九百十六生目 花街
「うし、今度は俺がやる番だ。ちゃんとポイントを賭けるんだぞ」
ダンディーな男がディーラー席についた。
さらにプレイシートもひく。
数字や文字が書いてあり当たったときの倍率と何に賭けているかを示すものだろう。
男がコインをピンと親指で弾いて掴み机へ置く。
コインは3種類。
「ブラウン、ホワイト、イエローのコインだ。それぞれポイント換算で、1、5、10ポイントを表す」
「おや、個人テントにしては意外と高めの設定ですね。0.1ずつかと思いましたが」
「あんなチマチマした賭け、面白くもないね。このコインとポイントは等価扱いで交換する。どうだ、何ポイントかえる?」
私達は相談してとりあえず10ポイント交換することとした。
くれたコインはブロンズ5とホワイト1。
「さて、始まる前に2ポイント分のコインを席代としていただく。なあに、理由はあるから安心しな。ここのルールで、コイツが配られるのさ」
そういって変えたばかりのコインをブロンズ2つずつ持っていかれてしまった。
「あっ、おい!」
「あれぇ? ……いいにおい!」
「酒だよ酒。ここのルールは試合の時にひとり1杯。面白いだろう? 酔いつぶれるのが先か、素寒貧になるのが先か」
そこにはなみなみと注がれたそこそこ度数の高そうなお酒。
おつまみだとか言って皿にナッツが置かれたし。
本当に何なんだろうこの独自さは。
「あ、ナッツ美味しいな……」
「ようし、詳しく説明するぞー」
コインの賭け方について詳しく説明してもらえた。
本番では8面ダイスを4つ。
さっきの全体数が偶数が奇数かで賭けるのがオッズが2倍。
1つめが偶数または奇数かだと当てて4倍……と確率によって倍率が上がっていく。
4から32の数字中からワンポイントにやれば25倍。
面白いのだと総合値が半分より上か下か。
ゾロ目の数。
特別な役……例えば4つのダイスが順数になったりすると当たったプレイヤー全員のオッズにさらに倍数がかかったり。
ひととおり全部説明されるとインカが一言。
「……全部に賭けると、確実に損をするようになっている」
「そりゃそうだ。全部に賭けて儲けようなんて虫が良すぎる」
まあそうだよねえ。
私達は納得して各々の想いをかける。
コインをいくつか置いて。
「さあ、運命の女神と翠竜様に、乾杯」
ダンディーな男はダイスをコップに入れて混ぜる。
私達は酒盃を煽る。
カッと熱い酒が私の喉を伝わった。
でもおいしい。
なかなかいけそうだ。
「うわっアツッ!? いや熱くないな!?」
「これ結構おいしいね」
ふたりもそれぞれの反応を返しつつ目はダイスを追う。
果たしてダイスは誰に微笑むのか。
これは後に聞いた話。
一方その頃というものだ。
「もう来ないでくれ! 運営のテントにいっとくれー!!」
「おとと」
ドラーグは1つのテントから突き出されバッチリ進入禁止を食らっていた。
いや正確には1つではない。
既に4つめだ。
賭場エリアのテントたちからいくつも放り出されたドラーグは頬を書く。
「ポイント、増やしすぎちゃったなぁ……」
ドラーグは無自覚だったがメチャクチャだった。
1000ポイントを持って来たドラーグは最後のテントで既に6000ポイントを所持していた。
賭けて得たポイントは基本的に有償ポイントであり換金時に3割が手数料で取られるが現金化すると……
有償分はおよそ35000シェルをものの1時間で稼いだこととなる。
私達がその間1ポイントや5ポイントをどう動かすかで迷っていたのだから荒稼ぎにもほどがあるだろう。
だが比較対象がドラーグにはそこまで無かった。
それに。
「あんまりおもしろくないのかな……?」
賭けて勝って追い出される。
そのルーティンはどちらかといえばストレスのほうを多くためた。
ドラーグはふらりともっと面白そうなところへと向かっていく。
今度は賭博ではないゲームがあると信じて。
そしてさらに。
アカネと九尾博士という珍しい組み合わせが歩む。
というより実質ほぼ初対面だったはずだ。
「うーん、来てみたはいいけれど、なんだかここらへん陰気なところ多いわねえ!」
「酒と葉巻と賭博のことばかりじゃわい。やはり、オススメされた中央に行くのがいいのかのう」
ウロウロと散歩をしてまわってはいたもののどれもピンとは来ていなかったそうだ。
早く中央のところへ抜けようとして。
「……おや?」
アカネたちが歩いていくのはまた別の道。
それは美しき花の街と書かれた先。
ふたりとも花は好きだから興味が惹かれてそちらの方へ向かった。
しばらくたったあと。
叫びと共に急いで駆けるふたりが見られたという。




