九百三十二生目 王者
2022/09/12 かぶってた話をなおしました
インカ兄さんが私からもらってたい石をそっと取り出す。
箱の中に厳重な感じで入っている。
さっきまでテキトーに中身握っていたのは内緒だ。
「こちら、挨拶の品です」
「これはご丁寧に……」
キングは箱を受け取ると隣にいた執事的なニンゲンに渡す。
「開けても?」
「もちろん」
インカ兄さんが答える。
執事の手によって箱が開封されキングに見せられた。
……キングの表情に僅かながら驚きが走った。
「これは……? 今までウチが見たことがない、いや、これはまさか……?」
「もしかして、資料でご覧になったことが? それは外の大陸にある迷宮からの出土品です」
キングにとって……
間違いなくあの石は衝撃的なのだろう。
出なければ糸目から双眸を僅かにのぞかせるなどしない。
「へぇ……」
「見たとおり、見た目はただの金属質の石です。しかしその実態は金属の魔物の死体に圧力がかかり、長年かけて磨かれたうえ、1つの石となる……それは1つの宝石ともなりうります」
「それは……! ということはこれの元は、スライムの……なるほど、魔力の込められ具合で差異は出るとは聞いてはいたものの、そもそも実物がほとんど出回らない……」
「ええ、それです」
「な、なあふたりとも何の話しているんだ……?」
私とキングの邪魔をしないようにインカ兄さんと弟ハックとエイナがこそこそと集う。
「あれはロイヤルレイヴァ、僕たち美術家の間でも話題の鉱物だよ。鉱物とはいえ、自然の加工で既に貴金属みたいになっているんだけれど……」
「ロイヤル……そういったものが?」
「ふんふん、希少そうなのはわかった。それに、あの石は力がある……それだけはわかる」
インカ兄さんが見抜いたとおり。
この石は単なる宝石ではない。
希少性や秘められた価値そのものや歴史……
どれをとってもいいものだ。
まあ拾ったのはいいけれど使いみちもないしどうしようかなって思っていた。
まあ渡しちゃえと。
そんなノリで渡したものだがキングは手袋をはめて触り私の相づちでガンガンひとりで盛り上がっている。
効果はてきめんだ。
「――つまるところ素晴らしい! いやはや、黒VV.I.P.がくるときいて思わず試すようなことをしてすまん。こんなところではなく、奥で話を聞こうやないか」
執事に合図を送りキングは立ち上がる。
手で差向けられた先は扉の奥……ではない。
おそらく何らかの鍵であけたのか壁が動く。
動いた際に屋敷中に響きそうな高い音も鳴った。
なるほど鳴子みたいなもの……
つまりこの先は隠し金庫ならぬ……
「おお、壁が動いた!」
「いこういこう〜!」
「さっきの部屋は、まあ立場上見栄をはらねばならないゆえの部屋やな。わかりやすさを重視してある。どうもこの国の者たちは、鉱石や宝石を軽視しがちなんでなぁ」
「なるほど……」
「わかった、少し変わり者扱いなんだね〜! ちょっと分かるなあ」
「ハハハ、変わり者同士、話すのは変わった部屋にしようや」
ハックが笑いかけると男も女もみんな喜ぶ。
凄いパワーだ。
私には出来そうもない。
ゾロゾロ移動して通された部屋には……たくさんの物が陳列されていた。
本来は他人を通すことをそんなに想定していないような。
ただひとりのためにある博物館のような。
「まさしく金庫部屋、ですね」
「ああ。まさしくここは金庫や。他の誰かに気を使う場所でもなし、テキトーに座りや」
そういったキング自体が配置されている大きな鉱石の上に座りこんだ。
周囲にあるのは石……石……石……
前は木材と宝石と貴金属でキラキラといった様子だったのに今度はあまりに無骨な空間だ。
確かに豪快に岩としてある宝石やまるっと取れたらしい鉱石塊たちはときおりキラキラと輝きを放つ。
ただなんというかそこにある大地の力そのものというか……
ここにあるものはまるで大地から生えるそれそのものをイメージさせられる。
さっきの部屋が美しく甘美に完備なる状態を提供しているのだとすればこちらは自然で欠けていて満ちみちている。
どちらがよりよいというわけでもないだろうしキングもそこに優劣を設けているように見えない。
ただ……この部屋は趣味の塊そのものということだ。
渡した石は執事が1つの小物飾り棚に設置した。
見やすいように立てられ美しくもどこまでも深い力が感じられるようになっている。
「うん、いい眺めやぁ」
「それじゃあ失礼して……」
私達も真似をしてそこらへんに腰掛ける。
本当に椅子や机もない。
ただただ見守るように多くの鉱石たちが配置されているのみだった。
美しくも冷たい輝きはどこか奥底にあたたかみも感じられて。
キングの好みがなんとなく理解できた。




