九百十八生目 神像
治安が悪いというストレートな物言いでエイナは渋いながらも案内してくれた。
そりゃそうだ。
一応上得意様相手に案内する場ではない。
けれど私が用のあるのはこっちだ。
案内を頼んで先へ進む。
やはりというかなんというか。
だいたいはエイナが前に出るだけでワッと詰め寄る人々は避けていった。
そしてどんどん雰囲気も悪くなっていく。
まだ入口側は清楚だったんだなと感じられるほどににおいがたまっている。
ニンゲンの欲と虫を誘うような甘く淀んだにおい。
風俗の質が悪い方向に行くとこうなるんだろうなって想像のうち。
道の中までキャッチが埋めるように歩み人々を連れ去っていく。
女性のキャッチは大事な部分を惜しげもなく出している。
正直ちょっも引いた。
あと値段が低い。
どんどん場の環境が悪くなるに連れて値段が相応に下がっていく。
本当に大丈夫なのかこれ。
こんなにキツイ雰囲気の場所ながらやるべきことは1つ1つやらねばならない。
スキルをフルで使い魔法を回し探知していく。
しょせんザル入荷だ。
ここまで入ったものに厳重な防護はかけていない。
不正に入荷されたはずの品をさがしていく。
くにざかいの関税ごまかしも割とあるっぽいなあ……
わりかし運ばれているのは酒関係。
当然瓶ではなく樽のご注文。
酒税を払いたくなくて他の物資でごまかし通ってきた様子。
あとは……薬なのかな? なにかの材料らしきものたちも。
非合法なものならば当然くにざかいの目をくらます必要がある。
摘発したいが今は我慢。
「ならローズ、この先何があるんだ?」
「うーん……まだ確定じゃないけれど、探しもの、かな」
「お姉ちゃん、こんな時にも何か探していたんだ!?」
ごめん私だけばっちり仕事だ。
ミアをこの場に呼ばなくてよかった。
今私が見ているのはかなり衛生的にも『女』の使われ方にも目に毒だ。
ふたりには詳細を話していないがそれでも顔をしかめるほどに。
おそらく話にある中央とはかなり質が違うのだろう。
とても日記帳に記すことは出来ないような光景だ。
「私個人で言えば、ここはあまり好ましくありません」
「それは……私もかな、正直、ここまでのところ、放置していて大丈夫なのかな? ってなる」
「全体の方針として、我らは基本干渉しあいません。我々は中央で完成された娯楽を提供します。彼らは、それに惹かれてやってきたものたちです。各々の地区に代表者はいますが、彼らなりの理念で経営し、コチラに金銭変わりのポイントを取引して地区を存続させています。つまるところ……」
「ふうん、この状態もその代表者が意図してやっているわけか……?」
「なんだかかわいそうな扱いが多いみたいだし、良くないよね」
「あるいは、そのようなことなど些事と考えて放置しているのかもしれません。上前をはねられれば興味などないと。ある意味、こちらと同じスタンスに近いところはありますが、自分の納める区域も美しくないというの少し違いますね」
「ううん、難しいね」
ハックが言う通りここらへんは少しややこしい力関係が見え隠れする。
だがその実は単純だ。
見えていない力である顔の見えない神であるVVを置けばわかる。
神とその信徒だ。
VVが何を司っているかは不明だが娯楽のそういう性質をあやつり人々を1つの信仰にまとめてあげているのだろう。
それの隠れ蓑がアミューズメントなパークだろう。
スイセンやシンシャは直接的な形が見えたからリュウと同じ大きな箱を用意して自分は黒幕の裏に行くタイプだろう。
そうだからあの立体に空間へ映像を映し出す裸眼AR的な機材に映ってるナニカも別に……
突然のポンポンという乾いた爆音。
振り返るとそこには空に舞う火花。
昼でも美しい輝きは花に例えられて。
「花火……?」
「わあ、きれい!」
連続で打ち上がって行った花火に気を取られているうちに近くにあった投影機という魔道具がうなりだす。
中の魔石が魔力共振を起こし響いている時の高音だ。
それに伴い小さな投影機が写していた商品らしき映像が消えて代わりに映像範囲が
『ちーっす、チコクチコク! アタシのワンダーランド、R.A.C.2へお越しの皆様ー! ようこそ!! アタシは、ここのみんなのアイドル、ヴィヴィだよー!!』
「VV様!?」
「VV様の放送だ!」
「今ちょうどいい時間なのか!?」
「丁度いい時間の放送が何時かわからねえ、それがたまらない!」
「…………わあ」
もはや誤魔化せない。
本人にはあったことがないが映像の微妙にかすれているような画質の向こうでアイドルという単語が概念と化してそのままニンゲンの形に固めたようなものがクネクネ踊っている。
あれがVV……かあ……




