九百三十五生目 悪役
闘技場は簡単に言えば……
魅せプレイと映えを追求した戦いだった。
なんというか私の脳内戦闘イメージが今までのものなせいであまりに血みどろがすぎた。
「ええ、スポーツだ……!」
「なんというか、戦いをここまで制度化して、誰かに見せるための競技に仕上げるだなんて、すごい発展だな……武道は強さと同時にただしさも身に着ける必要があるから、それに似た何かを感じる」
インカ兄さんが思ったより食いついた。
好きそうだなあこういうの。
「闘士側も見られて戦うことを意識しています。技を見せつけ、堂々と、姑息に、戦術立てて誰かの記憶に残るような試合をします。ぜひ楽しんでもらいたいたいですね」
「へえぇ……なんだか驚いちゃった」
いつの間にかミアが前にでて技説明表を読んでいた。
どうやら意外に平和な要素に緊張がほぐれてきたらしい。
まあイメージだけでいえば毎日誰かが死ぬようなそれを思い浮かべてしまうからね。
「しかし、目的はそこではない……そうですよね?」
「そうだったそうだった」
エイナが軌道修正を入れてくれる。
「私達キングの紹介できていて、選手たちを詳しく知りたいんです」
ここに取り出したるはキングの手紙B。
2つめである。
受付の方が受け取って軽く目を通し「それならば」と奥へと案内された。
騒々しいほどの熱が発せられていたのが外ならばここは内に秘められた熱が音もたてず籠もり続ける空間。
舞台の裏側だ。
あたりの空気は私達の存在すら気にしていない。
「よし、これが出場者のリストだよね」
私達は壁に貼られたリストを見る。
そこには名前と特徴の書かれた一覧があり……えっ!?
「「ドラーグ!?」」
ニュービーのドラーグ。
そう確かに書かれていた。
いやまさか……そう思っていたが。
「おう、あんたらドラーグの知り合いか?」
そう話しかけて来たのは筋骨隆々な巨大男。
いやでっか。
この廊下の高さぎりぎりじゃん!
「おお……どなた?」
「おっとすまん……もうじき効果が切れるはずだ」
そう言うと彼の体から光で蒸気が吹き出す。
すると彼の体が一気にしぼんでいく。
やがて筋骨隆々どころか背骨の高さすら変えていく。
現れたのは先程の大男から随分と小柄になった少年じみた顔つきのニンゲンだった。
確かに鍛えられている気配はあるもののさっきのモンスターじみた風体とのギャップでただの子供にしかみえない。
「今子どもだと思ったか? ははは、こう見えてそこそこ年齢はあるんだ、こういう体の特徴でな!」
快活に話す存在はたしかにさっきと同じ者だった……
「俺は狂戦士のダグラ。さっきドラーグと戦った者だ」
「えっドラーグと? お怪我とかは……」
「ははは! ドラーグさんよりこっちの心配か。信頼されているね」
まあドラーグはなんやかんやめちゃくちゃ強いからね……
もはや巨大さの暴力そのものだが小さい状態でも問題なし。
よほどおくれを取ることはないと思っている。
「それでそれで〜、実際のところどうなのー?」
「完敗だなあ。試合の勝ち負けはともかくとして、人からの注目のあつめかたをよくわかっている。大技キメられて終わりだよ。傷は治療済み!」
そう軽く語ってはくれたもののなかなかさわやかな印象すらあった。
さわやかだけれどさっきはアレだっもんなあ……
見た目って大事。
「おお、さすがだ」
「あんなニュービーは久々だって、表は大盛りあがりだよ。ところで戦いに来たってわけじゃあなさそうだけれど……」
従業員であるエイナのほうを見ながらそう尋ねる。
まあダグラから見たらそう思うのも当然だし実際戦いには来ていない。
「実は素行調査というか……怪しい噂を持つ相手を今調べようとしているんです。特に、人身売買に関わっている、とか」
まあまあ踏み込んで聞いてみた。
彼は基本的ににおいにウソがない。
ウソが苦手と言ってもいい。
予想通り彼は考えながらメンバー表の方に向き合ってくれた。
「そうだなぁ……素行が悪いやつか。こんな場所だから、素性が明らかでなかったり、あまりお行儀がいいと言えないやつもいる。ただ、ロンカス、エルザ、マーミャは除外で良いだろう」
「その3人は……げっ!?」
「ええ……名前のところに、殺戮者マーミャ、悪の女王エルザ、血みどろのロンカスって書いてあるよお」
凄まじい2つ名ついている……
ただそれを聞いてもダグラは人懐っこい笑顔を浮かべるのみ。
「そこに俺を加えて、ヒール四天王って呼ばれているのさ。悪役ってことだな。ほぼ代表格みたいなところがあって、互いのことはよく知っている。ヒール役はだいたい良いやつが多いよ!」
軽快に笑うダグラを見てみんななんだか肩の力が抜けた。




