九百五十生目 競走
闘士たちの控室。
ここでドラーグとついでについてきたミアが部屋に入って。
「いいか! 遺族への謝罪はしてもしきれるものじゃない! かわりに今日魅せる誠意こそが、我々の形にできる心となる! 心してかかれ!!」
「「おう!!」」
「わっ」
いきなりそう声が聞こえて足を止めたそうな。
そこにはどこか少年のようなあどけなさの残るニンゲンが……
狂戦士のダグラが全員と意思疎通をはかっていた。
広告用に木の板に書かれた『チャリティーステージ』というのを壁にかけ多くの面々にバンバンと叩いて熱弁していた。
そしてドラーグに気づきついでにミアにも気づいたそうな。
「おう、昨日の! それに新顔も! 表で話は聞いたか?」
「あ、うん聞いたよダグラ。ミア、彼はダグラ。ここの有名闘士だよ」
「あ、は、はじめまして。その……わたしたちも協力しにきました!」
「えっそうなの!? あ、も、もちろん僕も!」
完全にミアが勢い任せで宣言し。
ドラーグはそれに乗った。
「そうか! だったら話がはやい、早速準備に取り掛かるぞ!」
というわけで控室にいたヒール四天王……狂戦士ダグラ、殺戮者マーミャ、悪の女王エルザ、血みどろのロンカスはドラーグたちを巻き込み試合会場に立つ。
ベビーフェイスもニュートラルも巻き込んで。
その日は最大の祭りかのように盛り上がりながら闘技場が開かれた。
一方戻って私達は巨大ルーレットの他に色々な賭け事に手を出した。
客同士で勝負するカード系。
なんであるんだスロット系。
変わったのだとレースもあった。
ただのレースではない。
たった5メートルの距離を小型魔物に走らせるというものだ。
小型魔物といってもアノニマルースにもいないようなやつらを家畜化したものだ。
頭がよく言葉がわかるならみんなやる気はあるのがよくわかる。
足の速さそのものは魔物ごとにまちまち。
ミニチュアなホースは安定して速いが突発力がない。
ティーカップなマウスは瞬発力は魅力だがすぐに気をとられしょっちゅうとまる。
エレキなバグは虫ゆえの多脚で障害物レースでも活躍するがたまにビビって逆走する。
たった5メートルなのになかなか勝負が決まらない。
魔物使いらしき従業員はゴールに好物をおいてニコニコするのみ。
ちなみに5メートルなので何か時たまきっかけがあればいきなりゴールにたどり着いたりする。
一応多方面からしらべてみたけれど不正らしき不正はなかった。
単に私が選ぶやつが逆走しただけらしい。
まあVVの環境下だからどこまで信用出来るかは別だけれど。
さすがに私へ害意を向けたら気付ける。
いまのところはそれはない。
うーん仕掛けてこないな……
「あらあら、本当に賭け事は苦手ですねぇ」
「そう言うもんじゃないですのよ。殿方だって外したいわけでもないでしょうし」
「あはは……」
かわいた笑いが出る。
相変わらずこちらを服越しに感触を確かめるように触ってくるのはカンベンしてほしい。
不意にということはなくさすがに気づけるが驚いて心臓が鳴る。
身体も熱くなってきた気がするし飲み物も何回もおかわりしていてよろしくない。
イライラが重なってきているのだろう。
これはよくない。私らしくもない。
「少しお手洗いにいってきて良いですか?」
「ええ、もちろん」
ちなみに男体でのトイレは都合上何回もしてさすがに諦めてきた。
ただこういうとき彼女たちを振り切れるのは良い。
ここで神力開放して目立つよりずっと。
見送られ適当なところで視線を切る。
狩りの修練をつめば誰でも出来ます。
まあもちろん相手がこちらより格上のストーキング力がない場合に限るけれど。
外に出て大きく伸びをする。
太陽が心地よくあたたかい。
中は結構暗かったんだよね。
はあ……マイナス2000。
いやポイント過剰分があるので別に無償ポイント使い切って有償に手を出したわけではない。
別に有償へ手を出してもいいけれど。
ドラーグが雑に有償無償含む5000ポイントこっちに投げてきたのもありがたい。
もしかして闘士って割と儲かるのかな……
私達はそのポイントをコマコマ分け合って賭け今のところトータルではトントンで済んでいる。
というか私のマイナスに目を瞑ればプラスなんだよね普通に。
おっかしいなぁ……
私以外に賭けてもらうと割とノーマルな結果に落ち着くんだけれど。
そうこうしているうちに近くの巨大な装置が動き出す。
あれは……立体映像を浮き上がらせるやつか。
でかいなあ……花街の奥地で見たようなものと比較にならない。
それがはっきりしてきたのは大きく広場中央に映像が浮かび上がりVVの姿が見えたことだ。




