあの薄ら笑いをたたえた顔を突き破るほどの技術はない。
さっき当然のようにエイナへ發を渡せたのも実は怪しいところがあった。
ただ多分本格的に技術だけでイカサマしていて何もわからない……
こっちもきっとイカサマで対抗したら秒でバレる。
そういった目だVVは。
あとエイナが絶対許さないし。
そうこうして打っている間にVVがユナへ向かって顔を向ける。
「どうかなー!? そろそろユナちゃんの得意技見せてほしいなー?」
「えっえっ? アタシですか? な、何を……?」
「だからー、サーカスで披露する芸だって! 水を操作できるんでしょー!? そろそろ絵的に動きがないのも困るから、派手なことしてほしいんだよねー」
「あ、はい……ではお水を用意していただけると」
VVはそう話しつつ手がよく見えない位置に置かれていることが多い。
ほんと油断もすきもならないな。
私が見張っていればVVもそこまで動けないだろう。
視線誘導……つまりユナの魔法にミスディレクションサせている間にイカサマを行うつもりだろう。
わかっていれば見逃すことはない。
私の動体視力はごまかせないから。
VVもちらりとこちらを見てなんともやりづらそうに片眉を一瞬歪める。
コレ自体が抑止力となるのだ。
なあに私は手牌も視野範囲に収められるようにできるくらい視界は広く確保できるからね。
きっとここを見に来ているものたちは私たちを笑っているだろう。
ならばびっくりかえしてやって驚きのコメントで埋め尽くそう。
いつだってそうやって生きてきたのだから。
スタッフにより水が運ばれてきた。
ちょっと大きめの皿に水がたっぷり込められている。
照らされた中喋り続けているせいで喉がまだ平気なのに乾いたから水を求めだす……
「それじゃあ牌を打ちながらになりますが……やらせてもらいす……!!」
ユナは大きく深呼吸。
そして運ばれてきた水に片手をそわせる。
水にきらめきが宿った。
「ハッ!」
ユナが気合を込めて魔力を送る。
ちなみにあれは芸の一環で操るだけなら気合の掛け声はいらないらしい。
そのあとも何度も小気味よく気合声をかけつづけると水がどんどんうねりだす。
「おっと……警告音がなってしまったようです。ユナのその魔法に対して反応してしまったようで……これで大丈夫です」
突如機械音が鳴り響きエイナがスマホを操作する。
そして音が鳴り止む。
その間にも水は高く高く持ち上がって。
「お! お!? おおーー!! 水が勝手に動き出しているー!!」
VVはオーバーリアクション気味に反応する。
水は渦からさらに盛り上がっていく。
水が分離し魚のような形になる。
そして何匹かが空中で泳ぎだした。
「おおー!! みてこれみて! すごいねぇー! こういった技術を持つ者は世界ひろしと言えどR.A.C.2ぐらいしか見れないかもよー!? ぜひ遊びに来てねー!」
「ふーむ、相変わらず見事な水の操舵ですね」
「ありがとうございます! ……あっ!」
エイナの褒め言葉にユナがお礼したとき不意に魔法構築がぐらついた。
ん? 今のはなんというか……
そうこう思っている間に魚たちは揺らめきその存在定義が崩れ幻想からさめる。
つまり空中から爆発し非常に細かい水の霧となって消えてしまった。




