九百二十三生目 試合
私達はとある場所に移動していた。
テントの中でもさっきの屋敷テントでもない。
路上だ。
「はっきりいえば無許可の戦闘は誰であれ認められません。管理者でも、そこのラインは見極めてください」
「チッ」
「そして、ここでの争い事を解決する方法はいくつかありますが、公平に行きましょう。カードです」
「うっ……」
臨時に運ばれたテーブルの上にたくさんのカードが並べられる。
トランプカードといいたいが知ってるそれではなく魔物の絵柄が描かれている。
1から13まであってついでに特別カードのジョーカーもあった。
頭の中ではトランプカードのような処理で良さそうだ。
「ルールは簡単です。3戦分で相手のカードを当てます。互いに3つのカードを伏せて、当たるまで互いの手持ちカードからカードを出し合います。互いの手持ちカードは必ず1から13、伏せカードも数字かぶりがありません。指摘された側は、正解ならそのカードをめくり、不正解ならば最も近い数字を持つカードの中からロウかハイかを話してもらいます。ジョーカーは予め抜かれます。3枚全部当てたほうが、今回の争いごとの勝ちとささていただきます」
「ちっ、個人でやるぶんならともかく、従業員がいるとやりづれえな……運ゲーになる」
イカサマのことだろう。
確かにエイナが不正を見逃すとは思えない。
私も見逃さない気だが。
「今回の戦いは運に委ねることです。それがもっとも良い結果をもたらすのでしょうから。それでも文句がある場合は……勝手にこのあとなんとかしなさい」
「ふんっ……」
なるほど。
とりなったテイはするからあとは勝手にやれと。
ある意味らしい間のとり方だ。
ただ逆にいえばそれは味方はしてくれないということ。
最悪敵に回る可能性もある。
だったら勝っておきたいのも心情のうちだ。
通行人たちが珍しい催しに足を止めていく。
細かいルールは紙をもらって見ているものの……
本来は金額をかける勝負ゆえにだいぶシンプルになっているようだ。
相手のカードを当てるゲームを3回勝つ。
ゆえに3枚。
先に3枚当てたほうが今回の言い分が通る……
本当の意味でただ運に任せていれば負けるだろう。
私の運だし。
つまり全力で頭を働かせる必要がある。
さいわいなことにデッキからドローするランダムとか膨大な中から数字のそれを当てるゲームではない。
たった3つのカード数値を当てるゲーム。
しかも相手とのポーカーフェイス勝負でだ。
私は心を静める。
特にしっぽや耳はわかりやすく動いてしまうタチだ。
だが戦闘中の駆け引きだと思えばそれは変わる。
これは運ゲーじゃない。
相手を読み切る勝負だ。
「ふん、いい目をするじゃねえか……」
「ここで負けるわけにはいかないからね」
遊びのときと気分はさすがに違う。
命のかかった戦いだ。
そう考えるだけで静かな興奮が湧き上がり緊張がほぐれていく。
考え続けるんだ。
相手のカードを……!
「それでは、こちらが伏せカードになります。もちろん……」
「覗きやすり替え、それに周囲に覚えさせて合図……そのような不正を禁止ってことだろ? わかってる、従業員どもが、だてにやってないことくらいはな」
すごく不機嫌そうに言うジャックに対してエイナは沈黙の笑顔で答える。
私もスキルを使えばバレバレだろうなあ。
なんだか出し抜ける気はしない。
配られたカードを見てみる。
今回属する属性……トランプで言うハートやクローバーに該当するものは使われない。
賭け事だとここで倍率がかわるが今回は金が存在しないからね。
シンプルに大事なのはナンバーのみ。
私の手元に来た運命は……
(6、8、13か)
(13がくると、なんだかラッキーな気がするよねー)
でもちょっとまずい。
全部半分より上なんだが。
この勝負的にハイやロウで惑わせられたほうが耐久できるのにメチャクチャ寄っている。
相手は……まだ表情からは伺いしれないか。
向こうも盛大に手札事故してますように。
さてさて。
お互いに1から13までのカードが配布された。
普通ならこの時点でどうこう思うのは難しいが。
普通に机の上に並べたあとまとめて渡しているエイナの動作で気づけた。
今の一瞬で画像としての記憶をする。
そして手持ちの13枚も見て。
これで29枚の行方をつかめた。
使っているのは13×4の52枚。
残り23枚から探すことになる。
20枚はエイナが持っている積まれた山だ。
あてずっぽう勝負からだいぶ良い所に行きそうだ。
「先制後攻はコインで。あなたが表、ツカイワ様が裏……出ました、表です」
「よし、ついてるな」
当然のように先制をとられつつ試合は始まった。




