九百七十三生目 勝負
VVは果たして何を頼むのか。詳しくはわからないけれどぶっちゃけあんまりよくないことしか思いつかない。
顔のない神だし。
「そちらに利益のあることって?」
「だーめ。それ以上はアタシと勝負したあと。こちらだって負けたらかなりの賭けになるんだから」
そうそれが怖い。
VVは20万シェル分の金額を補填すると言っている。
さらに懐が傷まないやり方だが無償ポイントも配ると。
向こうはこちらがその価値分を提供できると信じ切っている。
それがこわい。
一体VVは私の何を知っているんだ。
睨むように悩んでいたらVVがキュッと真面目な顔をする。
そしてひとこと。
「乗るか、そるか」
それはまるで今までふざけ倒していた雰囲気が一切削ぎ落とされたかのような。
有無を言わさない真剣さはVVという個人と強制的に向かい合わされた。
私個人としてはぶっちゃけ乗らなくていい。
けれど私が食い止めずにVVをのさばらせた場合絶対に被害が広まる。
そしてVVはより搦手で来ることだろう。
顔のない神々は基本的に自分の欲に素直すぎるから。
「……受けるよ」
私は自分でもしらずのうちに拳をにぎる。
それは神々に挑むという緊張感からか。
どうもあまりよくない。
今日の自分はそういうところがある。
無駄に凝り固まった動きではまともに動けない。
意識して手を開く。
「じゃあ、はじめよっか」
VVの無邪気さすら感じる笑顔に早速受けたことを後悔しながら。
「カメラよし、マイク、オッケ、よし、やろうか!」
「えぇ……」
なぜか私達はスタジオ中央に連れてこられていた。
いややることはわかる。
配信だ。説明されたし。
ただ顔のない神々なのにこんな外向けの欲求が本当に高いとは思わなかった。
他の面々は閉じこもる方向に力が向かっていたから余計にだ。
何せこれからの放送は……電波局も使った広域放送。
私ですらどこまで届くかわからない。
翠の大地内とはいえ私とVVの対決を見られることになる。
誰得コラボだよ。
私はこの後のこともわかっててルール解説と試しすらもやらせてもらえた。
ただアレはだめだ。
まともにやっていて勝つことはできない。
「配信開始まで、5、4、3、2……ちーっす、チコクチコク! アタシのワンダーランド、R.A.C.2へお越しの、そして配信をみている皆様ー! ようこそ!! アタシは、ここのみんなのアイドル、ヴィヴィだよー!!」
今明らかにふとVVのスイッチが入ったのが見えた。
元々振る舞いは明るく楽しくといった様子だったがさっきまでのやりとりでは言葉の空気が全然違う。 相手のために話すのかみんなのために話すのかを分けられる手慣れたプロだ。
「さーて! 今回は緊急企画! アタシは今回ゲストをお呼びして、ガチ対凸を受けて立つよー! なかなかこんな機会ないから、アタシの強さ、見せつけちゃうから!」
VVはワクワクとカメラに向かつまで語りかける。
ちなみにゴーレムカメラとかではない。
しっかりスタッフたちが立ち回っていた。
さっき歓待していた女性たちだ。
普段は裏方だったのか……
この科学技術を応用したような仕組みはあのスマホを使って組んだんだろう。
スポットライトが私にも当たる。
明るい室内だったのにさらにたぶしくなった。
「さあさあ、こちらの青い毛並みのイケメン男性は?」
予定通りふられた。
というかなんなんそのイケメン男性って。
男と言われるのも慣れてはないが。
「こんばんは。諸事情で参加させていただくこととなったロードライトです。VVさんとは個人的な知り合いで…………」
ここらへんは事前に組んである台本を読むだけだ。
1時間程度の短時間でエイナさんがやってくれました。
手慣れすぎている……
つまるところ当たり障りのない関係だと話すだけのことだ。
来歴も少しだけしか触れない。
裏の事情はここではもみ消される。
あとVVの格好がさらに露骨に調整されている。
前から見せパンははっきり見えているし後ろはまるで履いてないかのように穴があいたり透けたりしている。
もはやここまで行くと扇情的じゃなくて快活何ではないかという疑惑もうまれた。
「そして! もうひとりのゲストはー! R.A.C.2の新鋭! 見たことある方もいるのではー!?」
「ははははははい!! わ、わたくしめは! サーカスのほうで最近舞台に立ちだした新人! えっ、あー、あっ、ユナ! ユナと申します!」
ユナは礼で机に頭をぶつけそのまま沈んだ。
今自分の名前忘れたな……
よほど緊張で飛んでいるらしい。
さて私がなぜユナと共に勝負に挑むのか。
それはこれからやることが原因である……




