九百六十生目 各々
そのころ闘士としてドラーグと共にいたミアはたまたま来た面々に話を聞く。
いわくそれは「女の子を連れてローズが遠くへワープした」とのこと。
詳しいことはわからなかったがドラーグはなんとなくわかっていたらしいので。
「そんなに気になるなら、会いに行ってみる?」
という問いに快諾したらしい。
少しの間インターバルタイム……通称休憩だったのでそれができたのだ。
ドラーグが手を引き私からスキルを借りてかなり悩みながら魔法を唱え。
そして景色が変わった。
ミアは興味本位で行きたくなったのが若干後悔したという。
ものすごく……転送酔いしたので。
ミアから見えた私達の景色。
それはもはや一方的な暴力だった。
四肢を自由にされ動き回り対処しようともがいているそこに的確に水が弾けていく。
不可解な水の空中での動きとまるで理解できない飛び交う言葉。
そしてなにより傷を負った瞬間に癒やしの光が飛んで治癒される光景。
「新しい拷問ですか……?」
ミアが困惑しながらそうたずねてくるのは仕方ないことだった。
というわけで私の視点に戻る。
ユナを鍛えていたらミアとドラーグが来たのだ。
今回ユナに納得してもらいやっているトレーニングは肉体から精神はたまた魂に刻むかのように染み込ませることだった。
彼女の魔法に干渉して水を破壊すれば彼女は抵抗や頑強さを覚える。
というか覚えるようにこっちが組んである。
ワクチンに近いが本来は何重にも隠蔽しあうやり方なのに相手の中身に干渉させていくのだ。
素人がやると相手の精神にダメージをいれてしまうので難しい。
さらにこちらが、攻めて構築を染み込ませる。
経験の積み方はわかっているしそれを利用して攻撃ごとに彼女の中に魔法を浸透させている。
それ自体に効果はないが彼女の肉体が理解し覚えていく。
外付けのスキル形成みたいなものだ。
最初にこれを考えついたニンゲンはなかなか鬼畜だと思う。
当然私の攻撃や妨害によるダメージは負うので回復させる。
スタミナも徐々に尽きるので治して。
むしろ直していく。
挫けそうになったら精神性を補強。
疲労に対しても的確に治す。
ただ魔法だと連続耐性だの気持ちの違いだのが生まれるので飲み水と共に回復溶液を飲ましたり。
そして今の何がだめだったのか何が良くできていたかさらにその現象は何でどんな名前なのかほぼ殴り合いみたいな感覚で言葉をぶつけていく。
ユナは必死に食らいついているが半分も理解はできていないだろう。
ただそれ前提で組んでいる。
後で見返したり自分の身体の奥底に浸透した力を顕現する時に連鎖して理解できるようになるべく組んであるので。
ただの言葉に見せかけて呪文も同時にこめていた。
それでまあ見た目からしたら一方的にいたぶっている絵になっちゃうんだよね。
ただ少しして冷静になったミアが「わたしもこんなんだったなあ」とつぶやく。
「ローズ様はああいう訓練するところあるよね」
「わかります。ローズオーラさん自体が強いので経験が積めることはわかりますが、やられるとタイヘンなんですよね……まあ、実になるのでやっているときは、そんなことすら考えていないんですが」
当たり前だが本人のためにならないものはやらない。
そして実感もさせていくのでやる気は出来得る限り奪わないよう注意していた。
そしてそんな余計な思考をするスキを残さないよう念入りに……ね。
そのうち彼らふたりは仕事に戻り消えたものの時間まではたっぷりある。
私は目の前の相手を魔法で叩きつけながら別の思考で渡すべき資料を考えて紙にとげなしイバラたちで描き込んでいった。
機械みたいにとはいかないけれどだいぶ執筆速度上がってきた気がする。
さてはてどこまで化けるかな……?
「まだまだっ……!」
ユナの威勢のいい声で私も集中力を高めていった。
その頃私以外のふたり。
別のところで凄まじい剣戟の音がしていた。
ただし片方は剣を使っていなかったが。
そうインカと雇った女性だ。
背負うほどの剣とインカの背槍から作った太い槍で切り結ぶ。
「へぇ! 普段の得物と違うらしいけれど、やるじゃないか! 基本的な動きがとても出来上がってる、これでまだ出来上がってないだなんて、惚れるね!」
「師匠が、戦場では絶対思い通りになることはない、故にどのような環境でも戦えるようにって教えてもらえてさ! それにっ、アンタもかなりの技量じゃないか! まだ手、抜いてるだろう? どれだけ鍛え上げたんだか!」
「アハハ!! バレてるんなら仕方ないね旦那さん! だったらもう1段階上げるよ!!」
筋骨有る女性の動きがさらに1段キレが増していった。




