九百七十一生目 溜息
スマホを簡単操作でミニ鉄塔が出来上がった。
さらにエイナは一言『格納』と話すとスマホに吸い込まれるように鉄塔は消えた。
「このように、多少のことは出来ますよ。電波塔もサンプル設計図からミニチュアモデルを生み出して、それを見ながら本職が設計図を書き出し、倒壊しないように計算をし直して組み立てています」
いや……
チートじゃん……チートじゃん……!!
「な、なんでもできるの……!?」
「なんでもはできません。先程も話した通り、どれもこれもピーキーな能力ですし」
それ以上語ることはないとエイナは口を閉じる。
なるほど……つまるところさっきの能力も組み合わせれば凄まじい効果を発揮できるように見えたが。
実際は大きな穴を各々のアプリスキルでふさぐようにしているということか。
そもそもエイナのスキル自体がスマホに依存している。
生成できるのでなくす心配はいらないが手元からふと消される可能性はあるし1つ1つ操作の必要がある。
多分えげつないほどアレコレできるがそのために操作者の腕がいりそうだな……
「それにしても電波塔までバレていたとは。では、私たちの目的はご存知で?」
「そこまではわからないかな。ただその『スマホ』、電波が届く範囲だとやれることは増えそうだね。それとVVの放送も、きっと乗せられる。だったら、VVの支配域も増やせるとは思う」
エイナがちらりとVVを見る。
するとVVはわかりやすく顔がポカンとしていた。
あれ?
「アタシの支配域? ……まあ、たし、かに、ふや、せる?」
「おい今理解したのか」
私がジト目で突っ込む。
自分で調整した結果とはいえ今の声低くて圧があったな……
「この『スマホ』の力は確かに電波塔にアクセスすることで拡張出来るものもあります。私たちは、協力者ですから」
「アタシの放送をね、やっぱりR.A.C.2に来ていないみんなにも見てもらいたいのよ。アタシのこの姿を届ける、それが新時代のアタシのスタイル!」
「……なんの目的で?」
VVは"観察"していないせいかいまいち掴みどころがない。
顔のない神は下手に"観察"して看破すると私達に精神的苦痛をばらまく被害をもたらすことがある。
メチャクチャ困るのでしていない。
ただだからこそVVの表情あたりで読み取らなくちゃならない。
かわいらしい顔を存分に輝かせ両腕を広げる。
「目的もなにも! アタシをみんなが応援してくれる! アタシがみんなへ応援を届けられる! そう、アタシはこの身体を使ってみんなに認められて、求められるようにもっとなれば、この欲求が、欲が、アタシを、狂うように、だから認められ、うあ」
な、なんだ?
VVの様子がおかしい。
途中から単語をぶつ切りに繋げるようなひとりごとになっている。
私は内容に吟味しているとエイナがVVの近くに歩んできた。
VVは既に頭をかいて変な汗をかきうずくまろうとしている。
それにVVの周囲に雷撃が走り出した。
今のところ電圧が低くて被害がおよんでないもののメチャクチャこわいな。
電気なら私が剣ゼロエネミーで受けられる。
そう思って近づこうとしたらエイナがそれよりも早く側による。
「申し訳ありません、少し時間をもらいます。『覗き見防止フィルタ』と『静電気除去シート』で」
またスマホを操作するとふたりの姿が突如暗幕に包まれる。
また雷撃が消えた。
きっと工夫すれば中を見られるがどうするか……
そうこう考えている間に暗幕が取れる。
そこには荒い息をして何故か顔がほんのり赤くなったVVとそそくさと離れるエイナ。
ん? 何? 何したの?
「わ、悪かった……最近は安定していたんだが」
「今は承認欲求を満たせる段階ではないですからね。私も慣れましたし」
「とにもかくにも、そういうわけでアタシはアタシの顔を広めるためにも、まずはこの大陸全部に広げる。そして喝采を浴びるんだ!」
なんだそれ……?
元々彼ら顔のない神はよくわからない。
女体保存を趣味にしていたり覇権を狙い国を復興させたり。
おそらく彼らの存在的欲求がさせる部分はあるのだろうとは思う。
その発現が彼らの生活に現れる。
顔のない神々というのは多分私も把握していない共通項がまだあるんだ。
「それにしても、まるで歓待とその喝采を浴びる……というものに、つながりが見いだせないのですが」
ゴウが顎を指で擦りながら問う。
それは私も気になっていた。
ただ目にキラキラを浮かべているVVがまともに話をするかどうかはなんとも。
「そこは……ねえ?」
「困ったら私に振らないでください……歓待はそもそも報酬なのだからという話ではなかったですか」
エイナがためいきをついた。




