九百三十四生目 応援
ところかわって私達の方に戻る。
私達はキングとわかれかわりに手紙をもらった。
これを見せれば……というお約束的な品だ。
私達はスラムと称される場所に歩んできた。
イメージとは違ってあんがい活発だった。
テントの影をぬうようにあるのは土の上にシートを敷いているだけの店たち。
「これは、闇市?」
「かもしれないなあ」
「へぇ、なんだかいいね!」
ハックが笑顔で肯定したとおりなんだか場の雰囲気は明るい。
こういうところはなんだか悪いニンゲンたちが陰湿に座り込んでいるイメージだけれど。
ふつうに客引きも客もたくさんだ。
エイナがそっと横についてくる。
「……結局ここの施設は入場に料金もいれば住み着くのに契約もいります。そして中にいるものは、みなそれなりに資本力があり、なによりも余裕があるのです。彼らは彼らなりのヒエラルキーはありますが、本物の食いに困るや子と女房を売るようなやつは、そもそもここまで来ないのです。花街の違法奴隷もあそこの中で循環が完成すること多いし、賭博街のここはまさしく『そういう雰囲気の場所』であり、それ以下ではありません」
「ああ、なるほど、ごっこね……」
言われればそれはそうである。
確かにここは闇があるものの飢えが蔓延っていない。
悪は潜んでも邪さに興味がない。
そういった雰囲気だ。
遊園地の裏道がたくさんのゴチャゴチャした打ち付けや金具や汚しがあっても生活風であって生活臭ではない。
非日常のご提供なのだ。
そうこう話している間に目的地までついた。
スラムは入り口にすぎない。
奥地へ潜っていけばより限られた施設が見えてくる。
「あそこですね」
見た目はふつうのテントが1つ。
ただ……強力な結界の気配を感じる。
見た目ト中身が一致していないな。
エイナが歩みテントに近づくと中からニンゲンが出てきた。
どうやらここの係のものっぽいが……
なんだか兵士みたいに見える。
「おい従業員、ここは存在しないということにしてあるだろう?」
「用があるのは私ではありません。それと、こちらを、どうぞ」
揉める前にエイナがサッと手紙を渡す。
受け取った兵が「少し待て」と言い内側に引っ込んだ。
少したてば「入れ」と追加の言葉があった。
まあ判断をくだせる立場のニンゲンが許可をしたのだろう。
遠慮なく結界の内側に入ろう。
するりと入ればその真の姿がお目見えになる。
空間が拡張されまるで1つの小さな世界。
大きな場には大きなテントが。
さっきまでこんなものはなかった。
もはや1つの建物に見紛うほどの立派な建造物。
その中に堂々と入っていく。
場の空気はまるで闇市と違う。
熱気。乱雑。破壊。
さっきのが美しさを保っていたとすればここのどよめきにはやりすぎなくらいの生々しさがあった。
「なんだか揺れてるよ? すごいところだね?」
「おお、本当に戦ってそうだ、闘技場!」
……というわけでインカ兄さんがいうように闘技場だ。
ミアはついてくるのに必死みたいな感じでキョロキョロしている。
「ど、ど、どうなってるんですかこれ!? テントが大きく……!」
「あ、今そこなんだ」
私はミアのそばについて結界について解説しながら歩みを進める。
当然多くのものたちは従業員のエイナを見て私達を見て関わらないことを決める。
めちゃくちゃ目立つんだよね従業員……
中はまるでテントではない。
壁や廊下もあるし。
受付にたどり着きエイナが観客としての手続きをしてくれる。
「では、当施設の説明をさせていただきます」
「なになにー?」
そして闘技場の説明。
ざっくりいうと闘士側と観客側にわかれ双方どちらもポイントを賭ける。
ただしここで行われるのは本物の血なまぐさい闘争。
他のアミューズメント施設では出てこない命と血と汗というものが弾け跳ぶ空間。
もちろん自己責任だ。
観客側は席料として賭ける闘士を選ぶ。
それで賭けたほうが勝てば倍率いただけるわけだ。
ただ観客側が大事なのは掛け金ではないらしい。
「闘士のかたがたには、それぞれエールを送ることができます」
「「えーる?」」
「応援……?」
「はい。いわゆるおひねりですね。勝敗に関係なく、好きな闘士にエールを送れます。手数料をいただきますがエール金額により、追加で言葉を送れたり、物を送れたり、握手券が手に入ったりしますよ。基本的にはそこまで見返りを期待して行う行為ではありませんが、やはり華々しい活躍をした選手には多く贈られますね。わかりやすくテクニック基準も設けられていますよ」
ズラズラと書かれる闘士が目指す行動一覧表に私達は驚きかたまっていた。




