九百十七生目 風俗
そして私達の所に視点は戻る。
ちょっとした賭けで楽しんだあとふたりの解毒をした。
フラフラだったからね。
私は毒程度なら自分の力にできる。
終盤ぐたぐたになるタイミングでなんとか撤収できた。
「ほとんど飲み台になっちゃったねえ」
「おいしかったから良かったけれど」
「まだ何か気持ち悪い気がする……」
インカ兄さんをふたりで介抱しつつ賭場コーナーから抜けていく。
エイナはしきりに他のところと連絡をとっている様子。
あの謎の端末で。
「おまたせしました。今度はどちらへ向かいましょうか?」
「一応、地図は見ていたんだけれど……花の街に行こうかと」
みんなでそれらしい文字を見つけた。
さっきまで賭場だったからちょうどいいだろう。
まだ鼻がなんだかアルコールのにおいがする……
リセットしにいきたいのだ。
しかしエイナはなんとなく渋い顔をする。
悪くはいわなさそうだが。
「そ、そうですか……」
「あ、もしかして花の匂いが苦手な方だったかな?」
「い、いえ。花の匂いは好きな方ですが……私は付き従います。行きましょう」
なんだか不穏な気配を残しつつ私達はそちらの方へ歩いていった。
そこに入った時に場の空気が変わったのを肌で感じた。
まずここらへんはアーケード街のように高い屋根をつくられテントたちの作りも高く複雑になっていく。
床の感触や色合いも変わって全体的に気配がフンワリとそして暗くなっていく。
行き交う人々の視線だけがネバつき赤い灯りの輝きはどこまでも怪しく照らしていく。
ここは……?
「あ、あれ? お花は?」
「スンッ……このにおいって、発情か? なんなんだ?」
「あ、あのー、エイナさん? ここって一体……?」
恐る恐るたずねようとして。
ふと前方にギラつくような気配を感じる。
ほかの3名とも足を止めて。
「さあさあいかが! 今なら1回胸無料!」
「おっπ、Oパイあるよー!!」
「今日の夜、今のうちに予約しておきませんか? 一時の大人の時を!」
「「わ、わあぁ……」」
私ときょうだいは別の理由で固まった。
ふたりからしてみれば異様な光景に。
私からしてみれば花街の意味を理解して。
エロいところするところじゃねーか!!
だがエイナは別の理由で顔をしかめていたようで。
「ほら、所詮我ら運営側の取り巻きの風俗となると、人を見かければ餌だと思ってよってくる、程度の低い奴らが集まるのですよ……どうせここいらの奴らは、貴方様方の満足の行く相手は用意できません。抜けましょう」
どうやらレベルが低いということだったらしい。
エイナが前に出るとたかるハエを追い払うように従業員証をだし手でシッシッとやる。
それに付き従うようにキャッチたちは引き下がっていく。
やはりエイナを見ると一気に顔色を悪くしていく。
ソレほどまでにR.A.C.2の従業員という立場は強いものらしい。
まあ……想像は出来るかな。
大型ショッピングモールと大型ショッピングモールの正社員みたいなものなのだろうエイナは。
そして彼らは入っているテナント。
目をつけられないためにもエイナからは距離を取る。
そういえばここらへんはあんまり他の従業員は見ない。
一番見たのはゲート回りだ。
これが管理されている場とそうでない場の差か。
あたりはなんというか秩序がない。
空気が淀んでいるというか……
どこに正解があるかわからないくうかんとなっている。
ネオンじみたあかりたちが人々を誘うように明滅し。
暗がりの奥には怪しい手がひかれ。
ショーウインドウのように柵がひかれた奥に扇情的な姿をした女性たちが相手を探っている。
これは早く抜けたいな……
なにせもし私が本物の男でも。
つまりふたりのきょうだいたちでも。
ニンゲン相手だもの……
「なんだか面白いところだねえ、何をしているんだろう?」
「あー、なるほど、これが師匠たちが言っていたやつなのか。本物初めてみたな……何が楽しいんだろ うか?」
ふたりとも興味はあるが何がなんだかという雰囲気だ。
「やはり、ツカイワ様方はこのような相手たちには心なびくような事はないようですね」
「なびかないというかなんというか……なあ?」
「絵にしたい雰囲気ではないかなぁ」
「あはは……ん?」
私はギャンブルで負けていた時に脳内でやっていたことは精読。
覚えた画像データを整理し中の情報をちゃんと読み返していた。
そこで気になるデータが多いエリアがここらへんなのに気づいた。
怪しいやり取りが集中しているのはこの花街区画だ。
逆に中央のほうに行くとなんとも清廉なやり取りが多いらしい。
つまり私がやるべきは……
「エイナさん、ここいらで治安の悪い場所はありますか?」




