九百四十八生目 既知
ルーレット台はなんかやたらでかいし仕掛けが豊富だった。
中央高台に立つ男従業員が拡声の魔導具を通して周囲に声を届ける。
『さあ! みなさまの選んだところにボールはいくのか? 次の投球まであとわずか、賭けるならいまですよーー』
「ええっと賭けるには……」
「うふふ、それはね……」
周りの女性たちが手早く教えてくれる。
椅子に座るとそれぞれの机のところに魔導具のカード情報を読み取る端子にポイントのあるカードを差し込み……
起動する机自体の魔導具の輝きに従って進めていく。
基本的にこの矢印ボタンに指をかざすとポイントを引き出すか戻すかを選べる。
隣のクルクル回るダイヤル数値は現在この机に溜まってる賭けポイント。
この机に溜まっているポイントからそれぞれ専用にたくさん用意されているボタンに指をかざすと1賭け入る。
……こわいのはこの1賭けがいくらなのかよくわかってないことだ。
「時間がないので、黒か赤かで選びましょうか」
「だな、これは前やったダイスのに近いな」
「偶数か、奇数か、だねぇ」
偶数が赤奇数が黒。
これだけでも賭けることができる。
これでどちらかに1を投げれば……
『さあ締め切りますよ! いいですか!? 時間です!』
「みんなはどっちに賭けた? 私は黒」
「俺は赤だな」
「僕も〜!」
「あぁ……」
なんというか察するものがありつつ玉の行方を見守るとしよう。
ルーレットの玉はかけごえと共に転がりだす。
サイズのせいで音がかわいくない。
なにかのトラップが動き出したのというような重低音を響かせつつゴロゴロと転がりだし坂を下る。
そのまま回転する巨大ルーレットの中に放り込まれた。
回転は魔力の流れで基本のエネルギー運動だから使いやすいとはいえここまで大きいものを動かすとは……
坂を転がりだした岩……じゃなくて玉が床の一部にふれるとトラップが発動していく。
いきなり床が跳ねて玉が吹き飛んで。
ジャンプした先で罠にかかり網にかかって落ちる。
一気に配置が変わったとおもったら今度は道が爆発した。
さらに岩が跳ね跳ぶ。
『さあ、予測がまったくつかないのがウリの大々ルーレット! 順調にレールからはみ出し明後日の方向に行きだしました!!』
「「えぇ……!」」
いったい1回動かすのにいくら使ってるんですか?
そう問いたくなるほどルーレットは活発に動き多数の魔法が飛び交っている。
もうルーレットの中では風が舞い光線が遮り地面が傾いて玉に様々な影響を与えまくる。
誰だよこんなの思いついたの。
あと他でここまで音響いてなかったなとおもったら丁寧に吸音結界石置いてあるじゃん。
元々地下以外で防音室を作る思想で作られた人工魔石だったはず。
はてさてボール……うん、ボールらしき巨大回転物体は勢いのままルーレットの数字の書かれたゾーンに突っ込む。
なぜか置かれている障害物たちを勢いよく跳ね飛ばしまるで止まる気配なくはね飛び数字に収まらない。
『さあさあ、ここからが注目どころです!』
「ついに数字が決まるのか……?」
「ここまで派手なんだけれど、やることはシンプルなんだね」
「お客様を楽しませるののが目的なんですもの、華美さすら忘れてしまえば、そこにはおぞましいギラつきしか残りませんのよ」
「ああ、わかる。過程が大事なんだよね〜」
アメリアと弟のハックは言語感性が似ているらしく話が簡単に通る。
私は半分くらいしかわかってないが。
だいぶ転がる音が鈍くなってきた。
床を削るほどに勢いのあった玉はやや勢いが失われ数字の間にある境目に弾かれさらに速度が落ちていく。
かと思えばボールが水におしだされ入りそうだったのにまた加速する。
「ああー惜しいですねぇ」
「まだまだいけますよお!」
私達の周りにいる女性たちがわいのわいのはしゃぎながら腕を絡ませ背中に寄ってくる。
うわあ凄まじい。
きょうだいみたいに猫がすり寄ってくるみたいなリアクション返せればよかったのだが。
私にとっては本当にどうすればいいかわからない。
久々かもしれないここまでこじれるの。
多分私が女性として接するならもっと普通に出来たはず。
変な時に男性体だからやきもちしてしまう。
腹をくくると決めた以上はやるしかないけれど。
さあルーレットはどうなる!
「黒か」
「赤か……!」
ルーレットは転がり込む。
13番の黒……
「えっ!? 当た――」
遅れて罠が発動し爆発して吹っ飛ぶ。
「――あ」
反対側に弾が吹き飛ばされゴロンと揺れた後12の赤に。
「はいはい知ってました知ってました」
「「いえーい!」」
きょうだいふたりのハイタッチをまた見送る側になってしまった……




