九百四十二生目 開示
[データ開示]
[人吸木の剣鎧
ただの赤い花をならす白い木だった。それは亡くなった者のそばに寄り添うと、やがて魂が木に吸われ赤い花で見守ってくれるという優しい木だった。みのりの季節には熟した果実が人に喜びを与えまるで返ってきているかのようと喜ばれる木だった。立派な老木がさばかれ、人々を守るための武具になるよう祈りが込められた。祈りが通じねば通じぬほど、その悔しさと辛さと想いを魂として祈りは受け止めた。それはやがて、取り返しのつかないほどの歪みを蓄えることになっても、けして手放さなかった。それは目的と手段が逆になったとしても、それはもはや強さを求める向上心に惹かれ蠢く呪いになったとしても。それはただ赤い花をならす白い木だったのだ]
わあ"観察"したら何か観てはいけない歴史まで見てしまった気分。
もはや私はその過去に干渉することはできない。
たった今私がバラバラに長い歴史ごと砕いてしまったのだから。
「うぐ……」
そして先程から回復をかけつづけていた……
鎧の中にいたニンゲンが目を覚ました。
「おはようございます、どこまで覚えていますか?」
「ここは……? うっ……頭が痛い……新しい鎧と剣を買ってから、それから……?」
やはり記憶があまりないらしい。
鎧と剣に乗っ取られていたもんなあ。
戦いのあとまあ当然というべきか場は騒然となった。
あれだけ騒げばそうなる。
私が頼むことで救急も手配してくれて地下の面々は既に手当を受けている。
そしてうっかり地下の惨状をみたものたちは泣くか腰を抜かすか軽くおかしくなってしまうか……
兵士みたいな格好のここの管理側メンツが入っていったから現場は保存された。
少しずつ現場検証されるだろう。
「まだ何も起こらなかったんです、何も……」
「……君は一体?」
「通りすがりのものですよ」
今回はまさしくドラーグの激運に引き寄せられた結果だった。
なんとか目的を果たせてよかった……
もちろん古い死体たちは間に合わなかったが今はささやかな勝利を祝うときだ。
そうして亡くなった者たちを慰霊するのだ。
ドラーグやインカ兄さんたちがものごとに気づいて対処もしてくれた。
私が聖騎士ヴァルディバラードの治療を優先したのはまあやはりダメージを受けていたから。
鎧たちが力を引き出すのに無理やり吸い上げていたのもあるらしい。
さてミアもやっと同僚と出会え互いに涙を流しながら喜び合っていた。
あっちは邪魔しちゃ悪いだろう。
依頼は完了だ。
後でわかったことだけれどミアの知り合いはみんないたらしい。
死体は身元不明……
そもそもヴァルディバラードが鎧と剣を手に入れたのは1年ほど前。
その間にも何回も仕入れ殺していただろう。
呪いが1つの意志となってそこまでさせたのはおそろしいことだ。
その日の試合は全部中止。
従業員エイナたちによる本格的なメス入れもされるとのこと。
公権力がないぶんそのかわりに専門的な力を持って調査し治める部隊があるのだとか……
専門的なことは任せつつ私はドラーグたちと合流し一旦ホテルへの帰路につくことに。
ちなみに私たちきょうだいが同じ部屋。
みんなは各々違うホテルに泊まったりワープして帰ったりするのでホテルのフロントでの合流だった。
「あれ、なんだか少し少なくないですか?」
「ほんとだ、何名か帰ってきてないね。時間は事前通達してあったと思ったけれど……」
ちなみに夜であり実質的にこのテント郡たちの本格活動の時間になる。
なので一旦整理したかったのだが。
いないのはニンゲンたちと暗部メンバーかな……?
いやゴウとアカネそれに博士はいるか。
ミアは助けられた子たちにつきっきりなのはわかっている。
ちょっとゴウに話を聞こう。
「ゴウ、他のメンツしらない? 思ったよりも集まりが悪いんだけれど……」
「うーむ、そうですねえ……わるいけれど、あまり知らないかな。ただ、オウカさんとカンタさんなら呑みに行くとかなんとか」
「ナルホド呑みに……帰ってこなさそう。それと何か体調悪い? 魔法使っとく?」
「……いや、大丈夫、少し疲れただけですから」
だがそうつぶやくゴウは少なくと良い体調に見えないほどにはフラつきつつ部屋へと向かっていった。
なんか全体的におかしいな……?
ただまあオウカさんやらカンタやらが呑みにいってるとわかっただけ大丈夫か。
最悪の場合私か誰かにすぐ念話が飛ぶ。
暗部チームは当然ここからの時間本格的に活動だろうし。
ガッツリ暗躍してほしい。
私達は今日の出来事を話し合いながら帰路へとついた……
ちなみにドラーグは試合に勝てたそうです。
やっぱ強いね。




